情勢の特徴 - 2000年11月

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 業界の動向 その他の動向

経済の動向

● 建設省は2000年度上半期の建設工事受注動態統計をまとめた。大手50社の受注総額は、6兆7866億5300万円で前年同期比1.5%減少した。堅調に推移した民間に比べて公共の落ち込みが大きい。一方、地方470社の受注総額は、2兆6373億7600万円で12.4%減。民間工事、公共工事ともに10%以上の落ち込みを示している。大手50社国内工事の内訳は、民間工事が4兆2899億1100万円(1.1%増)、公共工事が1兆8265億6200万円(15.3%減)。海外工事は3503億2700万円(34.0%増)と大きく増加した。上半期の受注総額を建築・土木別でみると、建築が4兆5604億9000万円(4.4%増)と増加した一方、土木は公共事業の減少などから2兆2261億 6300万円(11.7%減)となっている。一方、地方470社の受注内訳は、元請民間工事が1兆796億4200万円(11.4%減)、元請公共工事が 9707億7800万円(14.8%減)と、公共工事の落ち込みが民間より大きい。下請受注は5869億5600万円(9.9%減)となっている。
● 建設省が発表した2000年度上半期(4〜9月)の新設住宅着工戸数は前年同期比1.7%減の63万1662戸と、上半期としては2年ぶりにマイナスとなった。マンションなど分譲住宅が好調だった半面、戸建ての注文住宅(持ち家)が大きく落ち込んだ。上半期の住宅着工戸数の内訳をみると、持ち家が前年同期比10.7%減の23万6643戸と、2年ぶりにマイナスとなった。貸家は前年同期比3.0%の21万4912戸と4年連続の減少。分譲住宅は同17.1%増の17万4202戸と2年連続のプラス。
● 政府は事業規模11兆円の経済対策を具体化する2000年度補正予算を決定し、国会に提出した。歳出は、IT(情報技術)革命の推進を中心とする経済対策関連経費3兆8521億円をはじめ、地方交付税交付金8985億円などを計上し、総額4兆7832億円。この結果、当初予算を含めた本年度歳出は89 兆7702億円に膨らむ。歳入では、税収増1兆2360億円、1999年度決算の剰余金1兆5103億円のほか、建設国債の増発分1兆9880億円を充当。当初予算を含めた国債発行額は34兆5980億円に達し、公債依存度は当初の38.4%から38.5%に上昇した。また、国債発行額が、「純税収」(約34兆1000億円)を 2年連続で上回った。
● 東京商工リサーチは、10月の建設業倒産状況をまとめた。倒産件数は550件、負債総額は1248億8800万円。件数は前年同月比27.3%増、6ヶ月連続で500件を超え、12ヶ月連続で増加している。1〜10月累計は5195件となり、年間ワーストを記録した84年の6355件を超える可能性も出てきた。倒産件数は、10月単月としても史上3番目に悪い水準になっている。負債額も、前年同月比14.5%増で、10月としては史上2番目の額となった。

