情勢の特徴 - 2000年2月
● 建設省が発表した昨年12月の新設住宅着工戸数は前年同月比0.8%減の9万9144戸となった。12月の着工戸数を季節調整済みの年率換算値にすると116万1000戸になる。12月は持ち家が3万6211戸(前年同月比7.8%増)で2ヶ月連続のプラス。うち公庫融資物件は2万76戸(11.1%増)だった。貸家は3万6670戸(8.9%減)と3ヶ月連続のマイナス。分譲住宅は2万5630戸(2.6%増)と6ヶ月連続の増加。うちマンションが1万5627戸(9.2%増)と好調だった。
● 東京商工リサーチがまとめた1月の建設業の倒産状況によると、倒産件数は454件で前年同月比57.0%の大幅な増加となった。負債総額は861億8600万円で12.1%の減少。受注減、単価下落といった要因によって、小規模・零細企業の倒産が多い。業種別では、総合工事業が51.5%を占め234件、次いで職別工事業が128件で28.1%、設備工事業は92件で20.2%となっている。原因は、不況型が308件で全体の67.8%に達している。内訳は、販売不振が237件で52.2%となっており、赤字累積57件、12.5%、売掛金回収難14件、3.0%が続いている。形態別にみると、私的整理が404件で、銀行取引停止処分が84.4%となった。
● 日本銀行が発表した昨年12月末の「預貸金調査結果」(国内銀行、4半期調査)によると、中小企業向け貸出残高は226兆5569億円で、前年の同じ時期に比べて8.6%も減少した。前回調査の9月末より減少幅が1.3ポイント拡大。銀行の貸し渋り・資金回収加速の動きを反映したものである。大企業向けは3.9%増の102兆1156億円と伸びている。中小企業向けでは、製造業が同5.8%減、非製造業が同9.2%減。とくに落ち込みが目立つのは製造業の設備資金で、同10.4%減となっている。大企業向けでは製造業関係の伸びが同8.6%増と突出している。
● 民間の資金や経営ノウハウを活用して社会資本を設備するプライベート・ファイナンス・イニシアチブ(PFI)推進法の運用基準の最終案が明らかになった。国の公共施設をPFIで整備する際に@民間人や有識者による第三者機関を設けて実施状況を調査、事業者選定などで民間企業からの苦情も聞くA民間企業からも事業内容の提案を受け付けるB業者選定は一般競争入札を原則とする――などが柱。PFI推進法は運用基準がはっきりしないことで適用事例がなかったが、制度の骨格が示されることで公共事業の民間委託が進む見通しだ。東京都が金町浄水場の発電事業、神奈川県が県立大学の建設でPFIの手法の導入を検討するなど、国以上に財政事情が厳しい地方自治体では導入意欲が強い。しかしいずれも法の適用を受けていない。地方自治体にも運用基準を準用するといており、各地で建設需要が高まっている廃棄物処理・リサイクル施設や、医療・社会福祉施設、工業試験場などの研究施設などの整備でPFIの導入が活発になる可能性がある。こうした需要をにらみゼネコンや商社などがPFI事業への参入の機会をうかがう一方、融資先の開拓を狙い大手金融機関なども積極的に動き出している。最終案を審議している民間資金等活用事業推進委員会(委員長・桶口広太郎アサヒビール名誉会長)を改組して、第三者機関として機能させる。PFIの実施状況を調査して、首相や関係省庁に意見を伝え、総合調査をする役割も担う。第三者機関には「民間事業者等からの意見、提言または苦情」を受け付け、首相に意見を述べる権限も与える。民間企業の意見を取り入れて非効率な面が多かった公共事業にチェック機能を働かせる。業者選定に不満がある場合には、民間企業が申し立てることも可能で、選定過程の透明性を高める効果を狙っている。
● 日本公認会計士協会が販売用不動産の会計評価に関し、強制的に時価評価などを求めるガイドラインの公開草案を発表した。ガイドラインでは、時価が取得価格より50%以上下落し、今後値上がりする可能性がない場合は、評価損失を計上させることを盛り込んでおり、これが適用されれば開発不動産を多く抱えるゼネコンや不動産会社の経営に大きな影響が懸念されている。不動産の時価評価導入の背景にある1つの要因は、わが国の国際会計基準への対応だ。国際会計基準に沿いここ数年、わが国の企業会計原則が大きく変わっており、これが企業の経営戦略に大きな影響を及ぼしている。
