情勢の特徴 - 2002年2月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 東京商工リサーチは2002年1月の建設業倒産の調査結果をまとめた。件数は467件で前年同月比11.4%増で1月としては過去最悪となった。負債総額は1367億8600万円。これも15.9%の増加となった。原因をみると、販売不振が258件で断然多い。続いて赤字累積69件、放漫経営44件、連鎖倒産40件、過小資本29件となっている。形態別では、銀行取引停止312件、倒産101件でこれだけで413件となり、全体の88.4%となっている。資本金階層別では1000万円以上5000万円未満が230件、100万円以上500万円未満が106件と中小・零細が圧倒的に多く、1億円以上は2件だった。
● 政府は経済諮問会議で総合デフレ対策を決定した。今回の対策では不良債権問題の解決を最重要課題と位置づけたうえで「早期終結にメドをつける」と明記。過剰債務を抱える不振企業向けの債権を対象にした金融庁の特別検査を厳格化したうえで3月までに実施し、その結果を早期公表する方針を打ち出した。大手銀行には検査結果を反映した財務内容を速やかに開示するよう要請する。金融システム安定化策では「資本増強を含むあらゆる措置を講じる」とし、不良債権への引き当て増で自己資本不足に陥る銀行が出るなど金融危機のおそれが生じた場合には公的資金の再注入も検討する方針を明確にした。資金繰りが困難となった金融機関には日銀に無担保融資(日銀特融)の発動を要請し、金融システムの安定に万全を期す考えだ。産業再生を同時に進めるため、特別検査で問題があると判断された企業については@市場に評価される債権計画の策定 A民事再生法など法的手続きによる再建――などの選択を主要行に求める。市場対策としては空売り規制の強化などを打ち出した。

行政の動向

労働関係の動向

● 建退共本部は、ICカードを使った掛け金納入方式の運用を2002年度からスタートする。事業者はICカードによる新システムで自動的に就労状況を把握し、電子メールで建退共本部へデータを送り、この就労状況データをもとに建退共本部が事業者に対し掛け金を毎月請求する仕組み。2002年度は、国土交通省の直轄工事を中心に20ヵ所のモデル現場を選定、ICカードによる実務を試みる。新方式では、個人には共済手帳に代えてICカードを配布。現場ではICカードの読み込み機(現場にパソコンを置いていない場合などはOCR様式も可)によって加入労働者の入退場などをチェックし、自動的に労働日数が集計される。電子メールなどで建退共本・支部に送られたデータの確認作業が終了し次第、事業者から指定された金融機関の口座から掛け金を引き落とす仕組みだ。
● 配管工や大工など主要な屋外労働者職種の半分以上で、2001年の賃金が前年より下がっていることが、厚生労働省がこのほど発表した2001年「屋外労働者職種別賃金調査結果速報」(建設業技能職種)でわかった。それによると、屋外で働く技能労働者21職種のうち、主要11職種の半分以上にあたる6職種で、鉄筋工が2000年より7.3%減、左官が同2.3%減、大工が同2.2%減となるなど、賃金(現金給与額)が低下している。21職種全体では、昨年の1人1日の平均賃金は1万4620円で、前年(1万4550円)より0.5%増と、わずかに増加した。賃金の最も高かった電気工を100とした職種別賃金格差をみると、鉄筋工が76で、他の職種とくらべ格差が大きくなっている。1ヶ月の実労働日数は、技能職種平均で21.2日で、前年(21.6日)にくらべ0.4日減少した。1日当たり実労働時間数は、技能職種平均8.1時間で、前年と同じだった。

