情勢の特徴 - 2000年10月

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 業界の動向 その他の動向

経済の動向

● 建設省は2000年度補正予算案の主な要求内容を決めた。高速道路に次ぐ地域の幹線道路である「地域高規格道路」に事業費で1000億円以上を上積みし、都市圏の交通基盤を整備して物流の効率化をめざす。情報技術(IT)関連では下水道光ファイバー、電線地中化など2001年度予算案で要求した事業を前倒しする。高速道路の料金所を止まらずに通過できる自動料金収受システム(ETC)に関する「料金前納システム」の開発費用も新たに要求する。建設省が補正予算案で要求する公共事業関係費(災害対策を含む)は事業費で約2兆8000億円、国費で約1兆7000億円。
● 民間信用調査会社の帝国バンクが発表した2000年度上半期(4〜9月)の全国企業倒産(負債額1000万円以上)は負債総額が10兆9137億5900万円(前年同期比48.1%増)と、半期として初めて10兆円を超し、戦後最悪を記録した。倒産件数は9473件(同19.6%増)で、上半期としては98年以来2年ぶりに9000件を突破し、戦後4番目の高水準となった。「不況型倒産」が7124件。構成比で75.2%に達し、過去最悪を更新した。4月から実施された民事再生法による取り扱いは、392件(途中切り替え含む)。倒産企業の従業員は8万2799人に達した。
● 来年1月に発足する国土交通省の2001年度概算要求がまとまった。国土交通省関係の一般公共事業費は、国費ベースで7兆8217億2200万円で前年度比8.9%増となった。国土交通省所管の一般公共事業費は、この額に北海道開発事業費などが加わるため、8兆692億2000万円となる。重点施設では、日本新生プランでも挙げられている「都市基盤の整備」「IT革命の推進」「環境問題への対応」「少子・高齢化対応」の4分野を中心に、4省庁連携の施策が多く要求されている。このうち、都市基盤の整備は3兆9070億円(前年度比17%増)を要求。IT革命の推進では、3642億円(同38%増)を計上し、環境問題への対応では4780億円(同17%増)を充てる。一方、「第2の予算」と呼ばれる財政投融資計画の01年度要求額(一般財投ベース)は、前年度当初比12.8%減の33兆3800億円程度になった。
● 2000年(平成12年)9月度の全国建設業の倒産は556件、負債総額は1408億3600万円となった。件数は前月比1.8%、前年同月比で29.6%の増加となり、5ヶ月続いて500件を超え、対前年比増は連続11ヶ月目となった。数字は歴代過去8番目、9月同月比較としては1983年9 月の527件を抜いて、史上最悪を更新した。負債額では、前月比45.6%、前年同月比54.5%の増加となり、歴代過去20番目、9月としては2番目の数字となった。1社あたりの平均負債額は2億5300万円。倒産原因別では、受注・販売不振が296件、赤字累計89件、売掛回収難5件の3原因を合わせた「不況型」が390件(構成比70.1%)を占めた。倒産形態別では、銀行取引停止処分が430件(構成比77.3%)を占め、破産が76件(同13.6%)、内整理29件、民事再生法19件、特別清算2件。規模別で見ると、資本金別では1億円以上が2件、1000万円以上〜1億円未満269件、1000万円未満(個人事業含)が285件。

行政の動向

● 建設省は大手企業を対象にした経常JVの結成や、会社更生法の申請企業に対する競争参加資格再認定の見直しなどを柱とする「建設産業の再編促進策(案)」を作成し、中央建設業審議会に報告した。建設業界は他産業に比べ、企業を超えた連携などの動きが遅れていることから▽経常JVの結成を大手企業にも認める▽営業譲渡や共同出資子会社に対する優遇措置▽未完成工事代金債権の譲渡による債務保証事業制度の創設▽合併・営業譲渡・分社化などの諸手続きの迅速化−といった施策を展開し、企業間の連携や合併などを促進させる。施策は大別すると「緊急に実施する施策」「実施に向けて早急に検討を進める施策」「引き続き検討する施策」の3つに分けられる。緊急に実施する施策としては▽入札・契約制度での技術力の重視▽工事施工状況の評価▽施工体制の適正化▽共同受注型業務提携の支援による企業連携の促進(経常JVの活用)▽営業譲渡、共同出資子会社を活用した企業連携などの促進▽合併時の企業評価などの特例措置など企業連携支援の実施要請▽未完成工事代金債権の譲渡による債務保証事業制度の創設▽合併・営業譲渡・分社化などの諸手続きの迅速化―の8項目が挙げられている。
● 建設、大蔵、自治の3省は、公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律案をまとめた。法案は6章、20条で構成、国、特殊法人、地方公共団体すべての公共工事発注者に、入札・契約にかかわる情報公開、談合などの不正行為防止措置、施工体制の適正化などを義務付ける。政府は閣議で正式決定し、今国会に提出する。成立すれば3ヶ月以内に政令で定める日から施行され、すべての発注者に対する義務付け措置は、2001年度の入札・契約から適用されることになる。入札・契約適正化の基本事項は、透明性の確保、公正な競争の促進、不正行為の排除徹底、適正な施工の確保―の4点と定めた。すべての発注者に対する義務付け措置は、@工事件名や入札時期などを毎年度、発注見通しとして公表A入札参加の資格、入札者・入札金額、落札者・落札金額、契約相手・契約額など入札・契約のプロセスの公表B談合があると疑うに足りる事実を認めた場合、公正取引委員会に通知C一括下請けが認められる場合に建設業許可行政庁に通知D一括下請負の全面禁止E受注者は発注者に施工体制台帳を提出し、発注所は施工体制の状況の点検――となっている。
● 建設省は直轄工事を対象にした「1999年度のスライド条項適用状況調査」の結果をまとめた。全国8地方建設局と官庁営繕部がスライド条項を適用した件数は237件で、スライド額合計は37億1187万6000円にも達した。適用案件はすべて労務費や資材費の下落などに伴う減額措置で、受注者側は当初の請負契約金額を物価の下落により減額されたことになる。本年度は設計労務単価が前年度に比べ平均で10%程度減少したことから、さらに適用件数が増加しそうだ。
● 建設省は、技術力が乏しい地方公共団体を対象に、公共工事にCM(コンストラクションマネジメント)を導入する方向で検討に入る。CMr(コンストラクションマネージャー)には、建設コンサルタントを想定しており、今後、建設業法との関係、監理技術者・主任技術者との役割分担などについて、積極的な議論を展開する見通しだ。公共工事の発注者支援策の1つとして、技術力が弱い発注機関、技術者のいない発注機関をカバーする方策とする。全建の調査結果をみても、技術者が1人もいない発注機関が存在するのが実態で、こうした発注者の公共工事の発注業務を後方から支援する方策をして、地方公共団体に限ってCMを導入する方向で検討に入ることを明らかにした。