● 建設省住宅局は「住宅完成保証の在り方に関する報告書」を公表するとともに、住宅供給者団体、消費者団体及び地方公共団体等に対して周知を依頼した。また、同時に、国庫補助に基づいて(財)住宅保証機構が中小工務店等を対象とする住宅完成保証制度を創設することを発表した。住宅保証機構が創設する完成保証制度には、Aタイプ(増嵩工事費用のみ保証する)とBタイプ(増嵩工事費用に加え、前払金返還債務も保証)の保証タイプがある。また、制度への参加は保証タイプに応じて、第1種登録(Aタイプ、Bタイプの保証を物件ごとに選択できる)と第2種登録(Aタイプの保証のみ行うことができる)の2種類あるが、保証機構では当面、第2種登録だけを扱う。保証対象となる住宅は、発注者が個人である新築1戸建て住宅で、工法、構造は問わない。併用住宅も可。制度に参加できる業者は、中小の住宅建設業者(中小企業基本法で定められている資本金3億円以下の会社、または常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人)に限定している。業者ごとの保証限度額は1億2000万円。Aタイプの保証割合は請負金額の20%、Bタイプは同70%。業者登録審査は履行能力、経営状況、信用状況に関して、次の項目によって審査する。@行為責任能力…代表者及び法定代理人が禁治産者でないこと。A法令に基づく処分等…建設業許可の取消し、保証機構の登録業者であることの取消し、禁固以上または住宅供給に関して罰金以上の刑などがないこと。あったとしても2年以上経っていれば可。B工事履行に係わる技術的能力…元請けとしての新築住宅の施行実績が過去3年間で年間平均1棟以上あること、経営規模に応じた技術者がいること(建設業許可を取得していれば適合)、著しい工事遅延の事実がないこと等。C保証事故発生の可能性…不渡りを出していないこと、銀行との取引停止及びそれに準ずる状態でないこと、税金の滞納がないこと、法人の場合は債務超過でないこと、個人経営の場合は負債合計が倒産合計を超えていないこと等。
● 建設省は今国会に提出する都市計画法改正案の概要を固めた。土地の高度利用策と新たな開発規制の両方を盛り込んでいるのが特徴だ。一定要件を満たす場合、容積率の余剰分を他の敷地で有効活用できる特例を設けるほか、道路などの都市施設は地上空間や地下の都市計画決定も認める。一方、市町村が地域の実情に応じて決める「準都市計画地域」や、「特定用途制限地域」など新たな規制も創設する。都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分するかどうかは、都道府県の判断に任せる。
● 建設省は2000年秋ごろから開始する住宅性能表示制度について、表示項目や性能評価方法の基準案などをまとめ、ホームページで公表した。表示項目は、構造の安定性や火災安全性のほか、高齢者への配慮、空気、光、音環境などの9分野。評価は、第三者機関が数値や等級、具体的な言葉などで表示する。基準案は、一般からの意見や建築審議会での検討を踏まえ、夏ごろに正式決定する。表示項目は、@構造の安定A火災時の安全B構造躯体の劣化の軽減C維持管理への配慮D温熱環境 E空気環境F 光・視環境G音環境H高齢者等への配慮――の9分野。具体的な評価項目の総数は、数え方や類型化の方法によって異なるが、建設省は「30弱」としている。構造躯体や防災対策など住宅の基本構造に関する項目のほか、ホルムアルデヒド対策やバリアフリー対策など、最近の消費者の関心が高い項目も盛り込んだ。評価結果の表示方法は、等級表示、パーセントなど数値表示、言葉による表示の3種類を設定している。一方、性能評価を実施した住宅で品質を巡る紛争が発生した場合に備え、瑕疵の程度を判断する技術基準案も公表している。新築後10年以内が適用対象で、床や壁、柱などについて@斜面Aひび割れB欠損C破断その他変形――の状態を3段階で評価する。
● 建設省は「住宅の品質確保の促進法」(品格法)のうち、新築住宅を対象とした10年間の瑕疵担保保証制度に関する施行令案をまとめ、公表した。最低10年間の瑕疵担保が義務付けられる基本構造部分として柱や梁など10部分を示すとともに、雨水の浸入を防止する部分を具体的に提示した。雨水浸入の1要因で、業界から適用除外の要望が強かった不定形弾性シーリング材箇所には、例外規定が盛り込まれなかった。構造耐力上主要な部分としては、住宅の基礎、基礎ぐい、壁、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材、その他これらに類するものをいう)、床版、屋根版、横架材(はり、けたその他これに類するものをいう)の10分位で、住宅の自重・積載荷重や、積雪、風圧、土圧・水圧または地震その他の振動・衝撃を与える部分と規定している。