情勢の特徴 - 2002年1月前半
● 整理回収機構は担保不動産などの証券化に本格的に取り組む。秋までに計1200億円強を証券化する計画。これまで不動産の売却を中心に不良債権を回収してきたが、手法を多様化して回収額を増やす。同機構は経営破たんした旧日本長期信用銀行(新生銀行)の旧本店ビル(東京・千代田区)を証券化し約400億円を回収した。これまでは主に競売などで担保不動産を処分してきたが、証券化で小口にすることで、より多くの回収が見込めると判断した。1月施行の改正金融再生法で、同機構は極端に低かった不良債権の買い取り価格を回収見こみ額からから算出した「時価」に引き上げることができるようになる。
● 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は、現行の公共投資基本計画を廃止する方針を決めた。同計画は1995‐2007年度の長期計画で、総額630兆円を投入して社会資本整備を進める計画。同会議が検討中の「構造改革と経済財政の中期展望」の策定にあわせ、同計画を廃止する見通しだ。現行の公共投資基本計画は、日米構造協議でアメリカの要請を受ける形で策定した。当初は04年度までの10ヵ年計画だったが、97年、橋本内閣の「財政構造改革」で計画期間を3年間延長し,07年度までの計画となった。同計画が廃止されると、中長期的な公共投資の規模や財源に関する裏付けがなくなることになる。全国総合開発計画は抜本的に見直すとともに、公共事業関係の各種5ヵ年計画などについても、計画の必要性そのものを見直す方針だ。
● 日銀が11日発表した2001年12月の貸出・資金吸収動向(速報)によると、銀行貸出平均残高は前年同月比4.3%減の440兆6300億円となりました。この結果、01年の銀行貸出平均残高は447兆500億円と前年比3.9%減少し、5年連続マイナスとなりました。銀行は資産圧縮を進めており、月別の銀行貸出残高が最も高かった1996年3月(536兆6千億円)から10兆円近く減ったことになります。ただ、企業が短期の資金調達のために発行しているコマーシャルペーパー(CP)の発行額は前年同月比18.2%増の21兆9200億円と、前月に続いて過去最高を記録。資金需要のおう盛な一部企業は、市場からの直接調達を強めています。
● 厚生労働省は全国42万の中小企業が加入する退職金共済について、約束した運用利回り(予定利率)を現行の年3.0%から年1.5%に引き下げる。株式相場の低迷などで運用実績が予定利率に届かず、累積損失が増えているため。10年加入のモデル例で退職金支給額は5%以上減額される見込みだ。 予定利率を機動的に変更できるようにする法改正案を通常国会に提出、2002年度中の施行を目指す。2000年度の運用利回り実績は年2.33%となり、207億円の損失が出た。将来の退職金支給のための積み立て不足(累積損失)は2029億円に膨らんでいる。予定利率の引き下げによって生じる毎年の利益の2分の1は累積損失の解消に当てる。
● 東証一部上場の大手住宅会社、殖産住宅相互は13日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したと正式発表した。負債総額は135億円。ミサワホームなどの協力を得て、新築住宅事業から撤退、リフォーム・保守管理事業に特化し、再建を目指す。殖産の従業員743人(うち正社員534人)のうち、約100人は保守管理・リフォーム事業で雇用する見通し。殖産が建設中の住宅は責任を持って完成させる。ミサワホームは殖産が建設中の住宅の完成を保障するとともに,殖産が実施する減増資に応じて出資すると見られる。一方、ペイントハウスからは新築住宅事業の受け皿になるほか、リフォーム事業での協力、殖産の社員の一部引き受けなどの申し入れがあったという。
● 鹿島や大成建設など大手ゼネコン(総合建設会社)各社が相次ぎ、2002年度三月期に賃貸用不動産や自社ビルなどの固定資産に生じた多額の含み損を処理する。固定資産の価値が下がったときに損失処理を義務付ける「減損会計」が早ければ2004年三月期から導入されるため、各社は前倒しで対応し、導入時の収益への影響を押さえる。大成建設、清水建設、大林組は固定資産の評価損や売却損を特別損失に計上、処理を進める。大成建設は423億円を特別損失で処理する。大林組は国内外の賃貸用不動産などの収益を勘案し、土地と建物でそれぞれ400億円ずつ評価減する。清水建設も100億円程度を特損計上する。各社とも今期の業績予想に織り込んでいる。
● 住宅最大手の積水ハウスは首都圏でマンション分譲事業を強化する。東京・恵比寿で今春、高層マンションを発売するのを皮切りに都心部での分譲を拡大。これまで約五割だった首都圏の販売比率を約八割に引き上げる計画だ。マンション市況は全国的には陰りが出始めたが、首都圏は引き続き底堅いと判断した。