情勢の特徴 - 2003年1月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●大手銀各行は2004年3月までの今度1年余りで、保有株式の4分の1に当たる約5兆円を売却する。政府は2004年 9月から銀行の保有株を一定限度に抑える規制を導入するが、銀行等株式保有制限法で、2004年9月までに銀行の保有株式を、資本金など「中核的自己資本」の範囲内に抑えるよう義務づけている。昨年9月末現在で、7大銀行グループは合計で約20兆円(時価ベース)の株式を持っている。中核的自己資本の合計を超える約5兆円を2004年3月までに売却する。
●日銀が発表した2002年の貸出・資金吸収動向(速報)によると、都市銀行や地方銀行など民間銀行の貸出残高は425 兆8981億円(年間平均)と前年に比べ4.7%減少した。残高の減少は6年連続。企業の資金需要が低迷しているほか、銀行も信用力も低い企業への貸し出しに慎重になっているためで、貸し出しの低迷が長期化している。2002年12月の民間銀行の平均貸出残高は、前年同月比4.6%減の420兆834億円となり、60ヶ月連続の減少となった。貸出資産の圧縮を進める大手銀行の減少幅が7.2%減と最も大きかったほか、地方銀行、第二地方銀行も減少に歯止めがかからなかった。大手銀の減少幅が大きいのは、自己資本比率を引き揚げるために、貸し出しなどの資産の売却を加速しているためだ。不良債権についても整理回収機構などに売却し、最終処理する動きが続いている。
●特殊法人改革の一環として、国土交通省が20日召集の03年通常国会に提出予定の「住宅金融公庫法および住宅融資保険法一部改正案」の概要が明らかになった。民間金融機関による長期・固定金利の住宅ローンの供給を同公庫が下支えするため、住宅ローン債権の証券化支援業務を実施できるよう、現行法を改正する。証券化支援業務は買取型と保証型の二つで構成。初年度の業務規模は戸数ベースで1万戸、買取金額ベースでは 2000億円を計画。同省は2月中旬までに法案を閣議に諮り、予算関連法案として国会に提出する意向だ。住宅債券の証券化支援業務は「特殊法人等整理合理化計画」に、住宅金融公庫の組織見直しに先行して実施することが明記されている。証券化支援業務を拡大する一方で直接金融業務を縮小し、民間金融機関による長期・固定金利の住宅ローン商品の提供を促す狙いがある。

行政の動向

●国土交通省は、03年度から公共事業の「コスト構造改革」に着手する。07年度までの5年間で「総合コスト縮減率」を 02年度比15%に設定。従来の工事コストの縮減に加え、規格の見直しや事業便益の早期発現、ランニングコスト縮減なども評価対象に入れ、公共事業のコスト構造を抜本的に見直す。本年度末までにコスト縮減に向けた具体策を盛り込んだ「行動計画」と「フォローアップ要領」を作成し、来年度から順次各施策を展開していく方針。
●公共事業関係長期計画の一本化に関連し、9本の長期計画を統合した新計画の根拠法となる「社会資本整備重点計画法案(仮称)」と、現行長期計画の根拠法廃止などを規定する「社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(仮称)」の2法案を国会に提出する。重点計画法案では新計画の対象を道路や鉄道、空港など13分野の公共事業と規定するとともに、計画に民意を取り入れるためパブリック・インボルブメント(PI)の実施を法制化する。一方、関係法律の整備等に関する法律案には関連する6本の緊急措置法の廃止とともに、道路整備費の財源にかかわる措置の5年間延長などが盛り込まれる。
●国土交通省は、都市再生プロジェクトの一つに位置づけられている「密集市街地の解消」を推進するため、市街地整備を促す新制度を創設する。土地への権利変換も認める街区整備の事業制度や、防災機能の確保に着目した都市計画の地区制度などを新たに設けるのが柱。新制度を創設して密集市街区の整備改善を促進することで、狭小敷地に老朽木造住宅が密集している既成市街地の防災機能を向上させる。新制度の創設に関連し、同省は通常国会に、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」(密集法)の一部改正案を提出する。

労働関係の動向

資本の動向

●大林組はビルや工場などのリニューアル(改修)事業部門を2003年度中にも分社化する検討に入った。建設市場が縮小する中、既存建物の改修は安定需要が見込める。ただ新築に比べ受注単価が総じて小さいうえ、夜間・休日に作業するケースも多い。分社化により、本体とは別の賃金・勤務体系で運営した方が得策と判断した。ゼネコン(総合建設会社)では清水建設が、三大都市圏の中小工事に限ってリニューアル子会社を設立しているが、全国規模での全面的な分社化は大林組が初めて。
●さいたま市に本社を有する地場大手ゼネコン、松栄建設(同市桜木町、松栄徳三社長、資本金約2億5000万円、従業員144人)は、東京地方裁判所に関連会社2社とともに破産手続き開始を申し立てた。グループ全体の負債総額は約1850億円で、県内の建設・不動産企業では過去最大の規模となった。ピーク時の91年には約236億円の売り上げだったが、02年3月期は128億円と半減。関連会社の松栄不動産がJR大宮駅西口再開発事業に投資した資金が回収困難になったことなどが響いた。受注比率は、民間元請約43%、民間下請約23%、官公庁約34%。

その他の動向