情勢の特徴 - 2002年10月前半
●構造改革特区推進本部(本部長・小泉純一郎首相)は、特区内に限り特例措置を認める80項目のメニューを明らかにした。また、「構造改革特区推進プログラム」も同日決定。各項目を実施するため、今月招集の臨時国会に構造改革特区推進のための一本の法律(特区法)を提出する方針を固めた。特区法に基づき、自治体が特区の区域や特区内で講じる規制の特例を記載した「構造改革特区計画」を作成し、首相が認定するスキームとする。主な特例措置をみると、土地開発公社が保有している土地の賃貸を容認する。特別養護老人ホームの設置主体・経営主体については、公設民営方式や PFI(民間主導の社会資本整備)方式により株式会社を容認する。中心市街地活性化では、大規模小売店舗の新設や変更の手続きを簡素化する。行政財産に位置づけられている港湾施設の民間貸し付けも認める。また、廃棄物処理法に基づく再生利用認定制度について、特区内での対象品目拡大も行う。
●国土交通省と日本道路公団が圏央道(首都圏中央連絡自動車道)建設のため、東京都あきる野市牛沼地区で土地の強制収用を申請している問題で、東京都収用委員会(川井健会長)は、9月30日土地強制収用を認める裁決を出した。裁決の対象となるのは同地区の土地と建物など22件で、土地面積は計8431平方メートル。道路建設反対運動に対する土地の強制収用は、同地区が全国で初めて。
●政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)は首相官邸で会合を開き、都市再生特別措置法に基づく緊急整備地域として28地域を指定(第2次指定)することを了承、併せて、地元自治体の意向を考慮して作成した各地域の整備方針案も了承した。第2次指定地域は今月末に政令を公布した段階で、正式決定となる。さらに同本部は、東京国際空港(羽田空港)の南側に広がる横浜市と川崎市の臨海地域約4400ヘクタールを「京浜臨海都市再生予定地域」に位置づけることを決定。また、公表済みの都市再生プロジェクト(1〜4次)の推進を後押しするため設けた「都市再生プロジェクト事業推進費」の配分額を決めた。
●厚生労働省が検討している労働基準法改正案の骨格が明らかになった。パート社員や契約社員などが期限付きで労働契約を結ぶ際の、契約期間の上限を原則1年から3年に延ばす。働いた時間ではなく、仕事の成果で評価を決める「裁量労働制」を導入できる対象も広げる。来年1月召集の通常国会に法改正案を提出、早ければ2003年中の実施をめざす。厚労省によると、有期契約労働者は700万人を上回る。
●米軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)で働き、じん肺になった日本人元従業員9人と死亡した3人の遺族が、雇用主の国に総額3億1350万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁横須賀支部は、国に約2億3100万円の賠償を命じた。須山幸夫裁判長は、米軍の石綿粉じん対策が不十分だったと認定。その上で国は、日米地位協定に基づき米軍が安全配慮義務(対策実施義務)を尽くしているかどうか調査・監視し、必要な措置を講じるよう働き掛ける安全配慮義務(対策推進義務)を十分尽くしていなかったとした。また賠償請求権が消滅する時効(10年)の起算点は、死亡時や合併症認定時などとし、元従業員12人のうち3人(1人は故人)は既に時効が成立していると判断。その上で「被告(国)が賠償義務を免れることは著しく正義・公平・条理などに反する。消滅時効の援用は、権利の乱用として許されない」として、原告全員を救済した。元従業員1人当たりの慰謝料は1400万〜2500万円。
●厚生労働省は、失業者に失業手当を支給する雇用保険制度について、給付率を引き下げ、給付日数も短縮する給付関係の改悪案をまとめ、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に提示した。同省は「給付と負担の両面から見直す」としており、今後は保険料引き上げなど負担強化を含めた同制度改悪法案をまとめ、来年1月の通常国会に提出する。現行給付率は、60歳未満で失業前6ヶ月の平均賃金の60〜80%、60〜64歳で50〜80%だが、改悪案は50〜80%、45〜80%に引き下げる。45〜59歳の場合、現行上限額の日額1万608円は7310円に31%下げる。
●三井建設と住友建設が来年4月、合併して「三井住友建設」になる。両社は今年1月末、全面提携と経営統合の構想を正式に発表。委員会や分科会を設けて具体化を検討し、今回、組織のスリム化などの効果が最も出やすいとみられる合併方式での経営統合を選択した。両社が統合に踏み切った背景には、過剰債務を抱えて経営不安が深刻化していたことがある。三井建設は01年に取引金融機関から債務免除と三井グループなどによる増資を受けて再建計画をスタート。住友建設も99年に住友グループなどからの増資を受け、統合発表後には取引金融機関から債務免除と債務の株式化で合計600億円の金融支援を受けた。金融再編で、両社共通の主力取引行となる三井住友銀行が誕生し、不良債権処理の加速を迫られた銀行側が融資先の再編を強く促したことも大きい。