情勢の特徴 - 2001年8月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 東京商工リサーチがまとめた6月の建設業倒産は、件数が545件で前年同月比1.1%増、6月単月としては過去最悪を更新した。負債総額は1128億 9900万円、6月としては5番目に悪い水準となっている。1件あたりの平均負債額は2億700万円。この負債額からみても、小規模な地場企業の経営環境の厳しさがうかがえる。倒産の原因でも受注・販売不振、赤字累積、売掛金回収難を合わせた「不況型」が390件と、全体の71.5%を占めたことがそれを裏付けている。倒産形態別では、銀行取引停止処分が390件(構成比71.5%)を占め、規模別でみると、資本金階層別では1億円以上が1件、1000万円以上―1億円未満284件、1000万円未満(個人事業含)が260件の割合。従業員数別では10人未満の零細企業が414件(構成比75.9%)となった。
● 国土交通省が発表した2001年上半期(1−6月)の新設住宅着工戸数は、前年同期比6.1%減の56万591戸となり、上半期ベースで2年ぶりに前年実績を下回った。景気低迷に伴う不安感の増大を背景に、持ち家と貸家、分譲住宅の主要3項目すべてがマイナスを余儀なくされた。主な内訳は、持ち家が同13.2%減の19万5459戸で、2年連続のマイナス。貸家は同0.8%減の19万9025戸。分譲住宅は2年ぶりのマイナスに転じ、16万1807戸と同2.2%減少。マンションの着工も同3.1%減少し、けん引役が姿を消した格好だ。国土交通省が発表した2001年上半期(1−6月)の建設工事受注動態統計調査(大手50社対象)によると、受注総額は前年同期比15.6%減の7兆4692億円と、上半期としては2年ぶりでマイナスに転じた。国、地方自治体の財政悪化、景気低迷による投資減少が響いた。主な内訳は、公共工事が同16.1%減の2兆574億円、民間工事が同18.3%減の4兆6680億円。
● 総務省が発表した6月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は4.9%で、過去最悪を記録した昨年12月、今年1月、そして前月(5月)と同率となり、今回は2ヶ月連続の最悪記録である。完全失業者数も1年前(前年同月)より17万人増の338万人で、3ヶ月連続の増加。完全失業率を男女別でみると、男性は5.1%、女性は4.6%で、男女とも前月と同率。完全失業者数では、男性は1年前より14万人増の208万人で3ヶ月連続増加、女性は同4万人増の131万人で2ヶ月連続の増加。就業者数は1年前より37万人減の6466万人で3ヶ月連続の減少で、働く人たちが労働力市場から退出していることを表している。特に自営業主・家族従業員は同73万人減の1032万人で17ヶ月連続の減少。長期不況の中で中小零細企業の経営悪化が進み、廃業に追い込まれていることを示している。
● 金融庁は、民間金融機関が抱える2001年3月末時点の不良債権額を公表した。貸出先が破たんしたり、元利の支払いが遅れた不良債権(リスク管理債権)の合計は銀行全体で32兆5000億円、信用金庫・信用組合なども含むすべての民間金融機関では43兆4000億円で、ともに前年よりも2兆円強増えて、公表を始めた1993年以来、最大の規模となった。将来不良債権化の恐れがある「要注意先債権」は109兆6000億円にのぼった。貸出先企業のうち財務内容にまったく問題のない「正常先」を除く、要注意先、破たん懸念先などの「問題企業」向け融資は合計140兆9000億円と、前年より7兆4000億円減った。問題企業向け融資の大半は要注意先債権で、「不良債権の予備軍」と指摘するアナリストも多い。ただ金融庁は、要注意先債権のうち延滞期間が長いなど警戒が必要な「要管理債権」は13兆3000億円に過ぎず、「不良債権と同一視はできない」と説明している。
● 国土交通省は住宅市場の活性化に向けた2002年度の重点項目をまとめた。住み替えなどで居住水準を向上するため、中古住宅の流通と改築(リフォーム)市場の拡大に取り組むのが柱。第三者に床や壁の手入れ具合の点数を依頼する性能評価制度、マンションの修繕など維持管理に関する情報の登録制度の導入などにより、現在年間15万戸の中古住宅流通量を早期に倍増することを目指す。2002年度からの実施を目指す具体的な取り組みとして、中古住宅の性能評価制度を導入する。住宅の購入を希望する人が1件あたり2万−4万円程度の料金を払い、床や壁、設備の手入れ具合などの点検を不動産仲介業者と利害関係のない第三者に依頼する仕組みを整える。マンションの修繕など維持管理情報の登録制度も導入する。中古マンションの管理組合が過去の修繕実施状況などを第3者機関に登録、登録機関が情報を購入予定者などに開示する仕組みだ。リフォーム市場の拡大に向けインターネットも活用する。国交省は業者の修繕実績などを消費者がネットで入手できるシステム、リフォーム工事の内容と標準的な費用が分かるシステムなどを整備する方針だ。
● 総務省が発表した6月の家計調査によると、全世帯の消費支出は一世帯当たり28万4471円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比3.8%減少し、3ヶ月連続で前年を下回った。同時に発表された4−6月期平均の消費支出は30万934円で、実質で前年同期比3.6%減と、2期ぶりでマイナスに転じた。この結果、9月7日に発表される4−6月期の国内総生産(GDP)速報では、個人消費がマイナスに転落する可能性が強まっている。
● 日銀が発表した7月の貸出・資金吸収動向によると、銀行の貸出平均残高は443兆3400億円と、前年同月比4.0%減少した。マイナス幅が拡大したのは2ヶ月ぶり。前年実績を下回るのは1998年1月以来、43ヶ月連続となった。中小企業への「貸し渋り対策」を理由に公的資金を大手銀行にはじめて注入したのが98年3月。つづいて99年3月にも注入されたが、「効果」はなく、貸し渋り・資金回収は異常な長期化の様相を呈している。このうち大手銀行は前年同月比4.9%減(都市銀行同3.9%減、長期信用銀行同9.6%減、信託銀行同6.5%減)と前月よりマイナス幅を0.4ポイント拡大。
● 小泉内閣は、2002年度予算の概算要求基準を決めた。一般歳出の総額は47兆8000億円と今年度当初予算に比べ約9000億円の削減となる。概算要求基準は、一般歳出の内訳を@社会保障関係費(施設費を除く)A公共投資関係費(公共事業関係費と施設費の合計)B一般政策経費C義務的経費(人件費など)--の4つに分けて、それぞれの上限を設定。社会保障関係費は、自然増1兆円の伸びを医療大改悪などの実施を前提に3000億円圧縮し、今年度当初予算比7000億円増に抑制するとしている。公共投資関係費は10%削減(同1兆400億円減)を打ち出したが、施設費には福祉や教育関係に施設建設費も含まれており、国民向け予算の新たな削減につながる危険もある。また「都市の再生」など、「骨太の方針」に盛り込まれた「重点7分野」には手厚く予算を配分する方針。政府開発援助(ODA)や軍事費、中小企業・教育・農業予算など、人件費や公共投資の部分を除いた一般政策経費の各予算は、一律10%削減(同8500億円減)。しかし、その一般政策経費の削減分のほとんど(8000億円)を財源に、「構造改革特別要求」という事実上特別枠を新設し、「重点7分野」(一般政策経費分)に振り向けるとしている。一方、義務的経費は同500億円となった。