一方、雨水の浸入を防止する部分としては▽住宅の屋根または外壁▽住宅の屋根または外壁の開口部に設ける戸、枠その他の建具▽雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、住宅の屋根や壁の内部、または屋内にある部分としている。この法律が施行されると、注文住宅の請負人や、分譲住宅・マンションの売り主らは、施行令で規制された基本構造部や雨水の浸入を防止する部分について、最低10年間の瑕疵保証をしなければならない。万一、保証期間内に瑕疵が発生した場合、注文者は補修請求や補修に代わる損害賠償請求、補修とともにする損害賠償請求を請負人に求めることができる。さらにマンションなど売り主と買い主の契約の場合では、これらの請求に加え、買い主が売り主に対し契約解除を行うことも可能となる。瑕疵担保責任の期間は、個別に特約を結べば、基本構造部分以外も含め20年まで伸長できる。
● 総務庁が発表した1999年12月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は前月に比べ0.1ポイント上昇の4.6%となり、6ヶ月ぶりに悪化に転じた。男性は4.8%、女性は4.3%で、ともに0.1%上昇である。完全失業者数は288万人で、1年前の前年同月より15万人増、リストラ・人減らしや倒産など企業の都合による非自発的離職者は92万人で同3万人増えた。学卒未就職者も同2万人増の13万人である。職についている人をあらわす就業者数は同16万人減少の6427万人。このうち雇用されている人(農林業を除く)は同38万人減少の5301万人で、ひきつづき職場が縮小していることを示した。自営業主・家族従業者は1064万人で同19万人増えた。産業別の雇用者数をみると、建設業が同33万人減の525万人で4ヶ月ぶりに減少。
● 労働省は、1999年(1−2月)の死亡災害発生状況(速報値)をまとめた。建設業の労働災害による死亡者数は737人で、98年の速報値と比べて5.9%増加、98年確定値比でも1.7%増加している。これまで建設業の死亡災害は3年連続で減少していたが、4年ぶりに悪化することは確実となった。全産業の死亡者数は1864人、98年速報値比で4.8%増加した。このうち建設業の占める割合は39.5%で、依然として全産業中もっとも高い。建設業の死亡災害発生状況をみると、「墜落・転落」がもっとも多く309人、次いで建機などによる「はさまれ巻き込まれ」が84人、「道路交通事故」が81人、「崩壊・倒壊」が75人、「激突され」が51人、「飛来・落下」42人の順となっている。
● 事業部門を切り離す会社分割制度が10月から導入されるのに対応し、労働省は分社化で企業が転籍を命じることができる従業員の範囲を定める「会社分割における労働契約承継法(仮称)」の骨子を固めた。分社化の対象部門の従業員は本人の同意がなくても転籍対象になる一方、他部門の従業員には転籍への拒否権を認める。分社化の労働契約の移行ルールを明確にして労使間のトラブルを防ぐのが狙い。3月中に国会に提出、会社分割法制と同じ10月施行を目指す。新法案では、分社化される部門で働いている従業員は本人の同意がなくても転籍対象になる。元の会社との雇用契約は新会社に引き継がれる。分社化の対象部門以外で働く従業員が新会社に転籍されたり、分社化部門の従業員が元の会社の他部門に配置転換される場合は異議を申し立てれば移籍・異動を拒否できる。
● 建設労働者の賃金が1998年、99年と2年連続で前年を下回っていることが、労働省が発表した屋外労働者職種別賃金調査結果速報(建設業技能職種)でわかった。労働省調査(21職種。調査対象は従業員5人以上の民営事業所。約1万6000事業所、労働者7万3000人)によると、1人1日平均で「きまって支給する現金給与」額は、21職種合計で99年は1万4640円となっている。前年比で2.8%減(98年は同0.8%減)となり、2年連続で前年を下回っている。主要な11職種ではすべてで前年より低下していて、賃金が1番高かったのは電気工の1万5460円(前年比3.7%減)。1番低かったのは貨物自動車運転者の1万3020円(同3.6%減)。前年比で最も大きく低下したのは、とび工の1万4260円(同6.9%減)となった。
● 東京商工リサーチは、東証上場企業の従業員数の調査結果(毎年度上半期)をまとめた。1999年度上半期(4−9月)は139社で計32万6216人、前年同期と比べると1万6318人、4.8%のそれぞれ減少となった。ここ5年間で最低の水準にまで落ち込んでいる。5年間のピークは、94年度上半期の36万7679人だった。この時点と比べると11.3%の減少になる。東証上場の建設会社の従業員数は94年度上半期を最高に、5年間減少の一途をたどっている。5年間の上半期従業員数の推移をみると95年度が36万5302人、96年度が36万679人、97年度が35万5633人、そして98年度が34万2534人。98年度には35万人を下回り、99年度は32万人台にまで落ち込んでいる。これは、大手から準大手そして中堅と、建設業界のリストラが進んでいることを顕著に示しているといえる。
