情勢の特徴 - 2001年2月

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 業界の動向 その他の動向

経済の動向

● 国土交通省が発表した建設大手50社の2000年の年間受注統計によると、受注総額は前年比2.7%増の15兆9439億円で、4年ぶりに増加となった。公共工事は地方自治体の財政難などにより1989年以来11年ぶりに4兆円台に落ち込んだものの、民間工事が製造業などを中心に好調で、全体を押し上げた。国内受注総額は、同1.4%増の15兆3079億円。うち民間工事は同5.4%増の10兆1397億円で4年ぶりに増加した。製造業、非製造業とも増加しており、特に製造業は同39.2%増(1兆7588億円)と大幅に伸びた。公共工事は同9.3%減の4兆5494億円で5年連続の減少。国の機関が6.9%減の2兆2997億円、地方の機関が同11.7%減の2兆2497億円で、両機関とも前年を下回った。
● 国土交通省が発表した2000年の新設住宅着工戸数は122万9843戸と前年比1.3%の微増となった。戸建ての注文住宅(持ち家)や貸家は減ったものの、マンションなどの分譲住宅が6年ぶりに2ケタ台の伸びを記録し、全体で2年連続の増加となった。2000年の分譲住宅の着工戸数は前年比14.1%増の34万5291戸と2年連続でプラスとなった。このうちマンションは同17.9%増の21万7703戸。持ち家は前年比4.9%減の45万1522戸で、2年ぶりのマイナス。貸家は同0.7%減の42万1332戸と4年連続で減った。
● 東京商工リサーチがまとめた2000年12月の建設業倒産件数は490件、負債総額は1194億1600万円だった。7ヶ月連続500件以上の高水準がストップしたうえ、前年同月比は3.1%減と連続増にも歯止めをかけた。しかし、12月としては過去8番目と、その水準は高い。総合建設業が232件、 47.3%を占めている。負債額の平均は2億4300万円と、比較的少ない。資本金1億円未満の企業は489件、その半数にあたる239件が1000万円未満の中小・零細企業が占めている。
● 宮沢喜一財務相は、2004年度までの財政運営の目安となる「財政の中期展望」を衆院予算委員会に提出した。それによると、2001年度予算案では 28兆3000億円だった国債の新規発行額が、2004年度には38兆3000億円と10兆円拡大すると試算。歳入に占める新発国債の割合を示す国債依存度は、2001年度の34.3%から41.1%に悪化し、年度末の国債残高は389兆円から483兆円に膨張するとしている。「中期展望」は、期間中の実質経済成長率2%、消費者物価上昇率0%、10年国債の金利年3.2%を前提として試算している。
● 国土交通省は、建設業界の再編促進策を正式に発表した。建設業の許可基準として自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)規制を2002年度中に導入する方向で検討する。国などが大型公共工事を発注する際、財務内容が一定の基準に満たない企業が代表を務める共同事業体の入札参加を認めない案も検討する。自己資本比率規制は一定規模以上の工事を下請業者に発注できる「特定建設業」と呼ばれる免許を持つ建設業者が対象。2000年3月末で約5万社ある特定建設業は5年ごとに免許を更新する必要があり、免許更新時に一定の比率を満たない企業の更新を認めないようにする。財務内容が一定未満の企業を代表とする共同事業体を入札から排除する案は当面、国の直轄工事のうち数億円規模工事で導入する見込みだ。財務内容の基準としては公共工事の入札参加資格を審査するための全国統一評価「経営事項審査」のうち、売上高営業利益率など業者の経営状況を示した点数を活用する。
● 日本銀行は政策委員会・金融政策決定会合で、現行年0.5%の公定歩合を0.15%引き下げ年0.35%とすることを決めた。引き下げは1995年9月8日以来約5年5ヶ月ぶり。また、短期市場金利が急上昇するような場合に、金融機関の申し出に応じて公定歩合で資金を貸す「ロンバート型貸し出し」を新たに導入することも決めた。
● 東京商工リサーチがまとめた1月の建設業倒産は、419件で前年同月比7.7%の減少だが、負債総額は1180億900万円で36.9%の増加となった。倒産の原因別では、受注・販売不振、赤字累積(63件)、売掛金回収難(8件)を合わせた不況型が312件で、全体の74.4%を占めている。倒産の形態別では、銀行取引停止が291件ともっとも多く、資本金規模別では、1億円以上が2件、1000万円以上1億円未満が224件、1000万円未満が193 件。従業員数をみても10人未満の零細企業の倒産が318件、75.8%となっている。
● 47都道府県の2001年度一般会計当初予算案が出そろった。予算総額は前年度比0.8%増の53兆3091億円。骨格予算とした秋田、千葉両県を除く実質的な伸び率は1.0%増で、3年ぶりにプラスに転じた。財源不足を補うため、6140億円の赤字地方債を初めて発行するのが特色だ。赤字地方債(臨時財政対策債)は、地方交付税の一部を肩代わりする代替財源で、千葉と東京以外が発行を予定している。このため、交付税は4.8%減の10兆6450億円に落ち込む半面、地方債は5.5%増の5兆8816億円に膨らむ。歳出では、借金返済に充てる公債費が9.4%増の6兆3545億円と、引き続き財政を圧迫することから、公共投資を実質0.1%減の11兆5907億円 (秋田、千葉両県を除く)の抑制する。このうち自前の財源で行う地方単独事業は、0.2%減の4兆3661億円(同)にとどまった。