資本の動向

● フジタは会社を分割し、経営統合する三井建設と住友建設の新しい企業連合に合流する。不動産部門を分離し、併せて過剰債務6000億円を本体から切り離した上で、建築・土木・都市開発部門でつくる新会社で三井・住友の経営統合に加わる。6月末の株主総会後に会社を分割する考え。建設市場の縮小が加速する中、3社は住友建設の土木、三井建設の高層建築、フジタの都市開発などそれぞれが持つ各分野の強みを発揮できる新たな経営体制を構築。顧客と営業基盤を引き継ぎ相互補完することで、高収益体質の企業への変革を目指す。フジタの連結有利子負債は8800億円(2001年9月末現在)。三井・住友の両社は連結で約6000億円の負債を抱えている。3社の連結売上高は合計で約1兆3000億円(2001年3月期)と業界5位前後の規模になるが、有利子負債が1兆4500億円(同)を超えることになるため、フジタは会社分割で不採算事業の不動産部門を新会社に集約。同時に同社全体の負債の3分の2に当たる約6000億円を不動産部門に切り離した上で、残りの負債を採算部門の建築・土木・都市開発分野でつくる新会社に移行させる。会社分割後の建築・土木・都市開発分野の新会社が上場継続会社になり、社員数3000人以内の事業体制で、受注・売上高4000億円、計上利益150億円、借入金3000億円以下を目指す。不動産部門の新会社は社員数200人前後になり、残る社員は自然減を含む希望退職者を募る考え。
● マンション建設最大手の長谷工コーポレーションは主要取引行の大和銀行、中央三井銀行、日本興業銀行に、総額1500億円の債務の株式化を要請する。長谷工は金融支援を受け、2005年3月末までに連結有利子負債を現在の半分の2500億円以下に圧縮。公共工事から撤退して民間建築事業に特化する。これに伴い3行の長谷工に対する出資比率が上昇、銀行の事業会社への出資比率を5%以下に抑える「5%ルール」に抵触する恐れがあるため、長谷工は同ルールを回避できる「産業再生法」の適用を監督官庁の国土交通省に大手ゼネコン(総合建設会社)ではじめて申請する。長谷工は金融支援を受けると同時に、本業で稼いだ毎期の利益から銀行に債務を返済。2001年3月末時点で5200億円ある連結有利子負債を2005年3月末までに2500億円以下に減らす。本業のテコ入れにも着手。まず売上高の約5%を占める公共事業から撤退してマンション建設など得意の民間建築に特化する。さらに2005年度をメドに持ち株会社を設立、長谷工本体を傘下に入れるほか、マンション管理、同賃貸などの子会社も配置、グループ全体が有機的に事業を展開できるようにする。
● 熊谷組、戸田建設、鴻池組など準大手・中堅ゼネコン(総合建設会社)23社は技術開発で相互交流に乗り出す。汚染土壌の浄化や耐震設計など市場の拡大が期待できるテーマを共同で研究、実用化を目指す。事業の再構築が迫られる業界で受注を増やすには技術力の向上が必要とみて手を組み、大手と対抗していく。交流にはほかに、経営統合を決めた三井建設と住友建設や、ハザマ、奥村組、青木建設、浅沼組、安藤建設、大木建設、鉄建などが参加する。鴻池組を窓口に、各社の研究開発を束ねる連携組織をこのほど設置した。連携組織は運営委員会を設け、有望技術の選択や研究テーマを分担する企業グループの編成作業などに取り組む。開発目標は、建築の新工法や汚染土壌の浄化、リサイクルや廃棄物処理の技術など。建築や環境分野で市場の将来性が高いものの、一社単独では研究開発費の負担が大きい課題を中心にする。
● ミサワホームは2002年3月期にグループが抱える土地や不動産担保融資、株式などに発生した含み損約1200億円を処理する方針を固めた。これに伴い減少する株主資本を増強するため、優先株350億円を3月中に発行する。不良債権処理を急ぐ取引銀行が融資先企業に対して財務の健全化を促す姿勢を強めており、ミサワは同業他社に比べ遅れていた含み損の処理に踏み切る。処理で特別損失が膨らみ、今期の連結最終赤字は従来見通しの35億円から約200億円に拡大する。

その他の動向