情勢の特徴 - 2002年1月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 国土交通省は民間金融機関が持つ住宅ローン債権を住宅金融公庫が買い取って証券化する業務を2003年度に開始する方針だ。5年以内に廃止される住宅公庫の業務を直接融資から段階的に住宅ローン債権の証券化支援に転換する。民間金融機関が長期固定型など住宅ローン業務を拡充できる環境を整え、公庫廃止後も住宅購入者がローンを利用しやすくする狙いだ。証券化支援業務は住宅公庫廃止に伴い設立される独立行政法人が引き継ぐ事が決まっており、国交省は廃止期限の2006年の通常国会に公庫廃止法案と独立行政法人設置法案を提出する見込みだ。
● 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は、2002年度から5年間の構造改革の道筋を示す中期経済財政展望を決定した。不良債権処理など構造改革を推進することで、2004年度以降は実質で1.5〜1.6%の経済成長を目指す。最終年度である2006年度に向けて国の公共投資を年間8兆円台に削減するなど歳出構造の合理化も進め、基礎的な財政収支であるプライマリーバランスの赤字額の国内総生産(GDP)比を2.2%と現状(4.3%)の半分程度に抑える。
● 東京商工リサーチがまとめた2001年の建設業倒産は6154件で負債総額は2兆0591億6700万円となった。件数は前年比0.9%減とはいえ、 2年連続で6000件の大台を突破し、過去3番目の悪い水準を記録した。受注・販売不振、赤字累積、売掛金回収難を合わせた不況型が全体の73.7%を占めており、建設業界を取り巻く経営環境の厳しさを改めて浮き彫りにした。信用保証協会の特別保証終了で、中小企業を中心に資金繰りは一層厳しさを増すとみられる。負債総額は41.9%という大幅な増加を示した。平均負債金額は3億3400万円。資本金別では1000万円以上5000万円未満は3103件で過半数を占めた。次いで100万円以上500万円未満が1476件と圧倒的に中小・零細企業の倒産が多い。1億円以上は34件と1%に満たない。
● 小泉内閣は閣議で、2002年度の政府経済見通しを正式決定した。その中で、同年度の国内総生産(GDP)は、前年度と比べ実質0%(名目0.9%減)の496兆2000億円(名目)としている。また、完全失業率は5.6%とし、2001年度実績見通し(5.2%)をさらに0.4ポイント上回る見通し。完全失業率の増大を年初の経済見通しで盛り込むのは最近では見られない異例のもの。2002年度のGDPの内訳項目の伸び率では、民間最終消費支出(個人消費)が実質0.2%増(名目0.9%減)、民間企業設備投資が実質3.5%減(名目4.8%減)としている。国と地方を合わせた公共投資(公的固定資本形成)は実質1.3%減(名目2.7%減)。

行政の動向

● 国土交通省が第154通常国会に提出する13法案の概要が明らかになった。提出する13法案のうち、建設業に関連する法案は「都市再開発法等の一部改正法案」「都市再生特別措置法案(仮称)」「国土交通省設置法の一部改正法案」「平成14年度における特殊法人の主たる事務所の移転のための関係法律の整備に関する法律案(仮称)」「マンションの建て替えの円滑化等に関する法律案(仮称)」「全国新幹線鉄道整備法の一部改正法案」「建築基準法等の一部改正法案」「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部改正法案(ハートビル法)」「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法の一部改正案」「首都圏整備法および近畿圏整備法の一部改正法案(仮称)」の10法案。このうち、マンションの建て替え円滑化等法律案は、老朽化した分譲マンションを建て替える際の権利変換手続きなどを明確にする。一方、都市再生特別措置法案は、容積率などの規制を撤廃する「都市再生特別地区」制度や市街地再開発事業で民間事業者が主体となれる制度などが明記されるとともに、政府の都市再生本部による都市再生の推進に関する基本方針などの策定が盛り込まれる。建築基準法は、シックハウス症候群対策のため規制導入や建築物の形態規制の合理化、地区計画などの見直し、土地所有者などによる都市計画の提案制度の創設などができるように、法律を一部改正する。
● 国土交通省は、公共事業評価の基本的考え方(案)をまとめた。新たな評価項目は、経済効率性や事業採算性といった従来の項目に加え、環境や景観への影響、産業振興、快適性、安全性といった事業の効果・影響に関する項目を新たに設置した。このほか、関係者間の調整,法手続きの状況、他事業との関連などの事業実施環境も評価項目に加えている。こうした基本的な考え方にもとづいて、各発注者に事前評価、再評価、事後評価を実施してもらう考え。再評価については、事業中止による社会的損失にも留意するよう求めている。また、公共事業は、単に金銭的な効果だけではなく、間接的な経済効果も与えるケースがある。効果を定量的に把握しにくい項目については、「CVM(仮想的市場評価手法)」や、地価上昇率を社会資本の整備効果指標とする「ヘドニックアプローチ」などの導入を検討する。
● 国土交通省は、都市再生を促進するために、容積率の緩和や手続きの迅速化を内容とする建築基準法改正案を今国会に提出する。同相の諮問機関・社会資本整備審議会が答申した、建築行政のあり方の中で「都市再生に対応した建築基準法集団規定のあり方」を受けて、改正案の作成に着手する。答申は規制緩和や手続きの迅速化を中心に、@容積率など形態制限の選択肢を拡大A集団規定に性能規定の考え方を導入B地区計画制度の整理統合C街区・通り沿いなど一定の区域単位に規制適用――などを内容としている。

労働関係の動向

● 総務省が発表した昨年12月の完全失業率(季節調整値)は5.6%と前月より0.1ポイント上昇し、4ヶ月連続で過去最悪を更新した。2001年平均も前年比0.3ポイント上昇の5.0%と過去最悪。12月の完全失業者数は337万人と9ヶ月連続で前年同月比で増え、自分の意思ではなく会社の倒産や解雇で職を失った非自発的失業者が5ヶ月連続で増加した。
● 総務省が発表した2001年12月の労働力調査結果によると、職についている人を表す就業者数は1年前(前年同月)より78万人減の6362万人で、 9ヶ月連続して減少した。このうち、雇われている人(雇用者)は同48万人減の5361万人で、4ヶ月連続の減少。また、自営業主・家族従業者は同44万人減(23ヶ月連続減少)の972万人で、ついに1000万人の大台を割り込んだ。主な産業別で就業者をみると、農林、建設、製造、卸・小売、飲食店で就業者が減っている。
● 厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、従業員5人以上の企業の2001年の1人あたり現金給与総額は前年比1.2%減った。前年を下回るのは2年ぶり。景気悪化で年後半から残業時間が減り、所定外給与(残業代)が落ち込んだ。物価変動を考慮した実質賃金も0.5%減少した。 2001年の1人あたりの現金給与総額は月平均で35万1347円。所定内給与が前年比0.4%減り、残業代も4.2%減と3年ぶりに減少に転じた。ボーナスなどの特別給与は3.1%減と4年連続でマイナスとなった。

資本の動向

● 経営再建中の三井建設と住友建設は、1〜2年後に経営統合すると正式発表した。統合までに両社合わせた従業員(単独ベース)の約1割にあたる 500人を削減、4600人体制とする。営業拠点や重複する事業の統廃合など効率化で負債を削減する一方、新工法の開発などで受注拡大につなげ競争力を高める考え。三井建、住友建は両社社長を共同委員長とする「提携・統合委員会」を2月に設置し,合併とするか持ち株会社にするかといった経営統合の方式や統合比率などを検討する。

その他の動向