行政の動向

● 国土交通省は、元請けに一括発注するのではなく、自らが発注者と元請けの立場を兼務し、直接専門工事業者と個別に契約を結ぶ、新しい契約方式となる「直接工事マネジメントシステム」を試行・導入する。すでに九州地方整備局が、発注に向けた具体的な検討に着手しており、早ければ2000年度内にも2件の工事で採用する。実施後は、成果の検討に入り、期待どおりのデータが得られれば、正式な契約方法の1つとして位置付ける。今回、直轄工事で試行する直営工事マネジメントシステムと呼ばれる方式は、契約方式の多様化の1つ。国土交通省が発注者でありながら、元請けとして施工管理も担う。この方式の最大の目的はコストダウンだという。国土交通省には多くの技術職員がいることから、自ら施工管理を担うことで、発注者としての立場だけではなく、元請けの役割も担当することによって、工事費の削減を図る。発注者形態としては国土交通省が直接、各工種の専門工事業者と契約を結ぶシステムで、いわば分離発注の推進といえる。
● 国土交通、総務、財務の3省が共同で作成を進めている「公共工事適正化指針案」の概要が明らかになった。指針案では透明性の確保策として、競争参加者の評点・順位、予定価格、積算内訳などの公表を求めたほか、不正行為の排除を徹底させるため、▽談合情報への対応要領▽施工体制の把握に関する要領▽指名停止基準−などの策定、公表を挙げた。3省では3月初旬の中央建設業審議会で指針を決定、それを受け政府は閣議決定する。
● 東京都世田谷区は4月から、高齢者などが賃貸住宅を借りる時に、家主に対して滞納時の家賃を保証する制度を始める。民間保証会社と提携し、家主が安心して家を貸せる環境を整えて高齢者などの住まいの確保を支援する。同時に、入居する高齢者の福祉・介護相談も受け、必要に応じて区内のサービスを紹介する。金銭保証と福祉相談の窓口は一本化して利用しやすくする。制度の対象は60歳以上の高齢者世帯か障害者手帳を持つ障害者世帯、18歳未満の子供を持つ1人親世帯で、2年以上、区に住んでいる人。約1万3000 世帯が対象で初年度の利用者は約1000世帯を見込む。利用者の収入にも家賃にも上限は設けない。ただ、基本的に家賃を自分で払えることが条件。入居者は賃貸契約を結ぶときに1ヶ月の家賃の35%を保証原資として民間保証会社に支払う。利用者が家賃を滞納したら8ヶ月分まで保証会社が保証する。原状復帰費用は家賃3ヶ月分までを保証。原資を超えた分は区が保証会社に補てんする。
● 政府は、公共工事入札契約適正化法の施行令と政令を閣議決定した。施行令は、工事の入札・契約について情報公開すべき項目、対象とする特殊法人などを定めている。業者指名・選定の基準や理由、契約変更の理由、低入札価格調査の経緯なども公表するよう義務付けたのが特徴だ。施行令で情報公開を義務付けるのは、予定価格が250万円以上の工事で、@年間の発注見通しA入札・契約過程B契約内容――の3分野に関する項目を掲示やインターネットで公表する。入札・契約過程や契約内容の公表では、単に契約金額、業者名だけでなく、指名・選定の基準や理由、契約変更(金額の変更を伴う場合)の内容・理由などを公表するよう求めている。契約変更以外では、業者指名理由や随意契約の業者選定理由、低入札価格調査の経緯など、これまでオープンにしてこなかった項目にも公開を義務付ける。工事発注情報の公表では、随意契約の契約締結時期も含めた発注予定を毎年度公開する。
● 環境省は近く、廃棄物処理法で定める「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の区分を見直す方向で検討を始める。現行法では一廃の処理責任を市町村に、産廃は排出事業者責任として定めているが、今後の検討次第では産廃と一廃の区分を撤廃する可能性もある。一廃と産廃の区分見直しは、経団連や日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)ら、一廃処理を新市場と見る産業界からの要望が強かった。現行法では、産廃と一廃でたとえ同種の廃棄物が排出された場合でも、責任体系の違いから、それぞれ別々の処理施設を使わなければならない。しかし、区分が撤廃され、一廃と産廃の混合処理ができるようになれば、処理事業の大幅な効率化が期待できる。施設が1種類で済むため、初期投資も軽減できる。同省の検討次第では、区分撤廃だけでなく、同じ処理施設で対応できる場所に混合処理を認める可能性もある。混合処理が実現すれば事業採算性が高まり、PFI事業者らの参入意欲を刺激しそうだ。
● 長野県の田中康夫知事は、「『脱ダム』宣言」を発表し、決断が迫られていた下諏訪ダム(下諏訪町)についても、計画を中止するとしている。「宣言」では「数百億円を投じて建設されるコンクリートのダムは、看過しえぬ負荷を地球環境へと与えてしまう。さらにはいずれ作り替えねばならず、その間にいちじるしい分量の堆砂(たいさ)を、これまた数十億円を用いて処理する自体も生じる」と指摘。「国からの手厚い金銭的補助が保証されているから、との安易な理由でダム建設を選択すべきでない」と述べている。さらに「100年、200年さきの我々の子孫に残す資産としての河川・沼湖の価値を重視したい」「これは田中県政の基本理念である」と宣言している。下諏訪ダムについては「治水、利水ともに、ダムによらなくても対応は可能であると考える」として中止を宣言している。
● 埼玉県は、産業廃棄物の再資源化施設を集積したリサイクル拠点を整備する。寄居町の県営最終処分場「県環境整備センター」の敷地を活用、土地賃貸方式やPFI(民間資金活用による社会資本整備)方式を導入し民間主体で事業を展開する方針。来年度中に基本構想を作成し、2002年度には公募方式で事業主体を決め、2004年度に着工、2006年度の完成を目指す。「最先端技術を持つ企業を誘致して、資源循環工場の全国モデルにしたい」(県廃棄物指導課)考え。大学を含め、リサイクル分野の研究を手掛ける機関も誘致、進出企業との共同研究開発にもつなげる方針だ。
● 国土交通省は、直轄営繕工事の設計業務と工事管理業務の委託者を分離する。従来、設計を委託された業者が随意契約で工事管理業務も担当するケースが多かったが、工事管理業務を第三者に委託することで、建築物の品質管理の向上を図る。工事管理業務の委託者は設計事務所や設計コンサルタント業者で、指名競争入札などにより委託者を選定する。特殊工事などで仮に設計者が引き続き工事管理業務を行う場合でも、設計業務の管理技術者でない者が工事管理を行わなければならない。同省ではすでに「建築工事管理業務委託契約書」と「建築工事管理業務委託共通仕様書」「建築工事管理業務委託の基本方針」などを選定、各地法整備局に通達し、同日から運用を開始している。

