情勢の特徴 - 2002年11月前半
●2002年9月の全国建設業の倒産は470件、負債総額は1447億6000万円となった。件数は、前月比6.7%減、前年同月比で11.6%の減少、負債額では、前月比26.2%増、前年同月比では7.5%の増加となり、9月としては過去2番目。倒産形態別では、法的倒産が135件(構成比28.7%)。そのうち、民事再生法は13件、破産121件、特別清算1件を占めた。私的倒産では、銀行取引停止処分が287件、内整理48件となった。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が3件、1000万円以上―1億円未満235件、1000万円未満(個人事業含)が232件となった。
●国土交通省の03年度予算の概算要求がまとまった。同省の概算要求は、公共投資関係費として調整費などを含めて国費7兆6753億円(前年度比16.4%増)を計上した。これに義務的経費4230億円、裁量的経費2107億円を加えた要求総額は8兆3090億円となる。03年度は、21世紀型の新たな公共事業関係計画への改革として、所管10本の計画を一本化した「国土交通省社会資本整備重点化計画(仮称)」を策定し、着実な推進を図るとともに、4省庁統合の実をあげるための連携施策を幅広い分野で本格的に展開する。また、民間都市再生の支援など、都市再生特別措置法の円滑な施行にも重点的に取り組む方針だ。
●政府の総合デフレ対策は、経済閣僚会議、経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)などの審議を経て、決定された。不良債権処理の加速とともに、その痛みを緩和する安全網を組み合わせた内容となっている。国土交通省関係では都市再生事業や不動産市場の活性化、所管産業の再生・セーフティーネットなどの施策が盛り込まれた。このうち、都市再生事業では、全国で44ヶ所が指定された都市再生緊急整備地域(1・2次指定)について、指定地域をさらに追加することを検討するとともに、指定地域に対する緊急的・重点的な支援を実施する方針が示された。具体的には、▽民間都市開発推進機構による都市再生支援業務の積極的な実施▽住宅金融公庫による都市居住再生融資および市街地再開発等融資の重点的な実施▽日本政策投資銀行の都市再生関連融資の拡充――などにより、経済波及効果額が約20兆円と試算される民間都市開発投資を誘発させる。また、地籍調査の重点実施による民間都市基盤整備公団の土地有効利用事業の重点的な実施などで、民間事業を後押しする。
●2002年度上期(4月―9月)の全国建設業の倒産は3041件、負債総額は1兆1136億7200万円となった。件数は前年同期比では2.1%の減少となり、年度上半期比較では、歴代4番目。負債額では、前年同期比30.8%の増加となり、年度歴代過去2番目の数字となった。倒産形態別では、法的倒産が構成比27.9%を占めた。そのうち、民事再生法は97件、破産が746件、特別清算6件。私的倒産では、銀行取引停止処分が1906件、内整理268件となった。規模別でみると、資本金階層別では1億円以上が21件、1000万円以上1億円未満1672件、1000万円未満(個人事業含む)が1348件の割合。負債額別では負債10億円以上が133件。従業員数別では、10人未満の零細企業が2279件(構成比74.9%)となった。
●昨年10月に指定業種制が廃止された雇用調整助成金の建設業における最近1年間(01年10月〜02年9月)の活用状況は、労働者の「休業」に対する適用が360社、「教育訓練」に対する適用が4社の計364社となっていることが、厚生労働省の調べで分かった。昨年10月の制度改正から今年9月までの1年間の建設業での活用状況(実施計画受理状況)をみると、「休業」への適用が360社(438事業所)、対象者数7305人、延べ日数4万2342日。「教育訓練」への適用が4社(4事業所)、57人、延べ409日となっている。「出向」への適用は今のところない。これら「一般事業主」としての適用のほか、中小企業経営革新支援法の経営基盤強化計画対象業種、厚労相が指定する地域に所在する事業主、大型倒産等事業主の下請事業主などにも同助成金が適用される。
●厚生労働省は、雇用保険失業手当の保険料率を現在より0.2ポイント引き上げ、1.6%とする見直し案をまとめ、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に提示した。同保険料は、昨年4月に月額賃金の0.8%から1.2%に、ことし10月からは1.4%になったばかり。同改悪案が成立すれば3年連続の改定で 2年あまりで2倍にはね上がることになる。同保険料は労使折半で負担するため、0.2ポイント上がると個人負担は0.1ポイント増え、月収30万円の場合は300円増の2400円となる。また、企業負担ではとくに中小企業への影響は大きく、同保険への未加入労働者の増加や雇用圧縮が心配される。同保険料率の引き上げで年間約3000億円の国民負担増となる。
●坂口力厚生労働相は、じん肺から肺がんを併発した人をすべて労災認定の対象とするため、じん肺法施行規則などを改正する案を労働政策審議会じん肺部会に諮問し、原案通り答申された。来年4月から施行する。現行の基準では、比較的症状の重いじん肺患者が肺がんを併発した場合に労災と認定されているだけで、原則的に、肺がんは補償の対象外だった。しかし、厚労省の検討会が今年8月、「肺がんを併発するリスクは一般の人より高い」として、初めて医学的な因果関係を認める報告をまとめた。