情勢の特徴 - 2002年5月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●国土交通省が発表した2002年度の建設投資(名目)見通しによると、政府と民間を合わせ57兆1300億円、86年度以来16年ぶりに60兆円を割り込む公算だ。2001年度見込みでは5.4%減で6年連続の減少となる。地方単独事業や一般公共事業の減少により政府建設投資が縮小するのに加え、民間部門の住宅投資・非住宅建設投資とも前年度を下回る見込みである。国内総生産(GDP)に占める建設投資の割合は11.5%と、調査を開始した60年度以降最も低い水準となり、大幅な景気回復がない限り、近い将来10%台を割り込む可能性もある。2002年度の政府建設投資は前年度比8.9%減の25兆1100億円。当初予算で地方単独事業10.0%減、一般公共事業費10.8%減と大きく落ち込んだことが影響している。政府建設投資のうち建築投資は12.7%減の3兆200億円。内訳は、住宅投資が14.7%減の9300億円、非住宅建築投資が11.8%減の2兆 900億円となっている。土木投資は8.3%減の22兆900億円で、公共事業が7.4%減の19兆7400億円、鉄道、電力・ガス、上・工業用水道など公共事業以外が15.2%減の2兆3500億円となる見通し。民間部門のうち、住宅建設投資は1.9%減の18兆200億円。低金利など投資プラス要因はあるものの、雇用・所得環境の先行き不安が解消されないことが影響すると見ている。政府住宅とあわせた新設住宅着工戸数はおおむね110万戸台半ば程度(投資ベース18兆9500億円)で、2001年度の117万 3000戸を下回る見込み。

行政の動向

●国土交通省は都市再生事業の円滑な実施に向け、今通常国会に提出した法案のうち、4月上旬までに成立した「都市再開発等の一部を改正する法律」と「都市再生特別措置法」について、6月上旬にも施行する方針を固めた。都市再生の実現が国の重要課題になっているため法律の施行を前倒しし、都市再生特別措置法に基づく基本方針の策定など、関連する行政手続きの早期完了につながる。都市再生特別措置法は、民間の資金や街づくりに関するノウハウなどを特定の地域に集中的かつ戦略的に振り向けるため、制定された。法律では政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)が都市再生に関する基本方針案を定めるとともに、「都市再生緊急整備地域」を政令で指定することを規定。この地域内で都市再生事業を緊急に推進するための措置として、▽土地利用規制の特例▽事業に関する手続き期間の短縮▽事業に対する公的金融支援―などを講じる。パブリックコメントを開始した施行令案によると、民間都市再生事業計画として認定するプロジェクトの規模は1ヘクタールと規定。また、事業区域面積が0.5ヘクタール以上の事業を対象に民間事業者による都市計画の提案を認め、民間主導のプロジェクト推進を促す。
●国土交通省は、既存住宅を対象とした「住宅性能表示制度」を創設し、今秋から運用を開始する。新築住宅と同様、住宅の品質確保促進法(品確法)に基づく制度として位置付ける。公的に認められた機関が住宅の質や性能に関して客観的に評価し、その情報を住宅の売買などに活用することで、良質な住宅ストックの形成や中古住宅市場の健全な育成につなげることが狙い。既存住宅の性能表示制度は、住宅政策の基軸を「新築重視から市場・ストック重視に転換する」方針に基づき、導入する。公正中立な第三者機関が住宅の質や性能を検査・評価し、その結果を住宅所有者に知らせることで、適切な維持修繕やリフォームの実施を可能にする。性能評価の情報は中古住宅を取引する際の判断材料にも活用でき、制度が一般に普及すれば中古住宅市場拡大の一助となる。国交省案によると、同制度はすべての戸建て住宅と共同住宅が対象。検査と評価は国交相が指定する住宅性能評価機関が実施する。性能評価に関しては、耐震等級や高齢者等配慮対策等級など現行制度の基準で設定されている9分野のうち、劣化軽減対策、省エネルギー対策、音環境対策を除く6分野21項目(新築時に建設住宅性能評価を受けていない住宅は12項目)について評価する。どの評価を行うかは申請者が自ら判断する。

労働関係の動向

●専門工事各職種ごとに民間資格として設けられている「基幹技能者」の数が、今年3月末現在で1万2214人に達した。基幹技能者の育成については、建設産業人材確保・育成推進協議会(人材協)が96年7月に策定した基本方針を受け、各団体が取り組みを開始、現在8業種9団体が資格制度を整備している。団体ごとの基幹技能者数の内訳は、▽全国圧接業協同組合連合会(基幹圧接技師)=375人▽カーテンウォール・防火開口部協会(サッシ・カーテンウォール機関技能者)=50人▽日本機械土工協会(機械土工主任技士)=623人▽日本建築板金協会(建築板金基幹技能者)=475人▽日本造園建設業協会・日本造園組合連合会(造園工事基幹技能者)=2537人▽日本電設工業協会(電気工事統括技士)=7735人▽日本架設協会(橋梁基幹技能士)=359人▽全国鉄筋工事業協会(鉄筋施工管理士)=60人。
●勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済(建退共)事業本部は、2001年度の退職金給付状況をまとめ公表した。2001年度に退職金を受け取った被共済者は前年度比9.7%増の9万6000人、退職金の平均支給額は同4.5%増の89万9000人といずれも過去最高を記録し、その結果、支給総額は同 14.6%増の861億円と大きく伸びた。給付状況を支給額にみると、100万円以上の退職金を手にした人が同15.9%増の2万9473人、200万円以上が同17.4%増の1万876人、 300万円以上が同27.6%増の3942人、400万円以上が同45.9%増の1150人、500万円以上が同156.8%増の208人だった。建退共では、これまでに126万8000人に対し、6803億円の退職金が給付されている。

資本の動向

●国土交通省が公表した大手50社の2001年度建設工事受注総額は、前年度比8.2%減の13兆7470億円で、5年連続の減少となり、1987年度以来の低水準となった。受注総額のうち国内受注は前年度比8.1%減の13兆784億円、海外受注が同9.6%減の6687億円。国内の発注者別受注高は、民間が8兆6290億円(前年度比7.5%減)で2年連続の減少。不動産業や金融・保険業からの受注は増加したものの、製造業、サービス業などからの受注が減っている。官公庁からの受注は3兆8204億円(同10.0%減)で3年連続して減少。発注機関別では国、公団・事業団など国の機関が2兆273億円(同5.9%減)、都道府県、市区町村など地方機関が1兆7931億円(同14.2%減)となった。

その他の動向