情勢の特徴 - 2002年5月後半
● 東京商工リサーチがまとめた4月の建設業倒産は476件、前年同月比1.8%の減少となった。負債総額は1569億1500万円で25.8%の大幅な増加。倒産の形態をみると、銀行取引停止293件、破産113件、内整理51件、民事再生法19件。法的整理は132件でこのうち113件が消滅型。私的整理が344件となっている。資本金階層別では、1000万円以上5000万円未満が258件、100万円以上500万円未満101件、500万円以上1000万円未満48件で、この100万円以上5000万円未満の中小規模層だけで407件となっている。5000万円以上は18件に過ぎない。
● 首都圏の戸建て分譲住宅価格の前年割れが続いている。不動産情報サービスのアットホーム(東京・大田)によると一都三県の4月の平均成約価格(速報値)は前年同月比7.1%減の3883万円で16ヶ月連続のマイナス。低価格化により、成約数は2ケタ増で推移している。採算に乗せるため分譲各社は海外調達の拡大や情報技術(IT)を活用しコスト削減に知恵を絞っている。調査は首都圏に約36000店ある会員不動産会社からデータを集め分析。
● 大手銀行13行は、2002年3月期連結決算を発表した。期末時点の不良債権残高は27兆1700億円で1年前に比べて47%増えた。残高は同一基準での集計を始めた1999年3月期以降最大規模。貸出残高に占める不良債権比率は8.5%と資産の劣化が進んでいる。銀行グループ別で不良債権残高が減ったのは三菱東京グループだけ。UFJグループ、三井住友銀行が前年同期の2倍以上になり、7グループ13行合計では8兆7000億円増えた。不良債権残高が増えたのは、金融庁の特別検査などを受けて各行がゼネコン、不動産など経営不振先向けの大口貸出資産の査定を厳しくしたことが大きい。景気の悪化で中小企業の倒産も増え、不良債権の新規発生額は10兆円を超えた。
● 大手建設会社が共同で川崎臨海部に建設廃棄物のリサイクル施設を整備する構想をまとめた。川崎市・扇島の民間工場跡地3ヘクタールを賃借し、50億円かけてリサイクル施設を整備する。建設現場から出た汚泥を焼成して路盤材などに再生する。紙くず、木くず、廃プラスチックなどからなる混合廃棄物を焼成用燃料に使う。分別解体した木くずの一部も燃料に混ぜ、混合廃棄物と合計で年間2万7000トンを燃料として使う。汚泥は年7万5000トンを処理する。いずれも神奈川県内から出る分が中心で、それぞれ県内発生分の3分の1、1割強を処理する見込み。
● 建設工事にかかる資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)が全面施行、同法の核となる分別解体や再資源化の義務付けがスタートする。建設リサイクル法は、解体や新築工事の現場でコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、廃木材の特定建設資材廃棄物を分別するとともに、再資源化することを義務付けている。義務付けの対象工事は、建築物の解体が延べ80平方メートル以上、土木構造物などその他工作物は工事金額500万円以上などと規定している。実効性を確保するため、工事着手の7日前までに都道府県知事に分別解体などの計画を届け出なければならない。
● 京都は都心の民間開発を促す狙いで、環境影響評価制度を大幅に見直す。現在高さ100メートル、延べ床面積10万平方メートル以上の高層建築物建設の際に義務づけている対象規模を1.5倍(150メートル、15万平方メートル)程度に緩和。同時に都市再生特別措置法で近く指定される「緊急整備地域」などで手続きを簡略化、20ヶ月程度かかっていた期間を半分以下に短縮する。6月開会の定例議会に計画づくりの段階から周辺環境への影響を事前評価する「計画段階アセスメント」導入と合わせ、条例案を提出する。
● 全国鉄筋工事業協会(略称・全鉄筋、岩田正道会長)が会員向けに実施した調査によると、安値受注を余儀なくされる厳しい経営環境のあおりを受け、わずかながらも上昇していた社会保険加入率が、2001年度で前年度比マイナスに転じた。全鉄筋が毎年継続的に実施している「雇用と経営改善に関するアンケート調査(01年度)」で判明した。従業員の社会保険加入率は「81%以上」が33%で前回同様最多だったが、加入率61%以上の企業割合をみると、前回調査比2ポイント減の44%に下がった。このほか建設業退職金共済制度の加入比率は前回比5ポイント減の40%となった。
● 長谷工コーポレーションは、国土交通省に産業活力再生特別措置法(産業再生法)の認定申請を行い、受理された。認定されれば、不動産処分に伴う登録免許税軽減や債務株式化のための優先株発行枠の拡大などの優遇措置を活用できる見込み。同社は今年2月、PM(プロジェクト・マネジメント)・CM(コンストラクション・マネジメント)会社への業態転換や、持ち株会社による経営形態への移行によって、工事請負から設計、PM、販売などフィービジネスベースの契約形態に変革し、"脱請負化"を目指す3カ年計画を発表。同計画を実現するため主要取引銀行の大和銀行、中央三井信託銀行、日本興業銀行に総額1500億円の債務の株式化による追加支援を要請し、3行は3月27日付で要請に基本同意した。
● 準大手ゼネコン(総合建設会社)のフジタは、会社分割を柱とする3年間の新たな経営再建計画を正式発表した。10月1日付で本業の建設事業部門を新設会社に分離したうえで、三井建設、住友建設の経営統合への合流を目指す。新設会社が「フジタ」の社名を引き継ぎ、不採算な不動産事業が残る旧フジタ本体は社名を「ACリアルエステート」に変更する。新フジタの資本金は100億円。株式の51%をACリアルエステートに、49%を現在のフジタ株主に割り当てる。
● 上場大手・準大手ゼネコン各社の02年3月期連結決算がほぼ出そろった。長引く建設不況による市場縮小と、競争激化による工事採算の悪化が各社の業績を直撃し、上位15社のすべてが経営減益を余儀なくされた。決算発表を終えた連結売上高3000億円以上のゼネコン15社の中で、増収を果たしたのは4社にとどまった。大手の鹿島や大林組は、数年前から活発化した都心部の大型再開発事業などが完成期に近づいて収益を押し上げた。大型再開発のほか、準大手クラスが激しい受注競争を展開した民間マンションなどの建築工事は、受注単価が急落して採算が一気に悪化。粗利の縮小が工事原価の低減を飲み込む形で各社の利益を直撃した。完成工事総利益(粗利益)率は、比較的利益率が高い土木工事を含めても1ケタ後半で低迷。各社とも一般管理費など固定費の削減に取り組んだものの、大半の社が2ケタの大幅な営業減益を強いられた。利益がしぼむ中で、保有資産の含み損処理なども実施せざるを得ず、8社は最終損益も赤字になった。