行政の動向

● 建設省は土木工事の積算に用いる現場管理費率を改定した。改定したのは20工種区分のうち、河川や道路改良、トンネルなど9工種、9工種平均で約5% 引き上げた。現場管理費は直接工事費と共通仮設費を足した純工事費に、一定の経費率(現場管理費率)を掛けて算出するが、ここ数年、労務単価や資材単価などの大幅な下落で直接工事費が落ち込んだため、従来の経費率を用いて算出した現場管理費では実情に合わなくなってきた。現場管理費は、品質管理や工程管理、原価管理、労務管理、安全管理などいわゆる工事管理を実施するための必要な経費のこと。具体的には工事現場で工事管理などを行う従業員の給与手当や現場労働者の交通費、安全訓練費、現場従業員の法定福利費、下請企業の一般管理費などが含まれる。今回の改定では、99年度に竣工した工事を対象に行った諸経費調査で、現場管理費が明らかに不足となった工種が対象となった。工事原価を仮に100とした場合、現場管理費の構成比は14程度になるといわれる。建設省では諸経費調査で、この構成比が14を下回った業種について、経費率の引き上げを行ったという。
● 1999年度建設省直轄工事の平均落札率が、96.93%であることがわかった。99年度の直轄工事契約件数は合計1万8264件で、うち一般競争入札が252件、指名競争入札1万6685件、随意契約が1327件。低入札価格調査の対象となったのは254件で、全入札契約の1.5%を占めている。各地建・部局ごとの全平均値をみると、落札率が最も低いのは近畿地建(95.41%)、次いで官房官庁営繕部(96.46%)、九州地建(96.9%)と続いている。一方、高いのは北陸地建(97.6%)、中部地建(97.39%)、中国地建(97.35%)の順。入札契約方式別の平均値では、工事希望型指名競争入札(97.73%)が最も高く、通常指名競争入札(96.62%)が最も低い。部局別で低価格入札の割合を見ると、近畿地建(4.78%)が最も高く、次いで土木研究所(4.17%)、官房官庁営繕部(1.89%)の順。低いのは、中部地建(0.57%)、北陸地建(0.65%)となっている。入札方式別では、工事希望型指名競争入札(0.85%)が平均値を大きく下回った。工種別で見ると、プレハブ建築(7.84%)、塗装(5.79%)、セメント・コンクリート舗装(4.55%)、建築(3.55%)、電気設備(3.32%)−などで低入札の割合が3%を超えている。
● 建設省は厚生省と協力し都市基盤整備公団(旧住宅・都市整備公団)の賃貸住宅の建て替えに合わせ、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人に住宅の1階部分などを貸し出す新制度を今年度内に創設する。新制度は2000年度補正予算案で認められた。今回の新制度は公団住宅の所在地の市区町村が土地にかかる固定資産税を免除することを条件に、支援の対象を特養ホームを運営する社会福祉法人にまで広げる。特養ホームを運営するため大都市部で公団住宅を借りる場合の賃料も大幅に引き上げる。財源として1999 年度第2次補正予算で創設した「施設賃貸住宅供給促進運用金」(320億円)と呼ばれる基金を活用。公団に繰り入れる金額の割合を通常の2倍以上に増やすことで、社会福祉法人が安い賃料で特養ホームを運営できるようにする。

