情勢の特徴 - 2002年9月前半
●財務省は、2003年度予算の概算要求総額を閣議に報告した。一般会計の要求総額は、今年度当初比3.4%増の84兆94億円になった。社会保障などくらしのための予算は「自然増」まで抑制する国民いじめの冷たい要求内容。公共投資関係費と、各省の政策判断で決められる「裁量的経費」は、最大2割増まで要望を認めた。このため実際の要求・要望総額は同6.8%と大幅増の86兆7804億円。政策的経費である一般歳出の要求・要望総額は6.9%増の50兆8656億円。公共投資は10兆7703億円に膨張。公共投資は年末に向けて前年比3%削減するものの、ムダな大型公共事業の事業量は温存される方針。「裁量的経費」も6兆4109億円になった。
●UFJ銀行、三井住友銀行などは、経営再建中の分譲マンション大手、藤和不動産向けに総額2000億円規模の金融支援を実施する方向で最終調整に入った。債権放棄が軸になるとみられる。藤和不はバブル期にゴルフ場など過剰投資が裏目に出て、5200億円を超える連結有利子負債を抱えている。藤和不が現在進めている経営再建計画では2003年末の連結有利子負債の目標を3200億円としていたのに対し、今期末の実際の負債は5000億円を超える見通しで、計画と足元の債務圧縮の状況には大きな開きがあった。藤和不は今秋をメドに新たな中期経営計画を策定する方向で、主力行に対し同計画の柱となる追加金融支援を求めていた。
●政府の「道路関係四公団民営化推進委員会」(委員長・今井敬新日本製鉄会長)が、高速道路整備計画9342キロのうち施行命令後なお未開通の区間約2000キロの「凍結を含む再検討」などを求めた中間報告を決定し、小泉純一郎首相に提出した。中間報告は、基本原則に国民負担の最小化と50年以内の早期の債務償還を明記。民営化の足かせとなる債務(4公団で約40兆円)の増大を抑えるため、「直ちに取り組むべき措置」として国の施行命令が出ている高速道路整備区間(9064キロ)のうち、未整備区間2065キロの「凍結」を含む見直しを求めた。民営化後の組織形態は、道路事業を運営する新会社(特殊会社)と資産・債務を引き継ぐ「保有・債務返済機構」(独立行政法人)に分離する案が明記された。新会社は特殊会社として設立し、最終的には上場を目指す。新会社に対する国の関与は厳格な契約関係を結び最小限にとどめる。新会社は、既供用路線の独占的使用権を有して有料道路事業を経営し、必要な規制緩和を図り関連事業を積極的に展開する。一方の「保有・債務返済機構」は、国民負担の最小化を基本原則に、50年を上限に早期の債務返済を最優先させる。課税による資金の外部流出を避けるため、一定期間、公的法人として運営。4公団の資産や債務を継承し、新会社からの貸付料で債務を返済する。
●東京都中小建設業協会(都中建、吉田建三会長)は、会員会社の窮状と建設市場に秩序を取り戻す必要性を訴える緊急アピールをまとめ、会員会社や報道機関に配布した。緊急アピールは、建設市場の縮小で不適正な価格による受注競争に拍車がかかる異常な事態に危機感を表明するとともに、建設投資の絞り込みや制度改正が急激に進む現状を指摘し、中小建設会社が振興・再編を図る準備期間を十分に与えることを求めている。都中建は緊急アピールで、過当競争による消耗戦が繰り広げられ、現状のままでは建設業者が総倒れになるとの強い懸念を示した。また、品質への影響が心配される採算を無視した競争を排除するために、発注者に対し最低制限価格の引き上げを要望する考えを明らかにした。
●準大手ゼネコン(総合建設会社)のフジタは、全従業員の4分の1にあたる850人の希望退職者の募集を始めた。同社は10月1日付で、建設事業と不振の不動産事業を分割する計画。合理化を進め、三井建設と住友建設の経営統合への早期合流につなげる。募集対象者は50歳以上、または勤続26年以上の従業員。募集期間は11月15日までで、応募者は11月末に退職する。退職金の特別加算はしない。退職金の水準自体を引き下げ、今後3年間で約80億円のコスト削減を見込む。フジタの従業員数は現在約3560人。建設事業を継承する新会社「フジタ」に全員が移行したうえで、100人未満が不動産会社に出向する。自然減を加え、今年度末には約2600人体制とする方針だ。