労働関係の動向

● 鉄道や道路のトンネル工事で粉じんを吸ってじん肺になったとし、元建設作業員らが大手ゼネコンなどに損害賠償を求めた「全国トンネルじん肺訴訟」は、東京地裁で和解が成立した。同地裁の和解条項には、原告26人に対し約4億円を支払うことのほか、原告への弔意と見舞いの言葉が盛り込まれた。また同地裁は、粉じん対策が徹底されるよう、施工業者だけでなく発注者である国や地方公共団体、日本道路公団、日本鉄道建設公団などの面で最大限の配慮を要望。具体的に積算基準などの改定を求めている。
● 熊谷組の住宅リフォーム専門子会社「リフォームマスター」(本社横浜市戸塚区)は、来年度から神奈川県下に限定し、リフォーム事業にフランチャイズ(FC)制を導入する方針を明らかにした。熊谷組では1999年9月、共同住宅の個室単位でのリフォームを専門に扱うリフォームマスターを設立した。ここ数年、戸建て住宅や共同住宅(分譲)の所有者の生活スタイルが変化し、居室空間をリフォームする事例が急増するため受注拡大につながると判断、リフォーム事業に参入することにした。同社のリフォーム事業は、顧客へのリフォーム提案から設計・施工監理までを専任の女性スタッフが行い、施工は協力会社20社が担当する。FC希望者の採用条件は検討中だが、現段階では自前で店舗を開設でき、これまでリフォーム事業に携わった経験ある人材とする方針。

業界の動向

● 経営再建中の熊谷組は、住友銀行など取引金融期間と進めていた総額4300億円の債権放棄交渉で正式に合意したと発表した。債権放棄に応じたのは住友銀行や新生銀行など11行で、当初要請していた1部の地方銀行を含む4行は債権放棄に応じなかった。債権放棄に応じた金融機関の内訳は住友銀が約2595億円、新生銀が約1030億円、住友信託銀行が約241億円、東海銀行約239億円など。

その他の動向