労働関係の動向

● 総務庁が発表した労働力調査によると、9月の就業者数は、1年前より(前年同月比)34万人減の6480万人で10ヶ月連続で減少となった。就業者数のうち雇用者は5397万人で同42万人増だったが、自営業主・家族従業者は同67万人減の1071万人で8ヶ月連続の減少となった。従業者を企業規模別にみると、「30人以上」が増加傾向にあるのにたいし「1〜29人」は同31万人減と12ヶ月連続で減少しており、小・零細企業の経営環境が悪化していることを示した。
● 建設、農水、運輸の3省は、6月に実施した公共事業労務費調査に基づき、工事費の積算に用いる新たな設計労務単価を発表した。新単価は4月から用いられてきた単価に比べ、全50職種平均で2.4%、主要11職種平均でも2.5%下落した。新単価は、50職種平均で基準額より475円下がり1万9754円となった。地域別では全国10地域のうち7地域が下落し、特に沖縄の下落率が高かった。主要11職種平均では基準額より435円下がって1万7084円。すての職種で下落、鉄筋工と左官は3%以上下がった。
● 建設省は、原則としてすべての直轄工事の施工現場を対象に、施工体制の実態を把握するための調査に乗り出す。とくに道路舗装工事は、特定の下請け1社に50%以上の契約をしているケースを重点的に調査する。他の業種も含め数千件の現場で、いわゆる上請けの存在について、詳細な調査を実施する。施工体制台帳の整備によるチェックはすでに行われているが、今回の調査はこれにとどまらず、現場に施工体系図を掲示しているかどうか、元請けと下請けの関係について役割分担がどうなっているのか、元請けとしての責任を果しているのかなどを調べる予定で、1ヶ月程度の調査期間を見込んでいる。
● 参院国土・環境委員会が開かれ、「公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律案」の質疑が行われた。政府側の答弁は次のとおり。
<施工体制台帳の充実>施工体制台帳に2次下請以下の契約金額を記載した書類を添付して発注者に提出してもらうことは、不良・不適格業者排除のためにも施工体制台帳の活用の充実が求められており、契約金額を明記する方向も含めて検討していく。法の施行時期が来年4月からのため、早く結論を得たい。
<不正行為の公正取引委員会への通知>通知義務が生じることで、談合などへの抑止力になる。また、通知が増えることも考えられる。官製談合の場合、通知されない場合、状況を確かめて指導するほか、地方自治法のもとづき改善要請を行う。発注者に対して公取委は要請が実態だが、法的根拠を与えられるとさらに不正行為防止の効果が発揮できる。
<入札監視委員会について>現在、建設省全直轄工事の1.3%が委員会の審査対象になっている。今後は、委員会機能の強化充実を図り、審査対象工事を増やしたい。地方については、地方分権も踏まえ、広域行政地域で委員会を設置できればと考えている。
<施工体制台帳の虚偽記載への対応>1995年度以降、虚偽記載による指名停止処分は今年8月に1件、中部地建管内で1ヶ月指名停止をした。この工事の丸投げ疑惑については、調査の大詰め段階で、建設業法に照らし厳正な対応をする。
● 政治家が公務員に口利きした見返りに報酬を得ることを禁じる与党提出の「あっせん利得処罰法」が参院本会議で自民、公明、保守の与党3党などの賛成多数で可決、成立した。刑法のあっせん収賄罪と異なり、業者から請託を受けた国会議員や地方議員が働き掛けた公務員が不正行為を働くかどうかを問わず法律を適用できるようにしたのが特徴。違反した場合、刑事罰として政治家には3年以下の懲役を科す。来年2月下旬に施行の見通しだ。 同法は国会議員、地方議員、地方自治体の首長などの政治家と国会議員の公設秘書に適用されるが、施設秘書は対象外。 口利き相手の公務員の対象には国・地方自治体の出資率が50%以上の法人の職員も含まれる。
● 地方自治体の公共工事発注体制が不十分であることが、建設省の調査でわかった。調査は、地方自治体の @技術職員 A入札・契約方式 B企業選定 C発注者支援データベースの活用――などの状況をアンケートした。公共工事発注部門の職員配置状況をみると、都道府県・政令市はすべて300人以上となっているが、町・村レベルは「10人以上25人未満」が50.1%、「10人未満」が21.5%、「25人以上」が26.6%となっている。市・特別区は「25人以上」が77.7%を占めるが、「10人未満」も5.3%あった。発注部門の技術職員比率は、都道府県・政令市で55.2%、市・特別区が52.8%、町・村では26.2%。自治体の規模が小さくなるにしたがって技術職の割合が少なくなっている。
● 建設省は国や地方自治体が整備する道路の設計基準を今年度中に抜本的に改正する。新設する都市部の道路については歩道と自転車の双方を併設するよう義務づけるほか、路面電車の通行スペースを車道とは別に一定の幅を確保できるようにする。自動車の通行を最優先にしてきたこれまでの設計思想を転換し、歩行者、自転車や公共交通など他の交通手段をより重視する。都市部の幹線道路は原則、植樹帯を設置するようにして環境面にも配慮する。高齢者、障害者、幼児などの区別なくだれもが利用しやすい道路の実現を目指す。

業界の動向

● 準大手ゼネコン熊谷組が発表した2000年9月中間連結決算は、バブル期に手掛けた不動産開発、ゴルフ場事業の整理などに伴い特別損失を4141億円計上し4689億円の連結債務超過に陥った。現在、住友銀行、新生銀行など15の取引金融機関に対し4500億円の債権放棄を要請中で、再建ピッチを速めるため年内に従業員を1000人削減し5500人程度にする。 

その他の動向