情勢の特徴 - 2001年8月後半
● 東京商工リサーチがまとめた7月の建設倒産調査結果によると、499件の倒産が発生した。前月同月比で9.6%のマイナスとなったが、7月単月としては過去2番目の高い水準となっている。負債総額は1626億円で11.9%の増加。倒産を原因別にみると、放漫経営が50件で、そのうち事業上の失敗が40件。過小資本32件、連鎖倒産29件、赤字累積85件、販売不振287件などとなっている。受注・販売不振、赤字累積、売掛金回収難を合わせた不況型が377件に達し、全体の75.5%を占めた。資本金階層別では1000万円以上5000万円未満の250件がもっとも多く、次いで100万円以上500万円未満が122件となっており、地場の中小企業の倒産が圧倒的に多い。
● 東京商工リサーチの調べによると、2000年3月末の連結ベース全国銀行133行の建設業、卸売・小売業、飲食店、不動産業への貸出残高は155兆円に達していることがわかった。このうち建設業向けは28兆2819億円で、旧さくら銀行の1兆6567億円がトップとなっている。133行の内訳は、都銀9行、長信銀1行、信託銀行6行、地銀64行、第2地銀53行。3業種への貸出残高は155兆5733億円で、前年同期比1.7% 減少した。総貸出残高に占める3業種の割合は33.6%。建設業向けの28兆2819億円は前年同期比3.0%のマイナスとなった。
● 国土交通省は、2002年度の重点施策を発表した。公共事業費が大幅に削減される中で、従来通りの事業量確保に向け▽民間投資の誘発▽徹底した規制改革▽新市場・新産業の育成・整備−などの施策を打ち出したのが特徴。具体的には、沿道開発を促進する都市計画道路などの重点整備や民間の資金および能力を活用するPFI方式などの導入、中古住宅市場の拡大、観光振興による地域経済の活性化、物流事業に関する参入規制の緩和などを進める。同時に事業の効率化も目指し、ダム容量の再編による治水効果の拡大など既存ストックの有効活用、事業のスピードアップやコスト縮減、他局・他府省との連携施策の強化、施設整備などのハード面とソフト施策の融合策などを展開する。
● 国土交通省は、2002年度予算概算要求を発表した。小泉内閣は公共事業費1兆円削減の方針を打ち出しているが、公共事業関係費は今年度同額の約7兆2510億円。総額では、今年度比微増の約7兆9181億円。公共事業関係費では、政府の「骨太方針」の重点7分野で、政策効果の高い事業に重点化するとして、5兆967億円を計上している。そのうち、「都市再生」分野がもっとも多い2兆4859億円をしめている。圏央道など首都圏3環状道路を、10年以内に9放射道路と接続することをめざすなど、3大都市圏の環状道路整備をすすめたり、採算の見通しのない関西国際空港など大都市圏拠点空港の整備をはじめ、「都市再生」の名のもとに、従来からの大型公共事業推進をもりこんだ。一方、ムダな公共事業にたいする批判が強まるなかで、大規模なダム事業や地方港湾、地方空港の新規着手をゼロにするなどしている。
● 国土交通省は、中古住宅を対象とした性能表示制度を来年度から開始する。住宅政策の基軸を「量の確保」から「質の確保」に転換するため、中古住宅市場の育成に向け、新築住宅と同様に中古住宅でも性能表示制度を立ち上げる。中古住宅を対象とした性能表示制度は、第8期住宅建設5ヵ年計画(2001〜05 年度)に基づく住宅市場整備行動計画(アクションプログラム)に盛り込まれている。同省は住宅の質的向上を目指し、中古住宅の現況を検査し必要に応じて耐震性能などを表示する制度の創設を検討。この制度を中古住宅市場に導入することで中古住宅取引の不安を解消するとともに、適正な維持管理のインセンティブとしたい考えだ。制度の創設に当たっては、国が関係団体や業界の協力を得て、住宅品確法(住宅の品質確保の促進に関する法律)を活用しながら制度の骨格を企画。これを受けて、性能表示・評価方法基準の策定や、評価員の養成方策、検査・評価終了後の報告書書式などを「中古住宅の検査および性能表示に関する検討委員会」(委員長・巽和夫京大名誉教授)が検討する。
● 政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)は、第3回会合を開き、第2次の都市再生プロジェクトを決めた。第2次都市再生プロジェクトは、@大都市圏の国際交流・物流機能の強化A大都市圏の環状道路体系の整備B大阪圏のライフサイエンス(生命科学)の国際拠点形成C都市部の保育所待機児童の解消DPFI手法の展開−の5分野。羽田空港の拡張については「国際化を視野に入れつつ」とし、4本目の滑走路整備を盛り込んだ。都心と成田空港、成田〜羽田の鉄道アクセスの早期整備も進める。国土交通省ら関係省庁は2002年度予算で関係経費を要求する予定だ。環状道路の整備では、首都圏3環状道路の整備を進め、「07年度までに暫定的な環状機能を確保する」と明記した。大阪圏についても新たな環状道路として「淀川左岸線延伸部」の早期形成を目標としている。このほか大阪圏では、関西文化学術研究都市、播磨科学公園都市、京都の医学研究集積など既存の研究・開発機能や、新たな研究拠点をネットワーク化する構想を示した。生命科学分野の基礎研究から産業化に至るまでの国際拠点形成をめざす考えだ。一方、民間都市開発を後押しするための緊急措置は、民間が計画・構想中の事業の中から政府が投資効果が大きな事業を選定し、支援する仕組み。支援策をしては、周辺の関連公共施設の重点整備や、都市計画・建築規制などの柔軟運用などを予定している。
● 総務省が発表した7月の完全失業率(季節調整値)は前月を0.1ポイント上回る5.0%に上昇し、現在の調査形式が始まった1953年以来初めて5%台に乗った。情報技術(IT)分野の不況を背景に製造業の就業者数が大幅に減少、希望退職などによる自発的失業者も増えた。厚生労働省が同日発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は0.60倍と前月より0.01ポイント悪化した。完全失業率を男女別にみると、男性が5.2%と過去最悪を更新した。女性は4.7%で男女ともに前月より0.1ポイントずつ上昇。完全失業者数は330万人(原数値)で前年同月より23万人増えた。季節調整値では338万人で過去最悪となった。就業者数は6452万人と4ヶ月連続で減った。業種別では製造業が1288万人。前年同月から58万人減り、前月(43万人)以上に急ピッチで従業員削減が進んだ。建設業は8ヶ月連続で前年同月を下回った。