情勢の特徴 - 2001年7月前半
● 日米首脳会談で、ブッシュ米大統領は構造改革の決意を示す小泉純一郎首相を全面的に支持する姿勢を示した。小泉首相は会談で「経済・財政の基本方針」に沿って、日本経済の再生のため構造改革や規制改革を「精力的かつ包括的に実施する」との決意を表明した。とくに「企業債務と不良債権に効果的に対処する」と述べ、企業の過剰債務を削減すると同時に金融機関の不良債権を処理し、金融・産業を一体的に再生させることを「公約」した。
● 日銀が発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス16と、3月調査に比べ11ポイント下がり、2期連続で悪化した。非製造業はマイナス13と横ばい。業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。大企業製造業のマイナス16は、1999年12月以来の低さ。全15業種中、食料品などを除く11業種で業況判断が悪化。IT関連の不振を映し、電気機械がマイナス35と前回調査に比べて26ポイントの大幅な悪化となった。大企業非製造業の業況判断は通信や建設などで悪化したが、小売りや運輸、電気・ガスで改善した。中小企業でも製造業が前回を10ポイント下回るマイナス37、非製造業は同3ポイント悪化のマイナス31となり、ともに99年9月以来の低水準となった。
● 民間信用調査機関の東京商工リサーチが発表した今年1〜6月の企業倒産状況によると、負債総額は上半期としては戦後2番目に多い7兆2402億円となり、前年同期を5.5%上回った。今年上半期の倒産件数は9306件と前年同期比1.5%増にとどまった。しかし、今春に9800億円の負債を抱え更生特例法を申請した東京生命保険、リース業のエスコリースなど100億円以上の大型倒産が87件と、前年同期を47.4%上回った。このため、負債総額は不動産業者の経営破たんが相次いだ 1999年上期の約9兆円に次ぐ水準に膨らんだ。中小零細では信用保証協会の特別保証で金融機関から融資を受けながら倒産に追い込まれた企業が455件増の2241件に上った。倒産件数のおよそ4件に1件の割合。業種別に見ると9業種中4業種で件数が前年同期を上回った。製造、小売業などで件数が減ったが、金融・保険業は前年同期比63.6%と急増した。倒産件数が業種全体に占める比率では建設業が32.0%と最大だった。倒産理由は「販売不振」が半数以上を占めた。これに「取引先に対する売掛金の回収難」「累積赤字による経営悪化」という原因を合わせた不況型倒産は6581件と、前年同期より4.1%増えた
● 国土交通省は、採算を度外視して工事を受注するいわゆるダンピング受注の排除に向けた対策を強化する。公共工事発注者と業行政担当部局、保証事業会社の3者の連携を深めることが対策の柱。直轄工事で低入札価格調査の対象となった物件について、入札者の経営状況などを同省が保証事業会社などに照会し、各保証事業会社は守秘義務に抵触しない範囲で情報提供に協力する。低入札価格調査の対象工事については、保証事業会社が前払金の使途監査を重点的に実施し、不適切な扱いがないか厳しくチェックする。使途監査については、低入札価格調査の実施状況を同省が各保証事業会社に通知し、重点実施する。当該工事で前払金保証を行う場合、保証事業会社は▽落札価格に関する事情聴取▽工程表、工事費内訳明細書、出来高報告などの徴求▽現場調査の実施−などを重点的に実施する。使途監査で前払金の不適切な取扱いが判明し、保証事業会社の改善要求に請負人が応じない場合、保証事業会社はその事実を国土交通省に通知する。同省は事実を確認した上で、請負人に対し、請負契約に基づく請求や建設業法に基づく勧告など、必要な措置を執る。
● 国土交通省は、不良・不適格業者排除の徹底に向けて、建設業法や他法令違反を逃さず、監督処分の遅れや漏れを無くすため、公正取引委員会、厚生労働省、警察庁、地方公共団体などと連携して「不良・不適格業者排除促進コラボレーションシステム」を構築する。システムは3つのコラボレーションで構成し、まず大臣許可業者の監督処分情報をデータベース(DB)化してインターネット上で9月中に公表を始める。また、関係機関が持つそれぞれの情報について、電子的手法による情報交換の在り方を今年度末までに固める。2002年度中にはシステムを構築、稼働させる予定だ。不良・不適格業者排除の徹底には、建設業者に関係する建設業法、労働安全衛生法、労働基準法、暴力団対策法、独占禁止法などを所管する関係省庁が連携し、各法令違反業者の情報を迅速で正確に交換して適切な監督処分を行うことが求められている。
● 総務庁統計局が発表した平成12年国勢調査の速報集計(1%抽出)結果によると、建設業の就業者数は626万5800人で、前回調査時より35万 1700人減少(5.3%減)した。全産業就業者数(6289万4000人、前回比1.9%減)に占める割合は10.0%(前回比0.4ポイント減)で、この構成比率は産業大分類では前回と同様4位(1位はサービス業で26.8%、前回比2.3ポイント増)、産業小分類では同じく1位となっている。建設業就業者の中には管理職、事務職、販売従事者、建築技術者などが含まれているが、建設現場での作業に携わる建設作業者は277万6500人。前回調査時より10万4500人減少(6.5%減)した。建設作業者の内訳(職業小分類に基づく)をみると、大工は66万5700人で前回比14.2%減。85 年、90年と減少し、前回調査時の95年には一転して増加したが、今回は再び減少に転じた。とび職は85年、90年、95年と増加が続いていたが、今回は 3.0%減の11万1200人と減少した。土木作業者は90年、95年と増加が続いたが、今回は4.4%減の85万7400人。これらは不況公共工事の減少が要因と言えよう。
● 建設経済研究所は主要建設会社51社を対象にした2001年3月期決算の分析結果を発表した。単独ベースの分析のうち、工事の粗利を示す売上総利益は大手5社以外の準大手、中堅クラスが軒並み減益となった。一方、連結ベースでは全体として増収となり、営業・経常利益も増益となった。売上高は全体で16兆6140億円となり、前年度に比べ8819億円、5.7%増加した。前年度と比較した売上総利益の増減率は、大手が1.9%増なのに対し、準大手4.4%減、中堅A4.5%減、中堅B11.7%減、中堅C15.6%減と、売上規模が小さくなるほど減少率が高くなる。一方、売上総利益率は利益の絶対額を増加させた大手も含め、すべての階層で悪化した。