情勢の特徴 - 2001年12月前半
● 国土交通省が発表した10月の新設住宅着工戸数は前年同月比3.3%減の10万1746戸となり、2ヶ月連続で前年実績を下回った。年率換算値(季節調整済み)は114万6000戸。持ち家は前年同月比15.6%減の3万15120戸。銀行融資など民間資金による着工が同9.6%と伸びたのに対し、住宅金融公庫融資による着工は同 47.5%減と落ち込んだ。分譲住宅は前年同月比3.3%減の2万7895戸。マンションが同3.7%減の1万7604戸となったのが主因。
● 東京商工リサーチがまとめた10月の建設業倒産状況によると、件数は594件で前年同月比8.0%増、過去2番目の高水準で、10月としては過去最悪の件数となった。負債額は総額で1409億9600万円、12.8%の増加を示した。依然として「不況型」が全体の75%以上を占めており、厳しい経営環境が続いている。件数は、前月比11.6%、前年同月比では8.0%の増加となり、歴代件数で過去2番目、10月同月比較としては過去最悪を更新した。倒産原因別では、受注・販売不振が329件、赤字累積109件、売掛金回収難12件の3原因を合わせた「不況型」が450件(構成比75.7%)を占めた。
● 内閣府が発表した7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%減、年率換算では2.2%減少し、2・ 4半期連続でマイナス成長となった。最大の需要項目である個人消費が大きく落ち込み、世界経済の同時減速で輸出も減少した。名目GDPも2・4半期連続で減少し、マイナス幅は年率3.1%に達した。デフレが進行するなかでの景気後退が一段と鮮明になった。現行のGDP統計で実質成長率が2・4半期連続でマイナスとなるのは金融システム不安が高まった98年4〜6月期以来、ほぼ3年ぶり。7〜9月期に落ち込みが目立ったのはGDPの5割以上を占める個人消費で、2・4半期連続のマイナスとなった。前期比の減少幅は1.7%となり、99年 10〜12月以来の大きさだった。完全失業率が過去最悪の水準になるなど、雇用・所得環境が急速に悪化。消費者心理の冷え込みが個人消費に影を落としている。
● 日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の大都市新生プロジェクト研究会は、首都圏の幹線ネットワークを強化するためのプロジェクト案として▽首都高速道路の再構築▽環状都市計画道路と環状地下鉄(エイトライナーほか)との一体的整備――など6案を選定したと発表した。来年度には国土交通省に対し、21世紀の都市創造に向けたリーディングプロジェクトとして提案する考えだ。今回選定したのは、▽高速道路新線(3環状道路、弾丸道路、クロスハイウェイなど)▽高速道路+環状地下鉄(環7、環8の環境再生、エイトライナー・メトロセブンなど)▽物流専門ライン(首都圏物流ライン、港湾〜インランド・デポ直結など)▽鉄道新線(業務各都市連絡線、都心〜空港連絡線など)▽首都高速道路の再構築(更新時期を見据えた代替路線の整備)――の6案。
● 東日本建設業保証の前払金保証事故、契約保証事故、保証実績企業の倒産が過去最悪のペースで進んでいる。公共工事で実績がある企業の倒産増加傾向は昨年から顕著になってはいたものの、工事を受注しても施工途中で倒産する深刻な状況を迎えつつあるといえる。前払金保証事故は、11月累計で件数が123件(前年同期は94件)、弁済金額(予定含む)は14億8111万円(同9億5966万円)となった。履行保証制度で保証会社が金銭的保証をする契約保証の事故も累計で191件(同90件)、弁済金額(予定含む)も9億5019万円(同3億9047万円)と件数で倍増、金額で3倍近くまで損害額が広がった。
● 政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)は、民間主導の都市再開発を促すための規制改革を盛り込んだ第3次都市再生プロジェクトを決めた。規制改革では@工場や大学の立地を厳しく制限する工場(業)等制限法の廃止を明記A一定の要件を満たす民間事業者に強制力を持った再開発の施行権限を付与B都市計画の手続きの迅速化――などを打ち出した。来年1月召集の通常国会に関連法案の提出を目指す。
● 政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は、小泉純一郎首相に提出した第一次答申で、労働や医療、教育、保育などの生活分野や、金融から農業までの経済分野で民間企業の競争の障害物となる規制をすべて撤廃し、競争の促進を求める「改革」を強く打ち出した。 このなかで人材の流動策として労働者を解雇するルールの立法化を打ち出した。あらかじめ法律で解雇条件を明示することによって労働者の解雇を円滑におこなおうという意図を含んだもので、労働基準法改定が必要となる。答申は「速やかに検討」するよう求めている。
● 10月の完全失業率(季節調整値)が5.4%にまで上昇し、2ヶ月連続で最悪の水準を更新した。景気悪化を背景に解雇などの「リストラ離職」が急増。これまで雇用の受け皿となってきた中小・零細企業にも人員削減の動きが波及している。厚生労働省によると、10月新規求職者のうち事業主の都合による離職が前年同月より46.5%増えた。前月(19.3%)を大きく上回る。企業の倒産や解雇による典型的な「不況型失業」が急速に増えている。労働力調査でも非自発的失業者が前年同月比で16万人増えた。
● 日刊建設通信新聞社がまとめた、ゼネコン上位30社の9月中間決算は、受注高を伸ばしたのは大手を中心に9社に過ぎず、半数近い13社が2桁の減少となった。受注減にもかかわらず、都市開発、マンション建築が好調だった企業を中心に増収基調だが、逆に繰越工事を減らす結果にもなっている。また、大規模再開発以外では唯一建設市場で好調なマンション建築も、価格競争が厳しく「マンション事業全体の採算をならせば赤字」(準大手社長)で、民間を中心とする建築工事の完成工事総利益率は低迷している。営業損益は11社が損失だったほか、21社が減益だった。さらに、経常損益では16社、中間損益では22社が損失を計上した。
● 青木建設は、自主再建を断念し東京地裁に民事再生法を申請し、受理された。負債総額は3721億円(ほかに保証債務等93億5000万円、転譲手形 26億5600万円、連結ベースでは5000億円を超す見通し)にのぼり、上場ゼネコンでは冨士工に次いでの同法申請となった。青木建設は99年3月にあさひ銀行、日本興業銀行などから2049億円の債権放棄を受け、自主再建をめざしていたが、比較的実績をあげていた公共工事が削減され、価格競争も激化したことが苦境に拍車をかけた。2001年9月中間連結では、青木マリーンなどが好調で4億7200万円の利益をあげていたが、同月末の連結有利子負債は4.094億円。連結負債超過は3月期末の651億円から586億円に減っていた。今回の経営破たんは、金融庁の大手銀行への特別検査の余波を受けたもので、さらに不良債権処理が加速するという見方が強い。
● 日本道路公団が発注する東名高速道路などの維持修繕業務をめぐって道路舗装会社などが談合を繰り返していた疑いが強まり、公正取引委員会は、日本舗道や前田道路など大手道路舗装会社を含む約30社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査した。道路公団のファミリー企業では日本メンテナンスサービス(東京・千代田区)、、東北ハイメン(仙台市)、日本メンテックス(静岡市)など少なくとも6社が立ち入り検査を受けている。