情勢の特徴 - 2001年11月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 大手銀行14行の2002年3月期の不良債権の処理損失が5兆〜6兆円に達し、今年度当初計画の3倍程度に膨らむ見通しとなった。貸出先企業の経営悪化に対応して貸倒引当金を大幅に積み増すためだ。今月から始まった金融庁の特別検査を踏まえ処理の積み増しを迫られる可能性が大きい。株安の影響も重なり、UFJグループなど通期で最終赤字に転落する銀行が相次ぐ見込みだ。資産規模が最大のみずほフィナンシャルグループは期初計画比4倍弱の2兆円近い不良債権を一括処理する。UFJ、三井住友銀行、あさひ銀行、大和銀行、中央三井信託銀行なども当初比1.5〜5倍の処理を実施。前期に査定の厳格化で先行した三菱東京フィナンシャル・グループは当初計画比微増の5000億円規模にとどまるが、全14行の処理損は前年度実績(4.7兆円)を上回り、期初計画1兆8700億円の3倍程度に膨らむ。金融庁の特別検査では資産査定の厳格化を迫られる見通しで、各行とも処理損がさらに膨らむ可能性が高い。
● 3兆円規模の2001年度補正予算が参院本会議で可決・成立した。改革先行プログラム関係やテロ対策、災害対策などをあわせ国費3675億円を計上した国土交通省関係では、災害対策などを除く一般公共事業として、▽ダイオキシン規制強化対応のための海洋性廃棄物処理施設の緊急改良▽都市再生・まちづくり、公的施設整備に資する民間資本主導の社会資本整備(PFI)の推進のための事業▽ハイジャック・テロ防止対策−に配分する。また、公共事業の平準化を図る総額4731億円の国庫債務負担行為(ゼロ国債)は、積雪寒冷地域などの状況に配慮した配分を行う。
● 政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)が都市再生事業として公的な支援措置の実施を検討している民間都市開発プロジェクト数が206件に達している。検討対象のうち3大都市圏で計画されているプロジェクトは東京圏132、大阪圏32、名古屋圏13となっている。検討対象プロジェクトは「1ヘクタール以上の事業規模で3年以内に着手予定」「都市構造再編の促進効果が高く、土地流動化につながる」などを基本要件としている。同本部は8月末に開いた会合で、「民間都市開発投資促進のための緊急措置」を決定した。緊急措置には、民間事業の都市開発投資の前倒しと拡大を目標に都市計画・建築規制の緩和と、道路や下水道など関連公共施設の重点実施が盛り込まれており、これらの措置を講じることでプロジェクトの早期立ち上げを支援するとしている。
● 大手13行の2001年9月末の不良債権残高は3月末と比べ2兆4600億円強増え20兆1460億円となった。貸出先企業の経営不振などを反映、全行で不良債権が増加している。不良債権を銀行の資産から切り離す最終処理を2兆4300億円実施したが、それを上回る規模の不良債権が新たに発生。残高が増える構造は変わっていない。経営の健全化を示す自己資本比率も低下が続いている。大手13行の2001年3月末の不良債権残高は17兆6803億円。半年で13.9%増加、1年前に比べると19.7%増えた。同残高は破たん懸念先以下の債権に、貸し出し条件を緩和した要管理債権を加えた額。みずほフィナンシャルグループで3月末比1兆3800億円強増加するなど、4大銀行グループの増加額(2兆2100億円)が全体の増加額の9割を占めている。政府の方針では、破たん懸念がある貸出先向けや破たん状態にある貸出先向けの債権を2〜3年以内に銀行の資産から切り離す最終処理をすることになっている。不良債権の残高を減らし銀行経営を正常化させるのが狙いだ。しかし、半年間で破たん懸念先以下の不良債権が2兆8000億円発生、要管理債権も増加した。2兆4000億円の最終処理を実施しても不良債権残高が大幅に増加した。