行政の動向

● 総務省は郵政3事業を2003年に移管する郵政公社の大枠を固めた。公社による保有不動産の売買を認め、郵便局の統廃合や新規開局を原則自由化する。総務省は8月中に設置する研究会で議論したうえで、来年の時期通常国会に提出する郵政公社設置法案(仮称)などに盛り込む考えだ。総務省案によると、現在はいちいち予算要求が必要な用地取得を公社が独自判断で機動的に実施できるようにする。採算性の低い郵便局を需要の大きい地域、郵便物の集配に便利な地区に配置転換、宅配便会社などとの競合で赤字が続く郵便事業を立て直す。郵便局数(現在は全国で約2万4000)は公社に新たに導入する中期経営計画で管理する。総資産利益率(ROA)など民間企業と同様の経営指標を採用することも検討する。
● 政府の行政改革推進事務局は、「特殊法人等の個別事業見直しの考え方」を特殊法人等改革推進本部と行政改革推進本部の合同会議に報告した。 157の特殊・認可法人について行革推進事務局の原案と所管の省庁の意見を併記。対立点はあるものの、大企業・ゼネコン奉仕の事業を推進する法人は維持し、国民のくらしのための法人は、民間委託・廃止の方向。日本道路公団については、原案が建設中の高速道路業の「凍結」を提示。しかし原案も国土交通省案も、国が直接工事を担当する「直轄事業」など新たな手法で今後もすすめることで一致している。一方、原案で民間委託・廃止をうちだしているのが国民生活密着の法人。都市基盤整備公団は、新規の住宅建設はおこなわず、既存の賃貸住宅は売却し民間に委ねるとしている。

労働関係の動向

● 昨年1年間に自殺した人は3万1957人で、過去最悪だった前年より1094人(3.3%)減ったものの、3年連続で3万人の大台を超えたことが、警察庁のまとめで分かった。借金や失業などの「経済・生活問題」を動機とする自殺は6838人に上り過去最悪を更新。50〜60歳代が全体の6割を占めるなど、景気の低迷や企業のリストラなど経済環境の変化を反映する結果になっている。原因・動機別では、「健康問題」が最も多く、全体の半数近くを占める1万5539人。「経済・生活問題」は80人増えて6838人となり、2割強に達した。「経済・生活問題」を動機とする自殺は10年間で4.1倍に増えたことになる。「経済・生活問題」の内訳を見ると、「負債」がトップで3437人。次いで「事業不振」1153人、「生活苦」864人、「失業」562人――などとなっている。

資本の動向

その他の動向