● 総務庁が発表した1999年12月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は前月に比べ0.1ポイント上昇の4.6%となり、6ヶ月ぶりに悪化に転じた。男性は4.8%、女性は4.3%で、ともに0.1%上昇である。完全失業者数は288万人で、1年前の前年同月より15万人増、リストラ・人減らしや倒産など企業の都合による非自発的離職者は92万人で同3万人増えた。学卒未就職者も同2万人増の13万人である。職についている人をあらわす就業者数は同16万人減少の6427万人。このうち雇用されている人(農林業を除く)は同38万人減少の5301万人で、ひきつづき職場が縮小していることを示した。自営業主・家族従業者は1064万人で同19万人増えた。産業別の雇用者数をみると、建設業が同33万人減の525万人で4ヶ月ぶりに減少。
● 労働省は、1999年(1−2月)の死亡災害発生状況(速報値)をまとめた。建設業の労働災害による死亡者数は737人で、98年の速報値と比べて5.9%増加、98年確定値比でも1.7%増加している。これまで建設業の死亡災害は3年連続で減少していたが、4年ぶりに悪化することは確実となった。全産業の死亡者数は1864人、98年速報値比で4.8%増加した。このうち建設業の占める割合は39.5%で、依然として全産業中もっとも高い。建設業の死亡災害発生状況をみると、「墜落・転落」がもっとも多く309人、次いで建機などによる「はさまれ巻き込まれ」が84人、「道路交通事故」が81人、「崩壊・倒壊」が75人、「激突され」が51人、「飛来・落下」42人の順となっている。
● 事業部門を切り離す会社分割制度が10月から導入されるのに対応し、労働省は分社化で企業が転籍を命じることができる従業員の範囲を定める「会社分割における労働契約承継法(仮称)」の骨子を固めた。分社化の対象部門の従業員は本人の同意がなくても転籍対象になる一方、他部門の従業員には転籍への拒否権を認める。分社化の労働契約の移行ルールを明確にして労使間のトラブルを防ぐのが狙い。3月中に国会に提出、会社分割法制と同じ10月施行を目指す。新法案では、分社化される部門で働いている従業員は本人の同意がなくても転籍対象になる。元の会社との雇用契約は新会社に引き継がれる。分社化の対象部門以外で働く従業員が新会社に転籍されたり、分社化部門の従業員が元の会社の他部門に配置転換される場合は異議を申し立てれば移籍・異動を拒否できる。
● 建設労働者の賃金が1998年、99年と2年連続で前年を下回っていることが、労働省が発表した屋外労働者職種別賃金調査結果速報(建設業技能職種)でわかった。労働省調査(21職種。調査対象は従業員5人以上の民営事業所。約1万6000事業所、労働者7万3000人)によると、1人1日平均で「きまって支給する現金給与」額は、21職種合計で99年は1万4640円となっている。前年比で2.8%減(98年は同0.8%減)となり、2年連続で前年を下回っている。主要な11職種ではすべてで前年より低下していて、賃金が1番高かったのは電気工の1万5460円(前年比3.7%減)。1番低かったのは貨物自動車運転者の1万3020円(同3.6%減)。前年比で最も大きく低下したのは、とび工の1万4260円(同6.9%減)となった。
● 東京商工リサーチは、東証上場企業の従業員数の調査結果(毎年度上半期)をまとめた。1999年度上半期(4−9月)は139社で計32万6216人、前年同期と比べると1万6318人、4.8%のそれぞれ減少となった。ここ5年間で最低の水準にまで落ち込んでいる。5年間のピークは、94年度上半期の36万7679人だった。この時点と比べると11.3%の減少になる。東証上場の建設会社の従業員数は94年度上半期を最高に、5年間減少の一途をたどっている。5年間の上半期従業員数の推移をみると95年度が36万5302人、96年度が36万679人、97年度が35万5633人、そして98年度が34万2534人。98年度には35万人を下回り、99年度は32万人台にまで落ち込んでいる。これは、大手から準大手そして中堅と、建設業界のリストラが進んでいることを顕著に示しているといえる。