行政の動向

● 特殊法人等改革推進本部(本部長・小泉純一郎首相)が開かれ、日本道路公団や住宅金融公庫、都市基盤整備公団など7特殊法人の「廃止・民営化」の基本方針を決めた。同方針では、日本道路公団「改革」の焦点になっている新規高速道路の建設(約2400キロメートル)について、公団の借金償還(返済)期間を「30年」から「50年」上限にすることで、そのまま建設を継続できる道を開いた。加えて方針では、民営化される公団の計画からはずれた「その他の路線の建設」についても、一般予算をつぎ込むとして、採算のとれない道路建設の推進を新たに打ちだしている。また本四連絡橋公団の累積債務の穴埋めに、国の道路財源など税金投入をおこなうことを明記した。石油公団は「廃止」とされ名前はなくなるものの石油開発会社への資金投入は「類似法人に統合」され、継続される。一方で、国民生活に身近な住宅金融公庫は、「5年以内に廃止」し、庶民が利用している融資業務は「段階的に縮小」する。都市基盤整備公団は、公団賃貸住宅の新規建設をやめ、賃貸住宅の管理も「可能な限り民間委託の範囲を拡大」するとし、賃貸事業からの撤退を明確にしている。

労働関係の動向

● 厚生労働省は、長時間労働などが引き起こす過労死の労災認定基準を大幅に緩和することを決めた。勤務状態との因果関係を判断する期間を原則「発症前1週間」から「発症前6ヶ月」に拡大、疲労の蓄積の要因となる残業時間の目安を「発症前1ヶ月間に100時間以上、あるいは月平均80時間以上」と明示する。厚労省は年内にも全国の労働基準監督署に基準の変更の通達を出す。今回の見直しで、「発症前6ヶ月間の就労状態を具体的かつ客観的に考察するのが妥当」と結論づけた。      具体的には、疲労の蓄積で最も重要な要因として労働時間に着目。発症前1ヶ月間に100時間以上の残業をした場合のほか、発症前2ヶ月間、3ヶ月間、 4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間の各期間のいずれかで1ヶ月当たり平均80時間以上の残業が認められれば、「業務と発症の関連性は強い」と判断される。労働時間以外では、@不規則な勤務A拘束時間の長い勤務B出張の多い業務C交代制勤務、深夜勤務D作業環境(温度環境、騒音、時差)E精神的緊張を伴う業務――を判断材料に加えるよう求めている。
● 勤労者退職金共済機構(石原慎太郎理事長)の建設業退職金共済事業本部は、退職金支払の原資となる資産運用の投資先見直しに直結する規制緩和と、退職金支払のための運用目安である予定利回り4.5%を引下げる方向を固めた。資産運用先の見直しによって、現在の運用利回り2.46%が2.54%に上昇する。建退共は検討結果を踏まえ、具体的な資産運用見直しと規制緩和要望として、@資産の3割以内である金銭信託の拡充A義務化された財政融資資金預託金の弾力運用B保有債券の売却可能化C運用対象の拡充――の4点をあげた。とくに、国債や商工債など保有債券は従来、持ちきりが前提となっており、金利が上昇すれば含み損が発生していた。そのため、含み損解消へ満期前の売却ができるように求める。一方,運用拡充では、不動産ファンド(日本版不動産投資信託)や外貨建て債券,さらには外貨建て債権購入のリスク抑制へデリバティブ取引も視野に置く。保有債券の売却、運用拡充は、建退共内部で資産運用を行うインハウス取引となり、運用担当者の増強(現在は1人)が必須条件となる。
● 総務省が発表した10月の完全失業率(季節調整値)は5.4%と前月より0.1ポイント上昇し、2ヶ月連続で過去最悪の記録を更新した。特に男性の完全失業率は運輸・通信業や製造業、建設業などのリストラ加速を受け、前月より0.4ポイント上昇し、過去最悪の5.8%。完全失業者数は352万人と、前年同月比で7ヶ月連続の増加。このうち企業の倒産・解雇などによる非自発的失業者は114万人となり、45〜54歳の男性を中心に増えた。世帯主の完全失業者数は前年同月と比べ16万人増え、金融危機に直面した1998年の年平均と同程度の増加幅となった。世帯主の完全失業率は3.7%と過去最悪を更新した。就業者数は前年同月を103万人下回る6405万人と7ヶ月連続で減った。

資本の動向

その他の動向