情勢の特徴 - 2001年11月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 総務省は、2000年実施の国勢調査による総人口の確定数は1億2692万5843人と発表した。前回調査の1995年に比べ1.1%増で、95年から5年間の人口増加率は、戦後最低となった。日本の人口は、世界の人口60億6000万人の2.1%を占め、中国、インド、米国などに次いで9番目。人口密度は、1平方キロ当たり340人でバングラデシュ(1平方キロ当たり954人)、韓国(同472人)、オランダ(同388人)に次いで4番目となっている。人口増加率は滋賀県が4.3%で最も高く、続いて沖縄県(3.5%)、神奈川県(3.0%)、兵庫県(2.8%)、埼玉県(2.6%)。逆に最も減少したのは秋田県で2.0%減。
● 小泉内閣は閣議で、一般会計の追加歳出2兆9955億円の2001年度補正予算案を決定した。これは、経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)が決めた、「構造改革」の優先事項を定めた「改革先行プログラム」を財政的に具体化したもの。その内容は@横行する大企業のリストラ計画には歯止めをかけないで解雇規制をさらに緩和する(同「プログラム」)一方、わずかな公共部門での臨時雇用を実施する(一般会計で3500億円)A深刻な不況で経営難に陥った中小企業を無理やりつぶす「不良債権の最終処理」を整理回収機構(RCC)を使って推進する(財政投融資計画で500億円)――などが柱。この結果、当初予算を合わせた今年度の一般会計の歳出予算は83兆7133億円となった。歳入では、税収が当初見積もりより1兆1020億円減少。これを税外収入220億円、2000年度決算の剰余金4589億円で埋めた上、なお不足する1兆6820億円を国債の新発行で賄うとしている。
● 国土交通省は、中小建設業の資金調達を円滑化させる「下請セーフティーネット債務保証事業」の債務保証総枠を、現行の最大2000億円から最大 4000億円まで拡大する。建設業振興基金に造成している50億円のファンド(建設業安定化基金)を、閣議決定した本年度補正予算案に計上している国費 25億円と振興基金の自主財源を活用して拡充、100億円とする。下請セーフティーネット債務保証事業は、公共工事の元請企業が、未完成工事代金債権を事業協同組合などに譲渡し、それを担保に転貸融資を受ける仕組み。事業協同組合などは、金融機関から転貸資金を調達する際に振興基金による債務保証を受けることなどで、通常より低い金利で融資を行うことが可能となる。
● 三井住友銀行、UFJ、みずほ、三菱東京の4大銀行グループは2001年度中に、過去最大規模となる合計7兆〜8兆円程度の貸出資産をバランスシート(貸借対照表)から切り離す。優良債権を証券化し、売却する手法が中心になる。不良債権処理などに伴う自己資本比率(資産に対する自己資本の比率)の低下を防ぐのが狙い。各グループの貸出資産切り離しはそれぞれ2兆円前後になる見通し。4グループの貸出金は総額約260兆円で、2〜3%相当を切り離す計算になる。国債決済銀行(BIS)基準は国債業務を営む銀行は8%以上の自己資本比率を維持しなければならないとしているが、大手行の多くは健全な経営状態の目安として10%維持する方針。下期の大幅な不良債権処理の積み増しなどに備え、思い切った資産圧縮が避けられないと判断した。
● 日銀が発表した10月の貸出・資金吸収動向(速報)によると、銀行貸出平均残高は前年同月と比べ4.1%減の439兆6700億円となった。マイナス幅は前月より0.1ポイント縮小しましたが、前年実績割れは1998年1月以来46ヶ月連続となった。このうち、大手銀行(都市銀行、長期信用銀行、信託銀行)は前年同月比5.2%となり、マイナス幅を前月より0.1ポイント拡大させた。なかでも、銀行貸出平均残高の45%を占める都市銀行は同4.7%減(前月同4.4%減)となり、4ヶ月連続でマイナス幅を拡大させた。
● 日銀が発表した預金者別預金調査によると、国内銀行の9月末の総預金残高は477兆8400億円で前年同月末比0.9%増とほぼ横ばい。この中で普通預金を中心とした決済性預金が大きく増加した半面、1000万円以上の定期預金は個人、公金、一般企業とも残高が減った。来年4月のペイオフ凍結解除以降、定期預金の1000万円を超える部分は保証の対象とならず、預け入れ金融機関が破たんした場合に一部カットされる可能性がある。全額保護の措置が2003年3月まで続く決済性預金への預け替えの動きはその対策の一環。個人預金は定期預金が預入金額1億円以上の層で10%を超える減少となった一方、決済性預金は1000万円以上10億円未満の層で20〜30%増えた。郵便貯金に流れた預金もある。定期預金でも全額保護される1000万円以下の預金は堅調で、ペイオフへの意識の高まりを映している。
● 竹中平蔵経済財政担当相は、11月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。報告は景気の現状について「一段と悪化している」との見方を示し、基調判断を3ヶ月ぶりに下方修正した。個人消費が悪化したうえ、失業率も上昇したため。先行きについても米同時テロなどの影響を踏まえ、世界経済の同時減速への懸念を示した。個人消費は「弱含んでいる」との認識を示し、2000年5月から示してきた「おおむね横ばい」との判断を変更した。前月まで「依然として厳しい」としていた雇用情勢については「厳しさを増している」と指摘した。

行政の動向

労働関係の動向

● 厚生労働省は倒産企業に勤めていたサラリーマンの未払い賃金を国が立て替え払いする制度を拡充する。45歳以上の中高年が受け取ることのできる限度額を約300万円弱と、現在(136万円)の2倍を超える水準に引き上げる。2001年度補正予算に盛り込み、来年1月にも実施する。30歳以上45歳未満の人の立て替え払い限度額は現行の104万円が180万円弱、30歳未満の人は現行の56万円が90万円弱になる。未払い賃金の立て替え払い制度は、勤務先が倒産した人を対象に倒産の半年前までさかのぼり、未払いの定期給与と退職金の合計の8割を国が立て替えて支払う仕組み。

資本の動向

その他の動向