情勢の特徴 - 2002年8月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●金融庁が発表した2002年3月末の全国銀行(133行ベース)の「金融再生」法基準に基づく不良債権(「金融再生」法開示債権)の総額は、1年前と比べ9兆6000億円増加の43兆2000億円となった。このうち都市銀行など大手銀行の不良債権は同8兆4000億円増加の28兆4000億円(主要13 行でみると約5割増の26兆8000億円)となっている。危険債権などの最終処理はこの1年間で9兆2000億円進んでいるが、業況悪化や貸し出し条件を緩和した債権を厳しく見直したことや、大手行の大口融資先を対象にした特別検査の実施に伴い、大きく膨らんだとしている。この結果、主要13行の総貸出金に占める不良債権の比率は8.4%と、01年3月末比3.1ポイント上昇した。
●東京商工リサーチがまとめた2002年1月から6月の上期の建設業倒産は、2999件で負債総額は1兆4148億200万円となった。負債額は大手ゼネコンの倒産があったことで過去最悪を更新した。件数的にも史上3番目という高水準で推移した。その大半は中小企業で占められている。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が17件、1000万円以上〜1億円未満1679件、1000万円未満(個人事業含)が1303件の割合。負債額別では負債10億円以上が127件。
●政府は、03年度予算の概算要求基準を閣議了解する。政策的経費である一般歳出の上限を示す要求基準は、本年度当初予算の47兆5000億円を6000億円上回る48兆1000億円とする。公共事業関係費は当初予算比3%減の9兆円。財政出動による従来型の景気浮揚を改め、企業向けを中心とする減税で経済活性化を目指す姿勢を示す。03年度予算について財務省は、「公共投資」(上限9兆円、02年度当初比3%減)のほか、制度・法律に基づく「義務的経費」(33兆7000億円、 2.7%増)、各省の政策判断で増減する「裁量的経費」(5兆4000億円、2%減)に3区分する。公共投資と裁量的経費では、国から地方への政策奨励的な補助金2兆円について5%減の削減目標を設定する方針。政府開発援助(ODA)は効率化を図り、予算行政の規模を見直す。

行政の動向

●文部科学省は、全国の公立少中学校の耐震改修状況調査結果をまとめた。建築基準法の耐震基準が強化された1981年以前に建築の約8万7500棟のうち約7割が耐震診断を実施していなかった。調査は、2階建て以上で非木造の公立小中学校の公舎、体育館13万3400棟余りを対象に実施。このうち旧耐震基準で建築したのは約8万7500棟で、耐震診断を実施していない建物が約6万棟を占めた。既に耐震性を確認したり、改修が済んだもの、耐震性があると推計される建物の合計は約7万6500棟で、全体の約57.3%だった。耐震診断の実施率で6割を超えたのは東京、神奈川、岐阜、静岡だけで、逆に2割未満は27府県に上った。
●国土交通省は、民間事業者による都市再生事業の推進を後押しするため、新たな統合補助金制度を創設する。都市再生特別措置法に基づく緊急整備地域などを交付対象とし、道路や公園など都市基盤施設の先行的整備事業、プロジェクト推進組織や民間が行う調査などをパッケージ化して、民間事業者のプロジェクト実施を資金面から支援する。制度創設は既存の都市再生総合整備事業を抜本的に改編する形で行う考え。同省は同制度の創設を来年度の重点施策に位置づけ、概算要求に盛り込む方針だ。国土交通省の03年度概算要求の重点施策の概要が明らかになった。長期計画の見直しやコストの縮減、官庁施設整備の統一化など公共事業改革を進めるとともに、都市再生事業を推進する統合補助制度の創設や総合防災情報提供システムの構築などを新たに実施する。公共事業改革の推進では、各事業の実施に当たり、従来の費用対効果分析に加え、事業の波及的影響や実施環境を含めた新たな事業評価手法の導入など徹底した事業評価を行う。コスト縮減では、予備設計・基本設計の段階から、広く設計提案を受け付け、設計者の発想を生かしたコスト縮減を図るほか、電子入札や電子納品などの導入による業務プロセスの改革も実施する。発注面では総合評価方式や設計・施工一括発注方式、出来高部分払い方式などを活用し、適正な品質確保を図りながらコストを縮減する。

労働関係の動向

●厚生労働省は、2003年度予算の概算要求に関し、雇用保険に対する一般会計からの支出を500億円削減し、650億円程度に抑制すると発表した。同省は、失業手当などの具体的な給付カット策を年末までに固める方針。同省によると、失業手当受給者などの増加によって、制度「改革」に取り組まなければ03年度の国庫負担は1150億円増加する見通しだとしている。雇用保険は、労使折半で負担する保険料と一般会計からの支出で賄われている。国庫負担額は、失業手当全体の25%と決まっているため、500億円全額が失業手当分と仮定すると、全体では2000億円の給付カットとなる。
●人事院(中島忠能総裁)は、2002年度の国家公務員一般職給与について、行政職で平均2.03%(月額7770円)引き下げるよう国会と内閣に勧告した。1948年に勧告制度がはじまって以来初の引き下げ。大企業を中心としたリストラ・賃下げの影響で民間給与が下がり官民の「逆格差」が生じたとしているが、今後、地方公務員、郵政など4現業に波及し、さらに民間労働者全体への賃下げ圧力となるなど、賃下げ競争に拍車をかけることが懸念される。給与引き下げによる公務員などの減収は、国、地方合わせて約7000億円。勧告の内容は、初めて俸給表で引き下げ改定をし、配偶者手当の引き下げ、期末・勤勉手当(ボーナス)を0.05月削減する。これにより、職員の平均年収は改定前より15万円下がり、4年連続ダウンすることになる。
●厚生労働省が発表した、2001年の雇用動向調査によると、昨年1年間に仕事を辞めた離職者は701万人で、前年より40万人増え過去最多となった。若手を中心に転職志向が一段と強まり、19歳以下ではほぼ半数が離職。景気悪化に伴う倒産や解雇により離職を強いられた人も全体の12%と過去最高を記録した。新たに仕事を始めた就業者は626万人にとどまり、8年連続で離職者数が就職者数を上回った。離職超過の状態は離職した人が再就職できずに失業者となったり、「希望する仕事が見つかりそうにない」と仕事探しをあきらめる人が増えている表れだ。離職者のうち「個人的理由」で仕事を辞めた人は66.3%と前年比0.7ポイント減った。半面、企業のリストラ、倒産などの「経営上の都合」で離職を余儀なくされた人は2.7ポイント増の12%と過去最高になった。就職者に占めるパートの割合は36.7%と過去最高となった。

資本の動向

その他の動向