情勢の特徴 - 2003年1月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●みずほホールディングス(HD)は、今年度中に2兆300億円の大幅な不良債権処理を実施すると発表した。みずほHDは、この結果、2003年3月期の連結最終赤字は1兆9500億円に拡大するとして、一兆円程度の増資要請に踏み切ることを併せて発表した。公的資金注入による一時国有化の道は避けるため、「自力」で不良債権処理の加速をはかる思惑が働いているものと思われる。記者会見したみずほHDの前田晃伸社長によると、引き当て水準の「厳格化」などにより、今年度下半期の不良債権処理額を7200億円増額し1兆7600 億円とする計画。この結果、今年度の不良債権処理は当初予定より9900億円増え、2兆300億円に達している。保有株式の削減も推進する方向で、今年度下期に従来計画を3000億円上回る1兆円の売却を実施するとしている。
●東京商工リサーチがまとめた2002年12月の建設業倒産は、460件で前年同月比0・6%減となった。負債総額は1146億5800万円で76・3%の大幅な減少になっている。倒産形態別では、法的倒産が124件(構成比26・9%)。そのうち、民事再生法が11件、破産は111件を占めた。私的倒産では、銀行取引停止処分が295件、内整理41件となった。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が4件、1千万円以上1億円未満251件、1千万円未満(個人事業を含む)が205件となった。従業員数別では10人夫満の零細企業が355件(構成比77.1%)となった。
●全国建設業協会(前田靖冶会長)は、国土交通省に対し、「ダンピング受注を排除するための当面の対策」を提言し、実施を要望した。提言は入札、契約、施工などの各段階での対策を求めており、入札段階では最低制限価格の事前公表の廃止、辞退自由を認めたうえでの工事費内訳書の提示、低入札価格調査対象業者の公表を実施すべきだとした。契約段階では、低入札価格調査の厳格な運用と同時に調査の実施が困難な場合には最低制限価格への移行、さらには判断基準の明確・細分化を実施すべきだとした。低入札価格調査では、基準価格の引き上げを検討し、その実現までは対象業者に履行保証の付保割合引き上げ、前払金の縮減を科すべきだともした。価格によらぬ競争入札として低価格の2、3社を審査して決める案も提案している。「ダンピング」の定義は引き続き検討することになった。

