情勢の特徴 - 2001年6月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は、経済・財政運営の基本方針を正式決定した。今後2〜3年間を日本経済の集中調整期間と位置付けて、不良債権の直接償却など最終処理を確実に実現すると公約した。同時に公共事業、社会保障、地方財政などあらゆる分野で構造改革を推進し、民需主導による日本経済の再生を目指す。基本方針では日本経済再生の第一歩として、不良債権問題の抜本的解決を急ぐ必要性を指摘。整理回収機構の機能強化などを通じて、主要行が抱える破たん懸念先以下の約11兆7000億円の不良債権の最終処理を確実に実現する決意を示した。それに伴う企業倒産や失業増に対応するため、規制緩和を通じて新規雇用を創出するとともに、失業期間中の住宅ローンや教育費支援を検討する方針も示した。これと同時に特殊法人の民営化や徹底した規制改革の推進、地方交付税や道路特定財源の見直しなど7つの構造改革プログラムを推進。生産性の低い分野から成長部門への人材や資金の移動を促して、民需主導で年2〜3%程度の経済成長を回復する「躍動の10年」を目指す再生シナリオを描いた。2002年度予算では国債発行額を30兆円以下に抑える目標を設定。公共事業や地方財政、特殊法人への歳出を縮減する一方、情報技術(IT)など成長が見込める分野に重点投資するなど予算配分を弾力化する。日銀には機動的な量的緩和政策を求める。
● 日本プロジェクト産業協議会(略称・JAPIC)は、大都市圏の都市構造再編に向けて優先的に実施すべきプロジェクトを、提言としてまとめた。東京圏は都心軸として東京駅(八重洲、丸の内)、日本橋、副都心軸として池袋、渋谷、新宿をあげている。大阪圏では都心軸に中之島西部、臨海部として堺臨港地区を選んだ。都市構造再編に視点を絞り、先導的事業としてあげた。また、都市再生を確実なものとするため、「都市再生・活性化特別措置法」を整備し、都市再生促進基金と人材活用促進基金を設けて、都市再生総合整備事業を展開するべきだと主張している。大都市が抱える基本課題は、20世紀の負の遺産の解消、21世紀の国際都市として魅力と競争力を高めること。そのためには、安全で住みやすい都市づくり、迅速なアクセスを実現する交通インフラ整備、環境共生型都市の実現、世界に発信する観光・情報・芸術都市の実現。都市文化を享受する風格ある都市づくりが必要だ。これらを具体化するには、都心部の魅力付けと多核型都市構造の形成、環状道路整備による都心部の交通負荷・環境負荷の軽減、空港への迅速なアクセスや産業構造の再編に寄与する大量輸送機関の整備が欠かせない。こうした観点から、東京圏と大阪圏で都市構造の骨格となるプロジェクトを提案した。

行政の動向

● 政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)は首相官邸で第2回会合を開き、都市再生プロジェクトの第1次決定として「東京湾臨海部での基幹的広域防災拠点整備」など3つを選定した。また、今後プロジェクトの選定を進める上での基本的考え(案)も策定した。都市再生プロジェクトは内閣が定める統一的な方針に基づき、関係省庁が連携して取り組むものであることを前提とし、プロジェクトの実施に当たっては民間事業者の力を最大限に活用することを決めた。政府が都市再生に向けて実施を決定したのは▽東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備▽首都圏におけるごみゼロ型都市への再構築▽中央官庁施設の民間資本主導の社会資本整備(PFI)による再開発―の3プロジェクト。このうち中央官庁施設のPFIによる整備では、東京・霞ヶ関にある文部科学省と会計検査院を含む街区を対象に、PFI手法による再開発を検討する。一方、ごみゼロ型都市では東京圏で関係7都県市よる協議会を設け、中長期的な計画を作成するとともに、東京湾臨海部で先行的な廃棄物・リサイクル施設整備事業を展開する。廃棄物処理やリサイクルなどの事業は民間主体で行い、民間では対応できないポリ塩化ビフェニール(PCB)処理などは国や地方自治体が関与する。
● 政府は、特殊法人等改革推進本部(本部長・小泉純一郎首相)の初会合を開き、163の特殊法人と認可法人のうち157法人が手掛ける事業をゼロベースで見直すこととし、その基準と対象を明記した「中間とりまとめ」を決定した。日本道路公団、石油公団など年間3000億円以上の財政資金を投入している大型法人についても、存在意義を根本から洗い直し、廃止や民営化を含めて経営方式を再検討する。会合の席上、首相は2001年度で約5兆3000億円に上る特殊法人などへの財政支出を来年度予算から1兆円を目標に削減するよう指示。「中間とりまとめ」では、すべての特殊法人と認可法人を18類型に分類し、各法人の事業の問題点を指摘。公共事業にかかわる法人では、道路公団のほか日本下水道事業団、新東京国際空港公団、都市基盤整備公団などについて@廃止A民営化B国、地方の直轄事業化C事業統合――の可能性を探る。道路公団と首都高速道路公団の駐車場建設・管理事業は民間への委託を検討する方針だ。政策金融関連では「事業の意義、実績が乏しい」として住宅金融公庫、石油公団など20法人を列挙。「民間と類似の事業」をして国民生活金融公庫など19法人の事業を挙げ、廃止を含め検討する。金融が主要業務ではない地域振興整備公団など21法人の金融事業は、政府系金融機関への事業統合を検討する。

労働関係の動向

● 民間有識者で構成する内閣府の研究会は、不良債権の最終処理(直接償却など)で39万〜60万人が離職するとの試算結果をまとめた。試算によると、一時的な離職者は最大で60万人増加するが、このうち18万〜27万人は半年以内に別の職業に再就職するとみている。また9万〜15万人は仕事に就かずに退職して非労動力化する。実際に勤務先が倒産した場合、定年退職が近い50歳代の従業員らは再就職しないケースが多い。試算は今後2年間に主要銀行が既存分の約12兆7000億円の不良債権を処理することを前提にしている。業種別の離職者数の平均的な試算では、建設業が最も多く約20万1000人(うち失業者6万5000人)。卸・小売業は約11万7000人(3万3000 人)、サービス業は約8万1000人(2万人)などとなった。建設業や卸・小売業で離職者が目立つのは、業績不振で過剰債務を抱える企業が多く、不良債権処理の影響を強く受けるためとみられる。
● 政府の行政改革推進本部(本部長・小泉首相)は、公務員制度改革の骨格を定めた「基本設計」を決定した。職務給を原則とした給与制度を改め、降格処分を可能にした信賞必罰の「能力本位の任用と給与の実現」、業務目標を設定しその達成度を評価する目標管理制度の導入などが内容。12月をめどに、「公務員制度改革大綱(仮称)」を策定する予定。「基本設計」は、各省大臣を「人事管理権者」として位置付け、組織・人事制度を弾力的に設計できる権限を付与し、人事院の人事管理にかかる事前承認、事前協議制度は「廃止する」ことを明記。本省審議官以上の幹部職員に年俸制を適用するとしている。企画立案と執行の分離をすすめ、独立行政法人化の推進および外部委託等の活用をはかるとし、事実上企画立案部門の強化を打ち出している。

資本の動向

その他の動向