情勢の特徴 - 2002年12月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●東京商工リサーチがまとめた11月の建設業倒産は、453件で前年同月比22.4%の減少となった。負債総額は1470億7200万円となり14.9%のマイナスだが、11月としては過去4番目に多い額となっている。形態別では、銀行取引停止が293件で64.7%に達している。破産が116件、内整理が31件、民事再生法が13件の内訳。法的整理が129件、私的整理が324件となっている。資本金階層別でみると、1000万円以上5000万円未満が216件、100万円以上500万円未満が114件、500万円以上1000円未満が55 件、5000万円以上1億円未満が11件で、1億円以上の階層は4件。100万円以上5000万円未満の中小・零細企業に倒産が集中している姿が浮彫りになっている。
●政府の産業再生・雇用対策戦略本部(本部長・小泉純一郎首相)は、企業・産業再生に関する基本指針を決めた。来年4月にも発足する産業再生機構の債権買い取りでは、対象となる企業に採算の合わない事業からの撤退など厳しい再建計画の作成を求めた。政府は基本指針を踏まえ、産業再生法の改正案と産業再生機構の設置法案を来年の通常国会に提出する。機構が買い取る主な対象は銀行が金利減免などで支援している要管理先債権。基本指針によれば、機構は特定の企業への貸し出しが最も多い主力銀行以外の銀行から債権をまとめて買い取る。当事者を絞り込み、企業の再建策の検討を進めやすくする狙い。機構は追加融資や出資、保証などの機能を活用して企業の再生を後押しする作戦だ。
●国土交通省は「建設業の再生に向けた基本指針」をまとめた。政府の「企業・産業再生に関する基本指針」をもとに、国交省としては@過剰供給構造の是正A再生の確実性B生産性の向上――を独自基準として追加している。建設企業の再生は、不採算部門からの撤廃、縮小と収益性の高い事業部門への経営資源のシフト、本業強化による経営基盤強化、「受注高」から「事業採算性」重視の経営への転換による収益性の向上を進めることを基本とする。この観点から、市場の縮小に対応した事業内容の見直しによる収益力の強化、経営基盤強化のための企業間連携を図っていくことを重要視している。再生支援にあたっては、「企業・産業再生に関する基本指針」で定めている、経常収入が経常支出を上回ることや、有利子負債のキャッシュフローに対する比率などの基準に加え、「事業規模の縮小(縮小傾向にない分野に特化した場合を除く)」「2社以上の企業の経営統合・事業再編」「再生の確実性」「生産性の向上」を独自基準として定めている。
●小泉自公内閣は、2003年度予算政府案を閣議決定した。健保本人三割負担の導入や年金給付の削減、配偶者特別控除の廃止による所得税増税、発泡酒やたばこの増税など、歳出と歳入の両面から国民のくらし、経済・景気を破壊する冷たい内容となっている。一般会計の総額は、今年度の当初予算に比べ0.7%増の81兆7891億円、政策的経費である一般歳出は同0.1%増の47兆5922億円。一般歳出の内訳を主要経費ごとにみると、社会保障費は、高齢化による「自然増」を大幅に削り込み、同3.9%増の18兆9907億円に抑えている。また、公共事業費は、同3.9%減の8兆971億円。ただ、決定した今年度補正予算案の公共投資追加分1兆5000億円を加えると、大幅な増加。一方、不況の深刻化などで税収が大幅に落ち込み、国債発行は21.5%増の36兆4450億円(建設国債6兆4200億円、赤字国債30兆250億円)になった。このため、国債依存度は44.6%と過去最悪。国土交通省関係の概算決定額は総額6兆9299億円で、本年度当初予算に比べ3%減となった。内訳は公共投資関係費6兆3327億円(本年度当初予算比 3%減)、行政経費5972億円(同横ばい)。財政投融資は6兆5351億円で本年度当初予算に比べ30%減少した。政府の「03年度予算編成の基本方針」で掲げられた重点4分野への重点化を進め、予算全体の7割に当たる4兆8532億円を4分野に充てた。都市再生や交通機能の強化につながる大都市圏拠点空港整備は825億円の予算を確保した。
●金融庁は、公的資金を投入した銀行の「経営健全化計画」の履行状況(ことし9月中間期)を発表した。対象23行・グループ中、21行・グループが合計9 兆8000億円も融資を減らした。同庁は減額した銀行に、その理由などの報告を要求、1月中旬から業務改善命令を含めた検討を始める。みずほグループの貸出減は、ことし3月末から9月末までの半年で約5兆600億円にのぼる。三井住友グループは約1兆9000億円、UFJグループは約 8300億円と、実勢ベースで軒並み減少。公的資金を完済している三菱東京グループも、貸出金残高で7500億円減らしており、4大金融グループ合計では 8兆円以上も、中小企業向け融資を減らした。

行政の動向

●東京都千代田区は2003年度から区の建設工事などの競争入札に社会貢献度を加味した評価制度を導入する。入札の参加の格付け評価の項目に@ISO認証取得A男女共同参画社会への貢献B在住区民の雇用――の3項目を独自に追加。国などによる評価基準で算出した基本点に、加算項目を上乗せした合計点で登録企業の順位を付ける。ISOの認証取得などの項目を評価基準に取り入れる自治体はあるが、男女共同参画といった項目を取り入れるのは珍しく、「23区内では初の試み」(区政策経営部)という。男女共同参画では「育児・介護休業法」の基準を上回る制度を設けている企業が対象。区民雇用は区民を10人以上か、従業員の10%以上雇用している企業。区は区内に本店や支店があることや、障害者の雇用を独自の加算項目をして設定している。「社会的貢献度を大きく加味した評価制度により、企業にインセンティブを与えて区が目指す政策の実現を誘導する」(同)という。

労働関係の動向

●厚生労働省が発表した2002年求職者総合実態調査(6月調査分)によると、求職者が40歳以上のケースでは、勤務先の倒産やリストラなど事業主側の都合で離職を余儀なくされて仕事探しを始めた人が、自分自身の都合で離職し転職を希望している人を上回ることが分かった。35〜39歳は自己都合の離職が40.8%、事業主都合による離職が37.8%。40〜44歳になるとこの割合が逆転。事業主都合の離職が42.1%と、自己都合離職(35.5%)を上回る。事業主都合で離職した人の具体的な理由をみると、「人員整理」の全体に占める割合が34.6%でトップ。年齢別にみると、求職者の年齢が39歳までは、人員整理は30%台で推移しているが、40歳以上になると40%台に跳ね上がる。
●総務省は初めて、都道府県別の完全失業率を発表した。目を引くのは15〜24歳の青年層の高い失業率で、全国では9.5%、沖縄では20.8%と5人に1人が完全失業者になっている。全年齢では、沖縄県が全国平均の完全失業率(5.4%)を大幅に上回る9.3%で最悪。以下、大阪府8.6%、兵庫県7.4%と続いている。全国最低は山形県の3.1%。年齢別では15〜24歳層が深刻で、沖縄に続き高知県18.8%、愛媛県16.3%などの四国地域、大都市部では大阪府14.0%が高率。

資本の動向

その他の動向