情勢の特徴 - 2001年7月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 東京商工リサーチの試算によると、政府の方針に沿って大手銀行16行が2年間で11兆7000億円の不良債権を直接償却すると、企業の整理から生じる新規失業者問題が発生し、その数は約20万人に達するとしている。このうち建設業からは5万3905人、不動産業からは2315人が失業者となる見通しだ。同社は、直接償却で失業者が増えるというよりも、とどまるめどが立たない景気後退を見越した大手企業が大量のリストラを実施するなどの経営方針が、失業率を大きく押し上げるのではないかと指摘している。
● 東京商工リサーチは、2001年上期(1〜6月)の建設業倒産調査結果をまとめた。件数は2982件で前年同期比0.3%の微減だが、過去4番目の高い水準になった。負債総額は7663億円で16.4%増。額では過去2番目となっている。倒産別原因は、受注・販売不振1616件、赤字累積494件、売掛金回収難58件で、この3原因を合わせた不況型倒産が2186件と、全体の72.7%を占めた。倒産別形態は銀行取引停止が2119件で、71.0%に達した。資本金階層別では、1000万円以上5000万円未満が1463件で、全体の49.1%とほぼ半数を占め、5000万円以上の企業倒産は99件に過ぎない。
● 建設経済研究所と経済調査会は、2001〜02年度の建設投資見通しを発表した。2001年度の建設投資(名目)見込み額は、65兆5233億円。内訳は政府建設投資28兆9150億円(前年度比7.3%減)、民間住宅投資19兆 4762億円(同4.4%減)、民間非住宅建設投資17兆1321億円(同8.8%減)。政府建設投資は、補正予算による新たな追加投資が行われないという前提では大幅に減少する。民間住宅投資は、新たな住宅ローン減税による下支えや低金利という追い風があるものの、雇用・所得環境の回復は見込めないことから、2年連続の減少を予測。住宅着工戸数は同3.1%減の117万5000戸程度で、着工戸数が110万戸台になるのは98年度以来3年ぶりとなる。民間非住宅建設投資は、5月時点で同5.5%減を予想していたが、今回同8.8%減の下方修正した。建設着工床面積も同16.6%減。事務所が同9.4%減、店舗が同39.6%減、工場が28.1%減で、各用途でそれぞれ大きく減少する。一方、2002年度の建設投資(名目)見込み額は61兆9545億円。このうち政府建設投資は、当初予算が横ばい、公共事業予備費や補正予算の追加措置がないとの前提に立つと、同11.2%減の大幅な減少となる。民間住宅投資は住宅着工が伸びず、同1.0%減の3年連続のマイナス。民間非住宅投資は建築部門がやや回復するものの、土木部門がふるわず、同0.7%減と2年連続のマイナスとなるもよう。
● 総務省が発表した6月のサラリーマン世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は30万4318円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比3.3%減少した。自動車やパソコン、テレビといった耐久財向け支出などが落ち込んだ。6月は大企業などでボーナスの支給月にあたり、「臨時収入・賞与」は前年を実質4.0%上回った。これを受けサラリーマン世帯の実収入は0.8%増え、 7ヶ月ぶりにプラスに転じた。税金や社会保険料の支払いを示す非消費支出は名目で5.9%減少、実収入から非消費支出を差し引いた可処分所得は前年に比べ実質1.9%増加した。収入は上向いたが、消費支出は低迷を続けている。項目別にみると「交通・通信」が11.2%減少全体の消費支出を最も押し下げた。自動車購入費が40.4%減と大幅なマイナスになったことが主因。

行政の動向

労働関係の動向

● 総務省が発表した6月の完全失業率(季節調整値)は4.9%と、過去最悪だった5月と同水準になった。厚生労働省が同日発表した6月の有効求人倍率も0.61倍(季節調整値)と5月同水準となった。6月の完全失業者数は338万人と前年同月比17万人増。年齢別にみると、男女ともに25〜44歳の自発的失業者の増加が目立つ。男女別では男性の完全失業率が5.1%、女性が4.6%といずれも前月と同水準だった。就業者数は6466万人と3ヶ月連続で減った。企業などに勤める雇用労働者は14ヶ月連続の増加。非農林業の常用雇用者は前年同月比1万人減の4702万人と8ヶ月ぶりに減少したが、パートなど臨時雇用は増加が続いた。

資本の動向

● 日本建設業団体連合会は、法人会員63社(厚生会社などを除く)の2000年度本決算(単独ベース)の実態調査結果をまとめた。売上高総額は 18兆1890億円で前年度比5.2%の増加。完成工事高の占める割合は97.6%で、0.1ポイント上昇した。本業回帰の傾向が続いていることを裏付けた。しかし、完成工事総利益(粗利)率は8.6%で、0.8ポイント下がった。経常利益は4510億円で8.9%増だが、特別損失も2兆540億円で 88.8%の大幅な増加となった。

その他の動向