情勢の特徴 - 2000年4月

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 業界の動向 その他の動向

経済の動向

● 日銀が発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断DI(「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数)は大企業の製造業でマイナス9と、マイナス幅が1999年12月の前回調査より8ポイント縮小し、5期連続の改善となった。ただ、中小企業の非製造業は横ばいである。大企業の2000年度の設備投資計画は、製造業で前年度比4.9%増と3年ぶりにプラスとなり、大企業全産業でも同0.6%減(99年度の実績見込みは同11.4%減)と小幅の減少にとどまった。一方、中小企業は全産業で当初計画としては調査開始以来の小幅ながら同6.8%減だった。大企業の非製造業の業況判断DIはマイナス16と、前回調査比3ポイント改善。中小企業は製造業がマイナス26と同6ポイント改善したが、非製造業が横ばいのマイナス28で、大企業との格差は縮まらなかった。一方、生産設備が「過剰」とする企業の割合から「不足」とする企業の割合を引いた指数は、大企業で24と前回比4ポイント改善したものの、引き続き高水準だった。従業員の過剰感を示す雇用人員判断DIも大企業製造業で34と、同2ポイントの改善にとどまった。
● 東京商工リサーチがまとめた1999年度の建設業倒産状況によると、件数は5205件、負債総額は1兆3183億4000万円となった。件数では前年度比1.9%増で過去8番目の水準、3年連続で5000件を突破した。負債総額は34.3%の減少だったが、水準としては過去4番目に多い。1件当たりの平均負債額は2億5300万円。業種別では総合工事業が51.9%と過半を占め、原因別にみると不況型(受注・販売不振・赤字累積・売掛金回収難)が67.9%となった。

行政の動向

● 建設省は、1998年1〜12月の増改築・改装などの調査結果をまとめた。同年に増改築、改装など(工事実施額10万円以上)の工事を実施した建物を調査したもので、工事件数は39万8850件、前年比18.3%増、工事実施額は2兆3億円で10.1%増えた。1件当たりの平均工事実施額は502万円(前年は539万円)、建築時期は1976〜80年が7569件と突出、次いで71年〜75年が6万8134件と多かった。建設省は「これからは、86年から90年のものが顕在化してくる」一方、「それ以前のものはある程度改築が済んでいる」とみている。

労働関係の動向

● 総務庁は、建設現場を移動する労働者の退職金制度「建設業退職金共済(建退共)制度」について、初の行政監察を実施することを決めた。今月から調査に着手する。建退共制度をめぐっては一昨年、事業主が購入する共済証紙が労働者に行き渡らなかったり、不正に流用されたりする問題が表面化した。総務庁は今回、制度運営の実態と、運営主体である労働省所管の特殊法人、勤労者退職金共済機構の財務状況などを詳しく調査。問題があれば、関係省庁に改善を勧告する方針だ。今回の行政監察は、政府が取り組む特殊法人の事業の見直しや経営合理化のための調査の一環として実施する。近く調査方法の詳細を固め、共済証紙の流れを把握するなどの実態調査を、今年から7月までの4ヶ月間にわたって実施する計画。調査は、共済機構の建設業退職金共済事業本部と、業務の委託先となっている都道府県建設業協会(建退共支部)に加え、民間企業、公共工事の発注機関にも協力を依頼するなど、対象は広範囲に及ぶ見通しだ。実地調査の後、取りまとめや関係省庁への確認などを経て、来年秋口をめどに結果公表と勧告を行う予定だ。
● 労働省は、労働者災害補償保険法(労災保険法)と労災保険徴収法の改正案要網を固めた。増加傾向にある過労死の対策として脳や心疾患の発生を予防するための「2次健康診断等給付」を創設するとともに、災害発生率に応じて各企業の労災保険率や保険料の額を増加させるメリット制で、あらかじめ事業機関が設定されている有期事業(建設工事など)の最高限度を現行の30%から35%に引き上げる。同省は社会保障制度審議会の了承を得た上で改正法案を国会に提出し、来年4月1日からの施行を目指す。
● 昨年1年間の建設業の労働災害死亡者数が前年に比べて大幅に増えたことが、労働省の調べで明らかになった。速報値(3月10日現在)による1999年の死亡者数は788人で、98年の718人(確定値は725人)に比べ70人増加。特に機械類を使用した作業時の災害が急増した。99年に発生した建設業の労働災害のうち、一度に3人以上が被災する重大災害の発生件数は80件と、98年に比べて14件減少。死亡者と負傷者を合わせた被災者数も、前年比2316人減の3万753人となっている。全体としては件数、被災者数とも減少していながら、死亡者数だけが突出して増えている状況だ。急増した死亡災害の中で、98年実績に比べて大幅に増加しているのは ▽崩壊・倒壊 ▽激突され ▽挟まれ・巻き込まれ−の3種類の事故。「激突され」を要因とした死亡者は98年に比べて21人増加し、「倒壊・崩壊」は16人、「挟まれ・巻き込まれ」も17人増えた。重大災害の発生件数を都道府県別で見ると、北海道の24件が最も多く、続いて東京都(18件)、神奈川県(13件)、千葉県(11件)などの順。
● 総務庁の労働力調査によると3月の完全失業率は過去最悪だった2月と同率の4.9%だった。2月は4.85%を四捨五入した値だったが3月は4.92%で文字通りの過去最悪である。完全失業者数も349万人で過去最多を記録した。とくに男性失業率は最悪の5.2%(女性は4.6%)。新卒者が加わった学卒未就職者は32万人で過去最多。15〜24歳層の男性失業率は12.5%で最悪。世帯主と配偶者を除く「その他の家族」の失業率は9.0%でこれも最悪で、中高年失業に加え若年層の失業・就職難が大きな問題となっている。同時に総務庁が発表した99年度の完全失業率は4.7%、完全失業者数は320万人。また、労働省が同日発表した99年度の有効求人倍率は0.49倍で、いずれも年度として最悪である。

