情勢の特徴 - 2002年3月後半
● 政府は、各種都市計画・建築規制を緩和し、民間事業者に都市計画の発案権を与える「都市再生」特別措置法案や、事実上土地収用権まで付与する「都市再開発法改正」案の今、国会上程を行った。「都市再生」特別措置法案では「都市再生」の拠点となる「都市再生緊急整備地域」を指定し、事業を施行する民間事業者に破格の優遇措置を講じようとするもの。同法案の大きな特徴は、土地利用規制に特例をもうけること。政令で指定された「都市再生緊急整備地域」では既存の土地規制をすべて適用対象外とした上で、新たに自由度の高い計画を定めることにする。これで、既存の規制がほとんどなくなり、自由に都市計画をおこなうことができ、超高層の建築物が密集して建てられるようになる。さらに、不動産業者やゼネコンなど大規模事業を進める民間事業者にも都市計画の提案ができる制度を創設する。迅速な都市計画および事業認定の手続きを実施することで事業の提案から実施までの期間を大幅に短縮することを狙っている。また、「都市再生」特別措置法案の実施法ともいうべき「都市再開発法改正」案では、デベロッパー主導で「再開発会社」をつくらせ事業に参入。そのうえ、事実上民間企業に土地収用権まで与えることができる。しかも、これらのプロジェクトにたいして金融支援の特典も設けられている。民間都市開発推進機構を通じた@整備事業の一部の無利子貸し付け、A出資や社債取得による施行費用の支援、B債務保証など。
● 政府が閣議決定する「規制改革推進3ヶ年計画(01年度改正版)」の全容が明らかになった。重点計画事項は都市再生や環境、医療など14項目。このうち都市再生関連は「都市にかかわる各種制度の見直し」などを実現するため、関連する規制・制度の改革を進める。また、競争政策関連では、公共工事の競争環境を整備するため、入札契約制度改革として一般競争入札方式や指名競争入札方式の改善などを推進する。都市再生は▽都市に関する各種制度の見直し▽不動産市場の透明性確保▽マンション建て替えの円滑化―の3分野で規制・制度改革を進める。競争政策に関する取り組みでは、地方公共団体が指名競争入札方式によって工事契約を結ぶ場合を対象に、不良・不適格業者の排除および適正な工事施工の確保に向けた措置の強化や審査体制の整備と並行して、低入札調査制度への移行を指導する。
● 大手銀行12行の3月末の不良債権残高が2001年9月と比べ2割強増え24兆円強になる見通しとなった。一年前と比べると4割弱の増加になる。大手13行(三和銀行と東海銀行は今年1月に合併)の不良債権残高は昨年3月末時点では17兆6800億円だったが、9月末時点では20兆1400億円に増えていた。大手銀は貸出先の再建・整理により残高を圧縮しようとしているが、それを上回る規模で不良債権が発生している。大手12行の今期の不良債権処理損は7兆5000億円規模になる見込み。
● 東京都は2002年度にも「都市づくり基本条例(仮称)」案を策定、都内の広い地域で再開発を促す。構想では一定割合の地権者が要請すれば、敷地単位ではなく、街区ごとに規制緩和を適用できるようにする。街区内での容積率移転や建物の高さ制限緩和などが可能になり、中高層の建築物や公園などをバランスよく整備できる。容積率移転や高さ制限緩和などの適用地域は従来、丸の内(千代田区)や銀座(中央区)など交通網整備が進んだ一部に限られていた。構想が実現すれば都心部以外の建物密集地の再開発が進むと都はみている。密集地の再開発は現在、地権者全員の合意が必要で、ビル1棟ごとに建築規制もかかる。このため、広い範囲で街並みを整えることが難しく、ペンシルビルの乱立などを招いてきた。規制緩和により地権者の合意ができたブロックから再開発に着手することが可能になる。
● 国土交通省は入札契約の一層の適正化に向けて早急に実施する方策を委員会報告としてまとめた。報告は公共工事入札契約適正化促進法の徹底とそのフォローアップ、入札契約制度の運用改革、不良・不適格業者の排除――の3本柱で構成。同省所管の11特殊法人で予定価格の事前公表を試行するほか、直轄工事で原則現場説明会を廃止する。また、一部工事で指名業者を入札後に公表することの試行、公募型指名競争入札の約5割を対象に工事費内訳書の提出などの運用改善を推進する。地方公共団体に対しては、入札契約法の徹底を指導強化を図るほか、同省所管事業の補助金を利用した、技術審査や低入札価格調査の実施で外部機関を活用できるようにする予定だ。
● 国土交通省と農林水産省は、昨年10月に実施した公共事業労務費調査に基づき、4月の積算から適用する2002年度公共工事設計労務単価を決定した。対象50職種の平均単価は1万9106円で、前年度に比べて3.0%減。99年度から4年連続のマイナスとなり、建設市場における労働力の過剰傾向を反映した。50職種の新単価を地方ごとにみると、すべてのブロックで減少し、特に沖縄、東北、九州、中部、北陸の5地域は全国平均(前年度単価比3.0%減)より下落率が大きい。主要11職種平均の単価は、1万6583円(3.2%減)で、すべての職種でマイナスとなった。今回の新単価決定について国土交通省は、調査協力を得た業界53団体に対し、実施報告を通知した。この中で、労務単価に関する留意事項として、単価は工事費の積算に用いるものであり、「下請契約における労働者への支払賃金を拘束するものではない」ことなどを強調し、建設労働者の雇用管理の周知徹底を要請した。
● 総務省が発表した2月の労働力調査結果によると、完全失業率は、1月と同じ5.3%(男性5.4%、女性5.2%)で、高水準に張り付いたまま。とくに女性は1月より0.1ポイント上昇し、過去最悪となった。完全失業者数は前年同月より38万人増加の356万人。11ヶ月連続して前年を上回り、過去最多だった昨年9月(357万人)に迫った。356万人の完全失業者のうち、勤め先の都合による離職者は115万人、自己都合は113万人で、昨年11月以降、非自発的離職者が自発的離職者を上回り、増加を続けている。職についている人を表す就業者数は、1年前(前年同月)より104万人減の6248万人で、11ヶ月連続の減少。このうち、雇われている人(雇用者)は同77万人減の5272人で、これも6ヶ月連続の減少。従業員規模別では1〜29人規模、30〜499人規模とも前年同月より雇用者は増加しているが、500人以上規模の大企業が10ヶ月連続で減らしている。自営業主・家族従業者も同32万人減の949万人で、減少は25ヶ月連続で、2年以上も減り続けている。