情勢の特徴 - 2001年10月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 帝国データバンクは、2001年度上半期(4〜9月期)の企業倒産集計を発表した。負債額1000万円以上の建設企業の倒産件数は上半期で過去最高となった前年同期と同数の3029件となった。前期(2000年10月〜2001年3月)と比べると、204件の増加となる。上半期の倒産企業の内訳は、大工、塗装、内装工事など職別工事が951件(負債総額1705億円)、土木、建築工事など総合工事が1429件(同4722億円)、電気、管工事など設備工事が586件(同1449億円)。主な倒産企業は、金庫室扉施工などの富士精工(東京都)、上下水道工事の日本水道(同)、舗装・土木工事の日新舗装建設(同)、建築工事の日新建設 (同)、一般土木建築工事の武藤建設(茨城県)など。富士精工は破産手続きをしたが、日本水道や日新舗装建設などは民事再生法の手続きを行った。
● 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は、構造改革の道筋を示す「改革工程表」のうち、補正予算に盛り込む施策を絞り込んだ「改革先行プログラム」(素案)をまとめた。急激な環境変化に見舞われている業種として、建設業と農林水産業を挙げ、中小企業全般のセーフティーネットの充実を図ることに加えて、構造改革を進めるための"上乗せ"の対策を明記。建設業については、独自の金融システムである「下請セーフティーネット債務保証事業」の拡充を盛り込んだ。雇用対策では、産業雇用安定センターが、失業の発生が見込まれる建設、流通、不動産などの業界と連携した出向・移籍支援事業を強化。また、建設業における労働移動の支援など、就職支援特別対策パッケージを実施する。中小対策では、金融面のセーフティーネットとして、売掛金債権担保保証制度の新設をはじめ、創業や経営革新を支援するため融資・保証制度の整備・充実、資金調達の円滑化などの措置を講じる。これらに上乗せする形で、建設業と農林水産業には、別途の措置を明記。下請セーフティーネット債務保証事業の充実に向けた措置が検討されている。
● 自民党はPFI(民間資金を活用した社会資本整備)制度の見直し案をまとめた。@官民の複合施設の建築を認めるA土地・建物など行政財産の民間PFI事業者への長期貸し付けを可能にするB国会、裁判所、会計検査院が管理する公共施設をPFIの対象に加える――のが柱。政府は大幅な歳出削減を迫られるなか、景気対策として都市再生事業などに民間の資金やノウハウを積極活用する方針を打ち出している。自民党は公明、保守両党と協議したうえでPFI法改正案を議員立法で今国会に提出、2002年度からの実施を目指す。
● 建設経済研究所と経済調査会は、2001〜02年度の建設投資見通しを発表した。02年度建設投資(名目)は国の公共事業費が本年度当初予算に比べ 10%削減されるため、前年度比8.3%減の59兆8660億円となる見通し。名目建設投資が60兆円を割り込むのは、1986年度(53兆5631億円)以来16年ぶりとなる。2001年度の建設投資(名目)見込み額は、65兆2659億円。名目建設投資が60兆円台となるのは88年度(66兆6555億円)以来14年ぶり。内訳は政府建設投資28兆9150億円(前年度比7.3%減)、民間住宅投資19兆2041億円(同5.8%減)、民間非住宅建設投資17兆1468億円 (同8.7%減)。
● 日銀が発表した「経済・物価の将来展望」によると、2002年度の実質国内総生産(GDP)伸び率の見通しはマイナス1.1−プラス0.1%となった。今年度に続き2年連続でマイナス成長になる可能性が大きいとみている。物価も来年度にかけて引き続き下落するとみており、デフレ経済が長期化するとの判断を示した。物価下落と景気後退の悪循環(デフレスパイラル)に陥る恐れもある。

行政の動向

● 石原伸晃行政改革担当相の私的諮問機関である行革断行評議会は、都市基盤整備公団の全事業を廃止・解体する改革案をまとめた。賃貸用不動産は建設中のものを民間のデベロッパーなどに売却、賃貸中のものは特定目的会社を設置し、証券化したうえで売却。分譲用不動産も民間市場に売却して資金化する。廃止・解体により発生する損切り分約1兆9000億円は、毎年投入されている約2000億円の国費を財源に10年以内で返済するとした。廃止・解体の理由としては @住宅供給はすでに過多で公団事業は民業を圧迫しているA仮に公団を廃止せず存続させた場合はトータルの国民負担が膨大になる――などを挙げた。
● 国土交通省は、元請業者が公共工事の未完成工事代金債権を担保に債務保証を得て資金調達する「下請セーフティーネット債務保証事業」制度を、下請企業自らも資金調達できるように拡充する。下請けが元請けに対して有する債権を、事業共同組合などに譲渡し、それを担保に通常よりも低い金利で転貸融資を受けられるようにする。また、現行で最大2000億円となっている融資枠も拡大。建設業振興基金内に積み立てている50億円の基金を補正予算によって積み増すことで、同制度の一層の普及を図る方針だ。