業界の動向

● 建設省が大手ゼネコン36社と大手設備工事会社20社を対象に実施した「1999年建設業活動実態調査」によると、各社がリストラを進行させた影響で従業員総数は昨年調査から4.6%減少し、23万2492人となった。特にゼネコンの技術系従業員数は7.2%減と大幅縮小し、11万人の大台を割り込んだ。また、ゼネコン各社は福利厚生施設管理者などの部門についても削減に取り組んでおり、人員数は昨年の2803人から2068人に減少した。業務部門別の従業員数は、設計・エンジニアリング部門(前年比7.0%増)と分社化による関連企業部門(同5.9%増)の2部門で増加を記録したが、海外事業部門(同16.4%減)をはじめ研究部門(7.0%減)、情報処理部門(同7.0%減)など、他部門は軒並み減少となった。特に支社や支店、営業所の管理部門については9035人減少し、本社や現場を合せた削減数も1万人を突破した。
● 長谷工コーポレーションの経営再建を支援している取引先金融機関は3月31日、同社に対し2回目の債務免除を実施した。免除額は1468億円。99年6月30日の1回目の441億円と合せて、1年目の合計債務免除額は計画通り1910億円となった。一方、同社は今回の債務免除を受け、長谷工不動産、長谷工都市開発、エイチ・シー土地開発、長谷工ファイナンスのグループ会社4社に対し、合計1228億2200万円の債権放棄を実行した。債務免除益1910億円のうち441億円は2000年3月中間期に計上。また2000年3月期に約1228億円を特別損失の関係会社支援損として計上するが、99年11月の中間決算発表時に公表した通期業績予想に織り込み済み。支援金融機関は99年5月21日に、00年3月期、01年3月期の2期間で3546億円を限度額とする債務免除に同意している。
● 企業の倒産手続きを迅速化する民事再生法が1日に施行、建設関係では才門建設をはじめ4社がすでに経営再建手続き開始を申請している。今後も、経営不振に苦しむ企業が再建手続きを申請するケースが相次ぎそうだ。内訳は、中堅ゼネコンの才門建設(負債180億円)、建築関連会社の松元工業、そのグループ会社で建材卸のミック(2社合計で同55億円)、建設用仮設資材のアサヒ産業(同42億円)で、負債は合計277億円となっている。民事再生法は、和議法と同様に営業年度の終了に関する規定はなく、経審の再審査も必要ない。しかし、そのまま競争参加資格を得ても、相当期間は指名の運用基準で排除される可能性もでてくる。今回申請した4社のうち、建設省直轄で登録しているのは才門建設と松元工業の2社。施工中の工事はなかったが、地方では手持ちの工事があることや、年内にも2001・2002年度の定期競争参加資格審査の方針をまとめることなどから、建設省は民事再生法に伴う経審の扱いなどを早急にまとめる考えだ。

その他の動向

● 建設業許可業者数が年々増加している要因は、「本来許可を受ける必要があった業者や、軽微な工事しか担当しない業者が、新たに許可取得を行ったため」という結果が建設経済研究所が行った調査で明らかになった。建設許可業者数は建設投資が減少する中で、1989年以来9年連続して増加を続けている。これまで許可業者数の増加は「役員・従業員が新会社を設立する」「他業種からの参入」などが要因と見られていたが、調査結果ではこれらの理由は全体の約2割しかなく、許可が必要な業者や軽微な工事を行う業者が新たに許可取得するケースが全体の約6割を占めていることが判明した。