情勢の特徴 - 2002年10月後半
●東京商工リサーチは、2002年度上期(4〜9月)の建設業倒産調査結果をまとめた。件数は3041件で前年同期比2.1%減となった。しかし、負債総額は1兆1136億7200万円で30.8%もの大幅な増加。過去の上期と比べ件数は4番目、負債総額は大幅増が影響して2番目の悪い水準となった。不況型といわれる形態が7割以上を占めており、建設業経営を取り巻く環境の厳しさは、依然として続いている。資本金階層別では、1000万円以上5000万円未満が1590件で52.3%。100万円以上500万円未満681件、500万円以上1000万円未満311件で、100万円以上500万円未満だけで全体の84.9%を占めた。
●竹中平蔵経済財政・金融担当相がまとめた金融・産業再生策の全容が明らかになった。主要銀行に応じて公的資金による資本注入や国有化などの措置を実施。対象行は将来の売却を前提に不良債権を別勘定に分離、新経営陣は正常資産の「新勘定」を引き継いで再生を目指す。年末までに資本注入を申請すれば経営責任の追及を緩やかにすることで申請を促す。過剰債務企業の整理・再生についても政府が新指針を作る。
●経済諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は、「改革加速のための総合対応策」(「総合デフレ対策」)を決定した。小泉首相がブッシュ米大統領に公約した「不良債権最終処理の加速の具体化で、公的資金の投入をテコにした大銀行救済とアメリカ流の不良債権処理基準の導入がねらいです。対応策の柱は、@金融・産業の再生A「構造改革」加速策Bセーフティーネット(安全網)」の拡充。不良債権処理の加速策が本体で、それが生み出す倒産や失業による経済・景気の悪化を糊塗するために雇用、中小企業対策を付け加えている。処理加速策では、銀行の資産査定を格段にきびしくするほか、繰り延べ税金資産(将来戻ってくると予想される税金)評価の厳格化と同資産の自己資本への算入限度を「速やかに検討」すると明記。アメリカの基準導入を決めました。また、銀行側が要求した自己資本充実のための繰り戻し還付金制度の凍結解除や無税償却制度の拡大も盛り込んだ。その上で、経営困難に陥った金融機関には政府・日銀が一体で対応し、必要な場合は「速やかに公的資金を投入」するとしている。雇用、中小企業対策については、処理加速で貸しはがしの深刻化や失業者を出すことを前提に、「離職者支援制度の拡充」や信用保証の拡充」などの施策を盛り込んでいる。
●第155回臨時国会に国土交通省が提出する特殊法人改革関連法案の全容が明らかになった。昨年12月に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」に基づき、同省は10法人の組織形態などの見直しに関する法案を提出する。日本勤労者住宅協会は民間法人に、日本下水道事業団(JS)は地方共同法人に、帝都高速度交通営団は特殊会社にそれぞれ移行し、残る7法人は独立行政法人となる。鉄道公団と運輸施設整備事業団を統合して設立される鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、新幹線をはじめとする鉄道施設の建設と資金の貸し付け、船舶の共有建造、鉄道事業者に対する補助金交付、高度船舶技術の研究開発および実用化支援といった業務を行う。また水資源開発公団は、新規の開発事業を行わないことを原則として「独立行政法人水資源機構」に移行。JSは、下水汚泥広域処理事業を廃止した上で、現行組織を地方共同法人化する。政府出資を廃止するとともに、役員を自ら選任する権限を与え、資金計画に関する国土交通大臣の認可を廃止する。一方、営団は04年4月1日付で特殊会社に移行する。今回の措置は完全民営化に向けた第1段階。新会社は東京都区部とその周辺で、鉄道および付随事業を展開する。都市基盤整備公団、地域振興整備公団、道路関係4公団については現在、組織形態や業務範囲などについて第三者機関などで検討が進められている。
●政府が国会に提出する「構造改革特別区域法案」の全容が明らかになった。希望する自治体が首相の認可を得て、規制を緩和する一括法案の形を取る。各省庁と内閣官房が週内にも最終的な内容を固め、来月8日に国会に法案を提出する予定。2003年4月1日施行を目指す。特区を巡っては株式会社による病院・学校経営への参入がすでに見送られている。残った項目についても省庁は首相が特区を認可する際の条件や、特区ができて企業が参入する際の条件として「・・・に該当する場合」「・・・と認められる場合」との条文を相次ぎ挿入。認可のハードルを上げるとともに、省庁に裁量余地を残そうとしている。
●総務省が発表した9月の完全失業率(季節調整値)は5.4%だった。これは過去最悪(5.5%、昨年12月)につぐ高率で、しかも5月から5ヶ月連続同率。9月の完全失業率を男女別にみると、男性は5.8%で前月にくらべ0.1ポイント上昇し、昨年12月に記録した過去最悪に並んだ。女性は同0.2ポイント低下の4.9%で、5ヶ月ぶりに4%台に戻った。男性は建設業などで中高年層の自発的失業が増える一方、女性は介護・福祉関係などサービス業でのパートタイム雇用が増えたと総務省は説明している。完全失業者数は1年前にくらべ(前年同月比)8万人増の365万人で、前年比増加は18ヶ月(1年半)連続。リストラ・人減らし、倒産、定年、雇い止め(雇用契約満了)など非自発的離職者は158万人で1年前より49万人増。
●石綿(アスベスト)吸引による健康被害について、厚生労働省は24年ぶりに労災の認定基準を見直す方針を決めた。石綿によるがんの一種、中皮腫のうち、これまでは胸膜や腹膜の中皮腫は要件に含まれていたが、心臓を包む膜(心膜)にできる中皮腫を新たに盛り込む方向で検討を進める。石綿吸引による中皮腫の昨年度の労災認定は13件。このうち、胸膜が25件、腹膜が8件だった。
●東証一部上場の中堅プレハブ住宅会社、ニツセキハウス工業と同社の筆頭株主で資材取引面でも関係のある大証二部上場メーカー、寿工業は、それぞれ東京地裁に民事再生法の適用を申請する方針を固めた。負債総額は2社合計で約360億円になる見通し。住宅不況の長期化で業績回復の見通しが立たず、主力銀行のみずほコーポレート銀行からの支援が困難となったため、自主再建を断念する。負債総額はニツセキハウス単体では約180億円、寿工業は約180億円となる見通し。ニツセキハウスは首都圏を中心に賃貸アパートやマンション建設を手掛け、1996年3月期にピークとなる約868億円の連結売上高を計上した。しかし、賃貸アパートなどの販売不振で2002年3月期の連結売上高は約230億円に減少した。多額の有利子負債が重荷になり、同期に81億円の連結最終赤字を計上。7億円の債務超過となった。
●鹿島と鉄建は、資本面での連携を図るため、相互に株式を取得した。両社とJR東日本は、ことし4月から各自の利益増進を図るため、相互に連携を強化している。株式の相互取得は、鹿島が鉄建の発行済み株式総数1億5668万9000株の3.00%に相当する470万株を、鉄建が鹿島の発行済み株式総数9億6131万2000株の0.12%に相当する120万株を取得した。