労働関係の動向

● 厚生労働省がこのほど発表した調査によると、労働者の年次有給休暇取得率は、今年1月1日現在で49.5%になり、50%を割ったことが分かった。これは、比較可能な調査が始まった1980年以降の過去最悪。厚労省が発表したのは「2001年就労条件総合調査結果速報」。それによると、2000年の1年間に企業が労働者に「付与」した年次有給休暇日数(繰越日数は除く)は労働者1人平均18.0日で、前年(17.8日)より若干の増加。しかし、そのうち労働者が実際に取得した日数は8.9日で、前年(9.0日)より0.1日低下した。
● 公的部門で雇用の受け皿をつくるため、政府が2001年度補正予算で3500億円を計上する新たな雇用特別交付金の内容が明らかになった。2005年3 月末までに、公立学校の補助教員など50万人を上回る雇用創出を目指す。交付金の対象とする都道府県の事業は@事業費の8割以上を人件費に当てるA雇われてる人の4分の3以上は失業者とする――を満たすことを条件とする。各都道府県にも事業費を上乗せするよう要請する。「新・緊急地域雇用特別交付金」が対象とするのは、主に失業者に、公立学校の補助教員や違法駐車を取り締まる警察の支援要員、森林作業員などに臨時就業してもらう事業。補正予算に盛り込む雇用対策(国費5500億円)の目玉となる。来年3月末で現行の雇用特別交付金(2000億円)が期限切れになった後でも、地方自治体が公共サービス部門で雇用の場を提供できるようにする。都道府県は事業計画をつくって国に申請し、人口や求職者数などに応じた金額を国から交付を受ける。臨時で雇う機関は原則6ヶ月未満とするが、補助教員や児童・幼児の面倒をみる「保育ヘルパー」などの人的サービスは1年程度の就業も認める。
● 早出や残業、休日出勤などの所定外労働時間の削減に向け、厚生労働省は、所定外労働削減要綱を1991年10月から10年ぶりに改定することを発表した。当面の具体的な目標として@所定外労働は削減する。各企業は重点削減対象を設定するAサービス残業(ただ働き)はなくすB休日労働は極力行わない。休日労働をさせた場合でも1週間に1日は休めるようにするとともに、休日労働の現状を踏まえ、労使双方が十分話し合い、回数制限などの取り組みを行う――としている。改定要綱は、2005年度までに年間総実労働時間1800時間を達成・定着するためとして、年休取得の促進と合わせて所定外労働時間の削減を重点にしている。
● 総務省が発表した9月の完全失業率(季節調整値)は5.3%と、今の調査形式が始まった1953年以降の最悪水準となった。前月比では0.3ポイントと34年ぶりの大幅な上昇。世界的な情報技術(IT)不況で製造業の就業者数が急減する中で、倒産・解雇による非自発的失業者が増えた。完全失業者数は過去最大の357万人。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率も9月は0.57倍と3ヶ月連続で低下、雇用情勢の一段の悪化が鮮明になった。サラリーマンを中心とする雇用労働者(季節調整前)は前年同月比53万人減の5344万人と1年5ヶ月ぶりに減少に転じた。廃業が相次いでいる自営業者も加えた就業者数は84万人減の6396万人。完全失業者数は前年同月より37万人の増加。理由別にみると、企業の倒産・解雇などによる非自発的失業者が109万人と増勢が加速している。総務省が発表した、8月の労働力特別調査によると、失業期間が1年以上に及ぶ完全失業者が92万人(前年同月比12万人増)となり、調査開始以来の過去最高を更新した。完全失業者全体に占める比率も27.4%と前回(今年2月)より1.3ポイント上昇した。8月の完全失業者数は336万人。このうち失業期間が3ヶ月未満の失業者は110万人、3ヶ月以上6ヶ月未満が70万人、6ヶ月以上1年未満が53万人と、いずれも1年前より増えた。ただ3ヶ月未満の割合は低下し続けており、失業期間が長引く傾向が鮮明になっている。

資本の動向

● 大成建設は、今後3年間で新たに600億円の不動産投資を見込んでいることを明らかにした。グループ体質の強化策の一環として修正した新経営計画の数値目標の一つ、連結有利子負債「5900億円以下」の達成に向け、優良物件に積極的に投資しながら有利子負債を削減するというもので、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)や証券化、SPC(特定目的会社)、J−REIT(不動産投資信託)なども想定している。

その他の動向