情勢の特徴 - 2001年10月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観、年4回実施)によると、企業の景況感を示す業況判断DIは、製造業で大企業が前回から17ポイント悪化し、マイナス33。中小企業は同10ポイント悪化し、マイナス47となった。とりわけ、IT(情報技術)部門の落ち込みがひどく、電気機械は大企業で同25ポイント悪化のマイナス60と、第一次石油危機時の1975年5月以来となる悪い水準。非製造業も、大企業が同4ポイント悪化のマイナス17、中小企業が同6ポイント悪化のマイナス37と落ち込んだ。悪化はいずれも3期連続。先行きでは、大企業製造業が2ポイントの改善を見込んだものの、同非製造業と中小企業はいずれも、さらに悪化するとみている。
● 国土交通省の「建設産業再編促進検討委員会」(座長・金本良嗣東大大学院経済学研究科教授)は、大手建設会社を対象にした業界再編促進策の中間取りまとめを発表した。当面の措置として▽国が実施する一般競争入札工事(直轄工事では7億5000万円以上)の履行保証の付保割合を一律30%に引き上げる▽ 特定JVに履行保証制度を導入する――などを挙げるとともに、今後の検討課題として▽前払い保証の割合の引き上げと部分払いの導入▽入札時の履行ボンド予約の実施▽下請ボンドの導入―などを提示した。同省はこれを受け、履行保証の付保割合の引き上げや特定JVの履行保証制度の導入などを年度内にも実施する。

行政の動向

● 東京世田谷区内の小田急線高架化に反対する周辺住民約120人が、都の事業認可申請を国が認めたのは違法として、旧建設省(現国土交通省)関東地方整備局長を相手取り、認可処分の取り消しを求めた訴訟の判決が、東京地裁であった。「事業費について慎重な検討を欠いていた」などとして認可を違法と認定、取り消しを命じた。事業は「開かずの踏切」が多い同区内の小田急線の連続立体交差化と複々線化を目的とするもので、都は都市計画に基づいて高架式を選定し、1994年6月に国の認可を受けた。工事は翌年から始まり、現在も続いている。裁判長は「より慎重な検討をすれば、高架式と地下式のいずれが優れているのか結論が逆転するか、その差がかなり小さいものとなる可能性が十分にあった。高架式が圧倒的に有利という前提で検討を行った点で事業の判断内容に著しい誤りがある」と、住民側主張を全面的に認めた。

労働関係の動向

● 財務省は、2002年度の「医療制度改革」に向けて同省の見解をまとめた「改革の論点」を、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)に提示した。患者の窓口負担を、70歳以上の高齢者を含め年齢に関係なく一律に三割とすることや、保険で受けられる医療の範囲を縮小して患者負担を増やすことなどが主な内容。財務省案は、医療費全体の伸びを経済(保険料収入)の伸び程度に抑える仕組みを打ち出した。国民所得の伸び(過去10年間の平均で年1.6%)程度に抑えると、約3%の医療費削減が必要。目標を超えた分は翌年の診療報酬の単価引き下げで調整する。患者負担は、年齢にかかわらず外来1回、入院1日あたり500円を支払い(保険免責制)、その上でかかった医療費の3割負担を提案。現在70歳以上のお年寄りに限り「激変緩和」で1割負担とする。また、差額ベッドのように全額を患者が負担する「特定療養費制度」の拡充を提案。

資本の動向

● 鹿島は野村証券と組み、不動産の証券化で建物の完成前に土地の購入代金や建設費用を投資家から調達する「開発型証券化」事業に乗り出す。両社が出資する特定目的会社(SPC)が証券を発行する。鹿島と野村証券が手がけるのは東京・港区六本木の賃貸マンションと同渋谷区神宮前の分譲マンションの2物件。来年10月以降に完成を目指す高級マンションで、合計の総事業費は約100億円の見込み。このほど鹿島と野村証券の共同出資で両物件を開発するSPCを設立した。資本金は総事業費の10分の1程度で、同SPCが資本金や銀行からの借り入れを元に土地を購入した。SPCは物件建設期間中に投資家向けに家賃収入などを担保にした社債を発行する。野村証券はSPCが発行する社債の組成や販売を主に手がける。鹿島はマンション建設を受注し、施工する。

その他の動向