行政の動向

●国土交通省は、都市基盤整備公団を改編して2004年7月に発足する独立行政法人「都市再生機構」の業務内容を固めた。民間主導の都市再生を支援することが主業務で、新たに民間再開発プロジェクトに対する出資を始める。一方、ニュータウンの開発など他の事業は大幅に縮小する。今通常国会に提出する都市再生機構の設立法案に盛り込む。新法人は、一事業者として民間が都市再開発のために設立した特定目的会社(SPC)に出資したり、再開発のために作った投資組合へ参加したりすることが可能になる。民間プロジェクトの立ち上げを資金面から助けることが狙い。公団はこうした事業が認可されておらず、「民間との連携が十分でなかった」(国交省)という。新法人は山林や原野を整備して宅地として分譲するニュータウン開発からは撤退する。すでに開発が進行中の宅地は分譲するが、未整備の山林や原野は公園などに用途を変え、地方自治体に売却することも検討する。ファミリー向け賃貸住宅の運営・管理業務は続行する。ただ今後の新規事業は原則的に用地整備に特化し、賃貸住宅の建設は民間に委ねる。
●公正取引委員会は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の対象範囲を役務の委託取引にまで広げるため、今国会に同法の改正案を提出する。下請取引での親事業者の優越的地位の乱用行為の未然防止と迅速な排除を目的とした同法は、今のところ適用対象を物品の製造委託と修理委託に限定している。経済のソフト化・サービス化という環境変化を踏まえ、役務の委託取引に関する取引の公正化へ向けた枠組みを確立することが、法改正の狙い。下請法は、下請事業者との取引での親事業者の優越的地位の乱用行為を簡易・迅速に規制するため、独占禁止法の補完法として、1956(昭和31)年に制定された。親事業者による下請代金の支払い遅延や受領拒否、下請代金の減額などの行為を禁止している。下請法で新たに対象とする役務委託は、業務類型として、貨物自動車運送や海上貨物運送、ビルメンテナンスなど事業者が業として役務を提供する「役務提供委託」、放送番組制作やソフトウエア開発、広告制作など事業者が業として成果物の作成を行う「成果物作成委託」の二つに分けられる。建築設計や土木コンサルタント業務などは、成果物作成委託業務に該当し、改正法の適用対象として追加される予定。例えば、建築士事務所が施主から建築物全般の設計業務を委託された場合、構造設計や設備設計を他の事務所に再委託するケースは多いが、同法で禁止される行為を行うと、勧告や罰金などの措置が講じられることになる。
●「株式会社産業再生機構法案」の全容が明らかになった。設立の目的として、個別事業の再生支援によるわが国産業の再生、不良債権処理の促進による信用秩序の維持の2点を掲げた。機構内に設ける産業再生委員会は、3人以上7人以内の委員で構成。再生を図る企業への支援や債権買い取り、債権処分の決定権限を持つ。機構は債権買い取りから3年以内に債権の処分を行うが、その間に事業再生が図られなければ、整理回収機構(RCC)などへの売却、法的整理に移行することになる。同機構を活用した再生ではまず、事業者とメーンバンクが、機構との事前相談を踏まえて再生計画案を作成し、正式に再生支援を申し入れる。主務大臣は、各事業所管大臣の意見を聞いた上で、事業再生の支援や債権買い取り決定に当たっての基準を設定。機構は、支援基準に従い、事業再生の支援を行うか否かを決定する。非メーンバンクに対しては、債権買い取りの申し込み、または対象事業者の事業再生計画に対する同意を求め、再生に必要な債権額に達するだけの回答が集まれば債権買い取りを決定し、回答が集まらない場合には支援決定を撤回する。買い取り決定から3年以内に、▽金融機関や機構による債権放棄、債務の株式化▽事業者のリストラの実施−など事業再生計画を実施。再生が図られた場合は、金融機関や企業再生ファンドへ債権処分を行い、事業の再生が完了する。
●東京都内に7つある都市再生緊急整備地域のなかから、2002年度内にも事業者の提案による「都市再生特別地区(特区)」の申請第一号が誕生する見通しだ。特区に指定されると容積率の緩和など特例が認められる。東京都は現在、十数件の特区申請について事業者から相談を受けており、「02年度末をめどに、民間からの提案(申請)を正式に受け付ける方向」(都市計画局)で検討を進めている。都内で都市再生緊急整備地域に指定されているのは、東京駅・有楽町駅周辺や環状2号線新橋周辺・赤坂・六本木、新宿駅周辺など7地域で面積は計約2370ヘクタールある。
●国土交通省は公共工事を不当に安く落札するダンピングを防止するため、国直轄工事の契約制度を見直す。建設会社が予定価格より大幅に安く落札した場合、工事の実施を取引銀行が保証する「履行保証」の額を通常の三倍に引き上げる。工事代金の前払い金の支払いも安値受注の場合は半分に減らす。早ければ今年度発注分の工事から新制度を取り入れる。履行保証引き上げの対象となるのは、予定価格より25%以上低い価格(全工事平均)で直轄工事を落札した企業。通常の履行保証額は工事請負額の10%だが、これを30%に引き上げる。一般競争入札の対象工事(6億6000万円以上)の場合はすでに30%となっているため動かさない。
●北海道岩見沢市が発注した工事をめぐる談合で、公正取引委員会は、複数の市幹部が談合に関与したとして、官製談合防止法を全国で初めて適用し、渡辺孝一市長に対し改善措置を求めた。公取委は能勢邦之前市長が「談合に関与した疑いがある」としている。公取委は、この措置を会計検査院にも通知。また、談合を操り返していたとして、三井道路(東京都港区)、大成ロテック(同中央区)など主に同市内の計126社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で排除勧告した。公取委によると、1999年4月から公取委が立ち入り検査した昨年5月までの間、同市の建設部、産業経済部、水道部が発注する土木、舗装などの工事の入札に際し、市幹部らの示唆を受けた複数の市職員が、安定的に地元企業が受注確保できるよう、受注する会社を選定。業界団体の岩見沢建設協会と岩見沢管工事業協同組合の各役員らを通じ、受注する会社におおよその設計工事金額を伝えていた。役員は同市OB。市側は各社の過去5年間の平均受注額を算出、各社がこの受注額を達成できるよう、個別工事ごとに受注する会社を決めていた。

労働関係の動向

資本の動向

●政府の構造改革特区推進室が結果を発表した「構造改革特区の第2次提案募集」で、大手・準大手ゼネコン7社が合計16件の特区構想を提案した。建築規制などを緩和する特例を導入し、都心地域などの再生を目指す構想が目立っている。建設市場全体が縮小を続ける中でも、都市再生事業は活発な建設需要が見込める貴重な分野で、構想具体化への期待は大きい。第2次募集で特区構想を提案したゼネコンは、大林組(6件)、大成建設(3件)、ハザマ(3件)、竹中工務店(1件)、西松建設(1件)、フジタ(1件)、安藤建設(1件)の各社。大林組は、都市再生緊急整備地域などを想定地域として、再開発事業などを促進するための構想を5件提案した。公共交通機関の利便性が高い都心部で、オフィスビルの駐車場の付置義務を緩和することで事業採算を向上。市街再開発事業や優良建築物等整備事業の第2次募集で特区構想を補助対象施設を拡大して事業化のインセンティブを高める構想なども打ち出した。

その他の動向