労働関係の動向

● 建設、農水、運輸の3省が設置した「公共事業労務費調査実施方法の改善に関する研究会」(座長・筆宝康之立正大学教授)は、企業モニター方式の試験的導入などを柱にした提言(中間まとめ)を作成した。労務費調査の信頼性を高めるため、選定した企業の労働者の賃金を定点観測的に調査する「モニター方式」の試験的導入を求めるとともに、同一単価圏の設定などを提案している。同方式は、サンプル数の少ない業種などから事前に調査対象企業を選び、そこで雇用された労働者の賃金を年に数回、定点観測的に調査する手法。提言では、職種ごとの特性に応じて、建築仕上げ系職種などの少数標本職種(潜かん工、配管工など)や、それ以外の専門工事業として確立している職種(造園工、鉄筋工など)、土木一般職種(普通作業員、運転手など)に区分し、モニター調査の導入が比較的容易な区分から、段階的に適用するよう求めている。
● 労働者人口は完全失業者数と就業者数の合計で、8月は6791万人と、1年前に比べて40万人減った。一方、仕事をしておらず職探しもしていない「非労働力人口」は大幅な増加が続いている。8月の非労働力人口は4032万人と前年同月比87万人増加した。その結果、15歳以上の人口に占める労働力率は 62.7%と、1年前に比べて0.6ポイント低下した。非労働力人口の増加が最も目立つのが60歳以上。1〜8月の平均で84万人増えた。労働省では、このうち29万人程度は、従来より早めに仕事をやめて引退する人が増えているためだと分析している。「経営環境の厳しい」自営業者の廃業が増えており、中高年では再就職が難しいためにそのまま引退する人が増えている。」(労働経済課)とみている。また、20〜24歳の場合、人口そのものが1年前に比べて30万人以上減っているのに、非労働力人口の減り方が鈍く、職探しをあきらめる層が多いことをうかがわせる。
● 99年に新たに労基署で相談を受けた賃金不払いの件数は、前年より5.1%増の1万7125件。対象になる労働者数も5万6676人と前年より4.8%増えた。一方、不払いの総額は約217億1600万円(前年比9.0%減)と3年ぶりに減った。1件あたりの金額は126万8000円(同13.4%減)、1人当たりの金額は38万3000円(同13.2%減)。件数を業種別にみると、建設業が全体の23.9%と最も多く、次いで商業(19.5%)、接客娯楽業(14.3%)の順。 
● 鉄筋工の不足が深刻な問題となってきている。全国鉄筋工事業協会(岩田正道会長)の秋季定例会で、各地区からの労務状況報告で、不足が全国的に起きていることが明かになった。稼働率が100%超となっている最大の要因は鉄筋工自体が減っていると指摘する。鉄筋工が転職し、減少していることに加え、地方では鉄筋工が農業との兼業も多く、農繁期に入って人手を確保できないこともあるようだ。

業界の動向

● 大成建設は中堅・地方ゼネコン(総合建設会社)を対象に、建設用の資材・機材購入の代行や技術指導、専門工事者のあっせんなどの仲介事業に乗り出す。大成がもつ購買力を利用して中堅ゼネコンに安価で資機材を提供するほか、競争力のある専門工事会社を紹介し、手数料を受け取る。大成は対象をグループ外に広げることで手数料ビジネスとして育成、年間2000憶〜3000億円の売り上げを目指す。

その他の動向