情勢の特徴 - 2002年4月前半
● 日銀が発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス38となった。前回2001年12月の調査から横ばいで、5期ぶりに悪化が止まった。大企業製造業の指数悪化が止まった背景には、在庫調整の進展がある。製商品在庫水準判断指数(「過大」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いた値)は、33で、6期ぶりに好転している。業種別に見ると、情報技術(IT)需要の回復などを受けて、電機の業況判断指数が改善に転じた。大企業非製造業の業況判断指数はマイナス22で、3期ぶりに悪化が止まった。対照的に中小企業では製造業が前回より2ポイント低いマイナス51、非製造業は同3ポイント低いマイナス42と、ともに5期連続の悪化。大企業のリストラの影響などによって、売り上げが思うように伸びていない。
● 2002年2月度の全国建設業の倒産は512件、負債総額は1529億300万円となった。件数は、前月比9.6%、前年同月比では6.8%の増加となり、歴代件数で過去39番目、2月同月比較としては1984年の記録を超えて過去最悪を更新した。倒産形態別では、法的倒産が137件となり構成比は26.7%。そのうち、会社更生法が2件、民事再生法が12件、破産は120件、特別清算は3件を占めた。私的倒産では、銀行取引停止処分が326件、内整理49件となった。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が3件、1000万円以上1億円未満274件、1000万円未満(個人事業含)が235件の割合。従業員数別では10人未満の零細企業が387件(構成比75.5%)となった。
● 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は、公共事業の入札制度で企業間競争を阻害している地域要件やランク制の是正を検討する方針を固めた。市場の競争性を阻害しているこれらの制度を見直すことで、企業の参入を容易にするとともに、競争性や透明性を一層高めるのが狙い。同会議では、談合などの摘発強化や調達の電子化などの取り組みとあわせた検討を行い、6月に策定する経済活性化戦略に盛り込む方針だ。公共工事については、その他にも「厳正な独占禁止法の執行と公正取引委員会に付与されるべき権限のあり方についての一体的な検討」「入札談合など悪質な違反行為の摘発強化」「公共工事における政府調達の電子化推進」などの取り組みも必要とし、検討の必要性を訴えている。
● 金融庁が大手銀行を対象に実施した特別検査によって、銀行の自己査定よりも貸出先への評価を厳しくした債権額は7兆5000億円に上ることが、明らかになった。このうち約半分の3兆7000億円を「破たん懸念先」以下の不良債権に分類した。今年3月期の状況を調べた特別検査は、株価の下落など市場の評価が悪化した大口融資先149社が対象で、与信額は合計で12兆9000億円にのぼった。このうち建設、不動産、流通、ノンバンクの「不振四業種」向けは全体の8割強を占める10兆5000億円。
● 中小企業庁は、大企業による「下請けいじめ」の実態を調べた特別立ち入り検査の結果を発表した。違反行為で最も多かったのは「下請け代金の支払い遅延」(22件)で、これに「代金の減額」(14件)、「商品の受け取り拒否」(10件)などが続いている。悪質な違反行為に対しては公正取引委員会に企業名公表などの措置を請求できるが、今回は見送った。
● 政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)は第6回会合を開き、今国会で成立した都市再生特別措置法に基づく「都市再生緊急整備地域」の指定基準の考え方を了承した。7月の法施行に合わせて第1次指定を行う予定。指定された緊急整備地域では、都市計画・事業の面から「都市計画提案制度」「都市再生特別地区」「期限を区切った都市計画決定」、また、金融支援をして「公共施設整備支援」「事業立ち上がりの金融支援」といった措置が講じられる。具体的な指定地域のイメージは▽高度成長期をけん引してきた重厚長大産業用地などで、大規模土地利用転換が見込まれる地域▽駅など交通結節点およびその周辺で、生活・交流などの拠点形成が見込まれる地域▽メーンストリートなど基盤が整備されている市街地で、建物更新・共同化などが見込まれる地域▽規制市街地で広幅員の道路整備を行う地域で、沿道の一体的開発が見込まれる地域▽防災上危険な密集市街地で一体的総合的な再開発が見込まれる地域▽バブル経済の遺産ともいえる虫食い土地など細分化された土地の集約化と有効利用が見込まれる地域▽大規模な民間都市開発投資が見込まれる地域―など。
● 東京商工リサーチ調べによると、2001年度の建設業倒産は6223件となり、前年度比0.7%増。1984年度の6219件を上回り、過去最悪を更新した。負債総額は2兆6195億5100万円で68.6%もの大幅な増え方で、負債額も97年度を超えて過去最大となった。銀行主導の再編が進められた一方で、民事再生法、会社更生法適用による法的整理もあり、また、地場ゼネコンの倒産が激増した。倒産の原因をみると、形態別では、銀行取引停止が4287件と圧倒的に多く、全体の68.9%に達している。破産が1241件、内整理が496件、民事再生法182件、特別清算9件、会社更生法8件と続く。資本金階層別では1000万円以上5000万円未満が3154件で50.7%。100万円以上500万円未満が1497件で、100万円以上5000万円未満の階層は5256件となり、全体の84.5%を占めた。
● 自宅などで企業の仕事に携わる在宅勤務者が2002年度中に300万人を突破することが確実になった。1996年度の約4倍で、日本の全労働人口 6766万人(2000年)の5%弱にあたる。社団法人日本テレワーク協会によると96年度に81万人だった在宅勤務者は2000年度に約246万人となり、今年度は少なくとも300万人、多ければ350万人程度に膨らむ見込み。同協会の調べでは、2000年度時点で上場企業の2割、全体でも13%が在宅勤務制度を採用している。
● 経営再建中の中堅ゼネコン、日産建設は、東京地裁に会社更生法の適用を申請し受理された。負債総額は1146億円。筆頭株主の大手スーパー、マイカルの経営破たんで信用力が急激に低下し、自力再建を断念した。財務面では2002年3月期末で109億円の債務超過となることが確実で、法的整理を余儀なくされた。
● 建設通信新聞社は、建設業513社、設備工事業246社の最近1年間(2000年10月〜2001年9月)の完全工事高・受注工事高実績をまとめた。完成工事高100億円以上の企業367社中、直近の業績で赤字決算だった企業は82社・22.3%で、前年同期調査の16.5%から拡大、より深刻になっている。建設業の収益性では完成工事総利益率が全階層で低下しているが、販管費などを差し引いた後の売上高営業利益率は、完成工事高3000億円以上の企業層で 0.33ポイントの改善が見られ、早期退職制度や採用抑制による人員適正化や諸経費削減の効果が現れているようだ。しかし、それに続く3000億円未満 1000億円以上の企業層は前年同期調査の実績が好調だった反動もあるが1.30ポイント減と大きく落ち込んだ。
● 積水ハウスなど大手戸建て住宅各社が住宅展示場に出展するモデルハウスを大幅に削減する。戸建て需要の縮小に伴いモデルハウスによる営業効率が低下しているため。各社は電気店との連携や訪問販売などを強化、モデルハウスに依存した営業戦略を転換する。積水ハウスは「地域が重複するなど効率の悪い展示場を中心に見直す」(和田勇社長)方針で、1〜2年以内に約2割減らす。ナショナル住宅産業は2年以内に約3割、ミサワホームは2006年3月末末までに約3割減らす。