情勢の特徴 - 2002年6月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●東京商工リサーチがまとめた5月の建設業倒産は、549件で前年同  比0.5%減、負債総額は1179億5300万円で1.3%減。5月としては件数では過去3番目だが、負債額は過去4番目。3ヶ月ぶりに500件を超え、建設業界を取り巻く環境は依然として厳しい。倒産原因は、受注・販売不振が289件で全体の52.6%を占めた。倒産状況では、銀行取引停止が343件で62.4%を占めた。次いで破産が135件、内整理が52件、民事再生法17件などとなっている。法的整理154件は再建型が17件、消滅型137件の内訳。私的整理が395件。資本金階層別では1000万円以上5000万円未満が300件、100万円以上500万円未満が107件、この中間の500万円以上1000万円未満が59件で、この合計だけで466件となる。
●東京都内で不動産の証券化が急増している。都に届け出る義務がある2000平方メートル以上の土地取引のうち、証券化の手法は2001年には52件となり、前年の1.7倍に達した。都によると、不動産証券化による信託受益権の売買は1999年に9件だったが、2000年には30件になった。2001年は全体の9割以上が23区内。千代田、中央、港など都心8区に28件が集中した。オフィスや住宅などの複合施設が17件と最多で、これに事務所の13件が続いた。
●全国銀行協会が発表した加盟133行の2002年3月期決算(単体ベース)状況によると、「金融再生」法基準の不良債権残高は40兆9552億円、前期比31.7%増と過去最大に膨らんだ。長引く不況の影響に加え、金融庁の特別検査を受けて、各行が貸出債権の査定を厳しくしたことが主因とされている。中でも、回収に注意を要する「要注意先債権」のうち、回収不能に陥る可能性が高い「要管理債権」が、同56.9%増の15兆6563億円と急増した。また不良債権処理額は、7兆5964億円で、同48.3%増。内訳は、不良債権を帳簿上から切り離す貸出金の直接償却が2兆9477億円、同23.2%増。一方、貸倒引当金繰入額が4兆6487億円、同70.3%増と大幅に増加した。
●国土交通省が発表した5月の新設住宅着工戸数は、前年同月比5.8%増の10万6110戸と、3ヶ月ぶりに前年実績を上回った。年率換算(季節調整済み)では126万9000戸になる。都市基盤整備公団などによる大規模な賃貸マンション建設が重なったため、貸家が12.0%増の4万2730戸となり、全体の数字を押し上げた。持ち家(注文住宅)は1.5%増の3万4270戸と2ヶ月連続の増加。住宅金融公庫融資による着工は44.3%減ったが、銀行融資など民間資金による着工が23.7%増えた。一戸建ては11.0%減と9ヶ月連続のマイナスだったが、地方都市などでの着工が多かったマンションが10.1%増えた。

行政の動向

●東京都は環境影響評価基準を大幅に緩和する。都が6月議会に提出したアセス条例改正案は、都心部などを「特例地域」に指定し、アセス対象となる高層建築物を現行の「高さ100メートル以上かつ延べ床面積10万平方メートル以上」から「180メートル超・15万平方メートル超」に緩和。住宅団地は都全域で 1000戸以上から1500戸以上にする。アセスの手続きも一部を省略し、期間を半分程度に短縮する。条例改正案は可決される見通しで、7月から直ちに施行される。折から都市再生特別措置法が今月から施行、政府が7月に同法に基づく「緊急整備地域」に東京の7地域、約2400ヘクタールを指定するのを控えての絶妙のタイミングだ。このほか改正案には、事業の立案段階から複数案を比較評価する「計画段階アセス」を全国で初めて盛り込んだ。
●公正取引委員会は、入札談合防止に向け入札・契約制度改革に関する報告書をまとめた。報告書では、地域優先発注の政策的必要性を認める一方、競争性を失わせるような地域要件の設定が談合を誘発・助長するおそれが強いと指摘。一定数以上の参加者が期待できる場合に限り地域要件を課すなど、参加業者の固定化防止や十分な参加業者数の確保に配慮するよう提言した。報告書では、一般競争入札の拡大のほか、指名競争入札を行う場合も、競争性の確保や手続きの恣意性排除の必要性を指摘した。受注意欲のある広範な事業者の参加が期待できる公募型指名競争入札の活用を求めた。予定価格の事前公表は、職員が談合事件に巻き込まれることを防止する観点から実施団体が拡大しているものの、逆に「談合が一層容易に行われる可能性がある」との指摘もあり、一部の自治体では事前公表に切り替えている。報告書では、事前公表を行う場合には、入札の競争性確保をより厳格にして、談合を行いにくい環境整備の必要性を指摘した。

労働関係の動向

●総務省が発表した5月の完全失業率(季節調整値)は5.4%となり、前月と比べ0.2ポイント上昇した。完全失業者数(原数値)は375万人と 14ヶ月連続で前年同月を上回った。男性が中心だった正社員の人員削減が女性にも波及し、女性の完全失業率は5.3%と過去最悪の水準を更新した。就業者数のうち、サラリーマンなどの雇用労働者は5320万人と前年同月に比べ93万人減少した。この減少幅は過去最大で、総務省は「従業員500人以上の大企業の人員削減が大きく影響した」(統計局)とみている。

資本の動向

●日本プロジェクト産業協議会(JAPIC、千速晃会長)は、新たな時限立法によって東京湾臨海部の再生を促すことを目的とした「臨海部再生特区」構想を正式発表した。構想は、東京湾再生特別措置法を創設、東京湾内の低未利用地を中心とした地域を「臨海部再生特区」として開発を推進する。事業の総合調整や推進する母体として、タスクフォースを創設し、開発権限や開発財源機能も与える。また、開発財源として、対象地域から生じる地方税や国税などの税収の一定割合を原資に、新たな開発基金(日本版TIF基金)の創設も盛り込んだ。

その他の動向