情勢の特徴 - 2002年3月前半
● 日本銀行は、政策委員会・金融政策決定会合を開き、金融機関に対する資金供給を一段と強化するためとして、長期国債の買い切りオペ(公開市場操作)を月間8000億円から1兆円に増額することを決めた。同オペの増額は、国内通貨の価値を減少させることで、国民犠牲のインフレ政策を大幅に加速するもの。同オペの増額は今年度に入って3度目で、昨年12月以来2ヶ月ぶり。
● 内閣府が発表した2001年10〜12月期の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質で前期比1.2%減、年率換算では4.5%減となった。設備投資が12.0%減と現行基準で最大の下げ幅を記録。個人消費はプラスだが、全体では8年ぶりの3.4半期連続のマイナス成長となった。実質成長率を大きく押し下げたのは設備投資。比較可能な1980年以降で最大の減少幅となり、設備投資の落ち込み分だけで実質成長率を2.1%下押ししたことになる。情報技術(IT)関連の電気機械に加え、これまでは比較的堅調だった非製造業にも投資手控えの動きが広がった。GDPの最大の需要項目である個人消費は3.4半期ぶりにプラスに転じ、前期比1.9%増。パソコンや家電、宿泊施設などへの支出が増え、7〜9月期の減少の反動で数字が強めに出た面もある。
● 東京商工リサーチは2月の建設業倒産調査結果をまとめた。倒産件数は512件で前年同月比6.8%増。2月単月としては1984年の485件を抜いて18年ぶりに過去最悪を更新した。負債総額は1529億300万円で35.7%もの大幅な増加となった。公共工事縮小、設備投資低迷、不良債権処理加速などで地場大手の倒産が続出した。原因別では、いわゆる不況型(販売不振、赤字累積、売掛金回収難)が375件で、全体の73.2%を占めた。形態別では、銀行取引停止が326件、破産 120件、民事再生法12件、会社更生法2件など。資本金階層別では500万円以上1000万円未満260件、100万円以上500万円未満119件、 500万円以上1000万円未満53件で、このクラスだけで432件。全体の84.4%となっている。
● 国土交通省が今通常国会に提出予定の「建築基準法等の一部を改正する法律案」の柱は都市再生事業の円滑な実施に向けた都市計画に関する新制度の創設や、シックハウス対策のための規制導入など。都市再生に関連する法律改正は、「まちづくりに関する都市計画提案制度の創設」をはじめ、用途地域における容積率などの選択肢の拡充や、容積率制度などを迅速に緩和する制度の導入、地区計画制度の見直しなどが柱。このうち提案制度の創設は、地域の自主的な街づくりを促すため、土地所有者やまちづくり協議会、まちづくり民間非営利団体(NPO)が政令で定める面積以上の区域について、土地所有者などの3分の2以上の同意を得れば都市計画を提案できるようにする。容積率などの選択肢の拡充は、商業・業務地の高度利用や都市居住の促進、密集市街地での建て替え促進などが目的。具体的には現在1000%に設定されている商業地の容積率制度の上限を3割引き上げ、最大1300%とする。また第1種住居地域などで60%に固定されている建ぺい率制限は50および80%を追加。低層住居専用地域だけに適用されている敷地規模制限は、全用途地域での適用を可能とする。地区計画制度の見直しでは、現行の制度を整理・合理化し、1つの地区計画で地区の特性に応じて用途制限、容積率制限などを緩和・強化できる、分かりやすく使いやすいものに改める。
● 総務省が発表した労働力調査によると、1月の完全失業率は、過去最悪だった昨年12月(改定値5.5%)より0.2ポイント低下し、5.3%になった。男性が0.4ポイント低下し5.4%、女性は前月と同率の5.1%。これは厳しい雇用情勢から職探しを"あきらめた"人が多数でている(非労働力人口が昨年に比べ120万人増加)ため。1月の完全失業者数は344万人で、1年前(前年同月)にくらべ27万人の増加。
● 東証一部上場の準大手ゼネコン佐藤工業は、東京地裁に会社更生法の適用を申請、同地裁はこれを受理した。負債総額は単独で4499億円。公共工事の減少や信用不安の広がりによる工事受注高の減少に歯止めがかからず、自主再建を断念した。グループの佐藤コンクリート工業(富山市、平井紀光社長)など8社も同日、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。9社合計の負債総額は4586億円、連結対象19社まで含めると5675億円(昨年9月末時点)。
● 不動建設は、事業の選択と集中、スリムな企業体質の実現、営業力の強化を基本方針とする中期経営計画(2002年度からの3ヶ年)を策定したと発表した。計画期間の売上高は2002年3月期見込みを下回るものの、確実に利益を計上できる経営の実現を目指す。組織・人事面では、人員削減や部署の統廃合などにより固定費を圧縮。社員数は現在1770人だが、2002年3月末までに早期退職者を含めて300人削減し、2005年3月末時点で1450人体制とする。