情勢の特徴 - 2002年7月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●経済構造改革に向けた首相指示の全容が明らかになった。公共事業の硬直化につながると批判の多い長期計画のうち、まず今年度に期限のくる9つの計画を廃止・縮小、事業規模も10年前の水準への抑制を目指す。改革の目玉になるのが現在は合計15本ある公共事業長期計画の見直し。このうち今年度に期限を迎える道路、下水道、空港整備など9計画について打ち切りや大幅縮小の検討を要請する。残りの6計画の期間短縮も検討するよう求める。首相は都市再生など重点分野の公共事業を増やす一方で、長期計画は縮小、柔軟な予算配分を目指す。公共事業の総額抑制にも目標を設ける。2000年度の公共投資(施設事業も含む)の国内総生産(GDP)比は5.1%と1〜2%台の欧米諸国に比べ際立って高い。この比率を景気対策で公共投資を急拡大する前の1990年代前半の水準(同4.8%程度)に戻すことを目指す。
●政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は、経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革の中間とりまとめを行った。新しい事業の創出を観点とした政府調達制度の見直しとして、官公需法にもとづく中小企業向け契約目標について、その在り方を検討する必要があるとした。また、いわゆる官製市場の見直しでは、上水道事業の民間経営化や下水道事業の包括的民間委託、PFI事業推進の障害となる規制の撤廃・緩和などを求めた。年末には最終まとめを行う。

行政の動向

●社会資本整備審議会(国土交通相の諮問機関)住宅宅地分科会の宅地政策ワーキンググループ(主査・黒川洸東工大名誉教授)は、宅地政策の転換の基本的方向のあり方に関する報告書をまとめた。報告書では、大都市法に基づく供給基本計画や供給計画の目標年次である05年度に合わせて、いわゆる宅地供給の推進ではなく、広域的観点に立った業務機能や都市居住などのあり方に照らして、望まれる宅地整備を誘導する施策に再構築することを求めた。また、都市基盤整備公団や地域振興整備公団をはじめ、各公的主体による宅地供給にも言及し、民間で担うことができない市場の補完的な役割に重点化すべきだとした。この中で、都市公団のニュータウン事業の新規事業を廃止することも求めた。
●与党3等が議員立法で今通常国会に提出した「入札談合等関与行為の排除および防止に関する法律案」(官製談合防止法案)が、全会一致で成立した。この法律は、公共工事や物品調達などの入札談合に国や地方公共団体といった発注者側の職員が関与するのを防ぐ目的で制定された。▽入札談合等の関与行為を排除するため、公正取引員会が公共発注者に改善措置を要求できる▽入札談合等の関与行為を行った職員に対して損害賠償請求する−などが柱。法律では、官製談合にあたる関与行為として「契約の相手方となるべき者をあらかじめ指名すること、そのほか特定の者を契約の相手方となるべき者として希望する意向をあらかじめ教示、示唆すること」などの3項目を第2条5項に明記している。官製談合防止法に罰則規定は盛り込まれていないが、入札談合に関する調査の結果、公務員の関与行為があると認められた場合に、公取委が改善措置の実施を公共発注者に求めることができるようになる。
●日本道路公団が道路四公団民営化推進委員会に示した資料で、高速道路の未整備区間(2383キロ)の全事業費のうち、77%、約8割が執行されていない未契約分であることが明らかになった。「高速道路の進捗状況」によると、高速道路整備計画9342キロのうち、営業中の区間をのぞく未供用区間の全体事業費は19兆4690億円(施行命令が出ていない1兆円分をのぞく)。このうち契約済み(執行済み)は4兆4960億円で23%(2001年度末)。残る77%が未契約。このうち道路用地を買収する用地費は契約済みが37%、工費は同じく20%。つまり用地費の63%、工費の80%がまだ契約されていない。

労働関係の動向

●政府は、国家公務員の退職手当を一律10%削減する方向で検討に入った。来年の通常国会に国会公務員退職手当法改正案を提出する方針だ。民間企業の退職金に相当する退職手当は勤続年数と退職理由に基づき定めた支給率を基準に算定しており、今回は支給率を見直す方針。
●厚生労働相の諮問機関のの中央最低賃金審議会(会長・神代和俊放送大教授)は、2002年度の最低賃金の目安について「現行水準の維持を基本とし、引き上げ額は示さないことが適当」との見解を坂口力厚労相に答申した。事実上の据え置き答申は現行制度が始まった1978年度以来初めて。最低賃金は労働条件の改善のために、所定内給与と残業代を合わせた定期給与がマイナスになった年でも必ず引き上げてきた。前年度比の上昇率は1991年度の4.9%をピークに鈍化し、2001年度は0.68%とそれまでの過去最低水準だった。今後、答申を受けて各都道府県にある地方最低賃金審議会が地域の物価水準などを考慮して各地の最低賃金を決め、原則として10月1日から適用する。
●総務省が発表した6月の完全失業率(季節調整値)は5.4%で前月と同水準だった。完全失業者数は368万人。男女別の完全失業率は男性が5.5%で前月から横ばい、女性は5.2%と0.1ポイント改善した。完全失業者数は前年同月比で30万人増え、15ヶ月連続で増加した。特に倒産・解雇など勤め先の都合と、定年・雇用契約満了を合わせた「非自発的失業者」が153万人と前年同月比で61万人増え、過去最大の増加幅となった。自発的失業者は117万人。

資本の動向

●日本建設業団体連合会は、法人会員59社の2001年度本決算(単独ベース)の実態調査をまとめた。売上高総額は16兆7950億円、前年度比 3.6%減。売上高に占める完成工事高の割合は95.8%と1.7ポイント低下した。経常利益は2820億円、34.2%減と大幅ダウンした。営業利益、特別損失ともに軒並み前年度水準を下回り、建設市場縮小を反映して厳しい経営となっていることを裏付けた。完成工事総利益は1兆2520億円、15.4%減と市場縮小による価格競争激化が工事採算を悪化させた格好となった。営業利益は工事採算の急激な悪化に各企業が進める経費削減努力が追いつかず、3580億円、28.5%減。経常利益は営業利益の減少に加え、金融収支のマイナスが依然として続いていることから、2820億円、34.2%減と前年度水準を大幅に下回った。 特別損失は1兆160億円、50.0%減と大幅に減少したものの、依然として高水準。有利子負債は6兆6400億円、5.2%減となった。有利子負債が減少したものの、売上高がそれ以上に減少したことから対売上高有利子負債比率は39.3%、1.5ポイント上昇した。

その他の動向