情勢の特徴 - 2003年2月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●平成14年の新設住宅着工は前年比1.9%減の115万1016戸と2年連続で減少し、かろうじて115万台をキープしたが、これは昭和56年(115万1699戸)と同水準である。利用関係別にみると、貸家だけが増加し、2年連続の増加となった。これに対し、持家は3年連続で減少、分譲も2年連続で減少した。工法別にみると、軸組木造(全木造から木質プレハブと2×4を差し引いたもの。ログハウスを含む)は前年比4.2%減で、3年連続の減少となった。50 万戸割れは平成9年から6年連続であり、14年の戸数は史上最低であるが、このまま推移すれば、今年は40万戸割れとなろう。プレハブも同2.7%減で3年連続の減少。16万戸ギリギリは昭和59年(16万2833戸)とほぼ同水準だが、当時は2×4もプレハブに含まれているので実際は59年以下である。在来非木造(非プレハブ非木造。つまり全非木造から非木質プレハブを差し引いたもの。具体的にはRC造、SRC造、重量鉄骨造など)も同0.6%減と微減ではあるが、2年連続の減少。工法別で唯一増加したのは2×4で、同2.3%増と増加に転じた。
●民間信用調査会社の東京商工リサーチが発表した「全国企業業績動向調査」によると、2002年決算で、売上高も当期利益(税引き後の企業利益)も減少した企業が46%と半数近くにのぼっていることが分かりました。調査によると、02年には「増収増益」(前年に比べ売上高も当期利益も増加した)企業は全体の21.3%と、97年に比べ一割減少。逆に、「減収減益」企業は46.5%と97年に比べ1割強増加し、半数近くとなった。これを都道府県別にみると、「減収減益」企業の構成比が50%を超えたのは大分県の54.9%をはじめ、大阪府(54.0%)、茨城県(53.3%)、徳島県(52.6%)、群馬県(52.6%)、秋田県(50.1%)と6府県にのぼる。
●内閣府が発表した2月の月例経済報告は、景気の現状について、「景気は、引き続き一部に持ち直しの動きがみられるものの、このところ弱含んでいる」という前月と同じ表現で基調判断を据え置いた。ただ、景気の先行きについての基調判断は、前月ではなかった「わが国における消費者マインドが弱含んでいること」という懸念要因を新しく加え、「世界経済の先行き懸念」と合わせ、前月同様、最終需要の下押し懸念を指摘している。各論では、個人消費や雇用などの判断を下方修正。個人消費では、前月の「横ばいで推移している」という表現を今月は「おおむね横ばいで推移するなかで、足元弱い動きがみられる」に変更。雇用では、前月の「完全失業率が高水準で推移し」という表現を、今月は「完全失業率がこれまでの最高水準となり」に変えている。

行政の動向

●国土交通省は、平成19年3月31日までに住宅金融公庫を廃止するとともに、住宅資金の融資については、一般の金融機関が貸し付けるのを支援するため、ローンの証券化を通じた保証等の支援を行うことを内容とする、住宅金融公庫法と住宅融資保険法の改正案を通常国会に上程する。平成15年度の予算では、公庫の融資戸数を37万戸に減らすとともに、1万戸分の証券化されたローンを買い取ることになっており、住宅資金融資の民間金融機関への移行が徐々に定着することになりそうだ。住宅金融公庫法等の改正案の主な内容は、公庫の業務として住宅ローンの証券化を支援する業務を追加すること。これによって、買取型の証券化支援業務を15年度から、保証型の証券化支援業務を16年度から実施する。また、公庫は貸付けを段階的に縮小して平成19年3月31日までに廃止されることになり、その後は独立行政法人として、一般の金融機関が住宅資金の貸付けを行うのを支援するほか、証券化支援業務の実施状況や一般の金融機関の貸付けの状況等を勘案して必要な業務を行う。
●自民党長崎県連の違法献金事件で公共工事受注企業からの献金が大きな問題となった今月初めごろ、自民党がゼネコンの業界団体・日本建設業団体連合会(会長・平島治大成建設会長、日建連)に約3億円の献金を要請していたことが、本誌の調べでわかった。自民党からの献金要請について日建連はこれまで、寄付窓口「十日会」の会合で報告。資本金などに応じて会員ゼネコンに割り当てていた。しかし、今年の献金についてはまだ「十日会」に報告しておらず、会員ゼネコンに割り当てる状況にはないといい、事務局で対応を検討している。
●政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)は1月末に会合を開き、第5次都市再生プロジェクトとして、国有地を活用した都市再生事業3件を決定。このうち、大手町合同庁舎跡地(東京都千代田区)を活用した大手町再開発計画は、庁舎跡地に新ビルを建設し、そのビルを起点に同地区内にある老朽化したビルを順次建替える。実現すれば1兆円以上の経済波及効果があるという。今回の第5次では、国有地の戦略的な活用による都市拠点形成として▽大手町合同庁舎跡地の活用による国際ビジネス拠点の再生▽PFI(民間主導の社会資本整備)方式による文部科学省(東京都千代田区)など建て替え事業を契機とした街区全体の再開発▽名古屋市の国家公務員宿舎や市営住宅などの一体的建て替えによる都市拠点形成―の3件が決定した。
●島根県は、公共事業費大幅削減に伴う対策として打ち出した、当面の雇用対策および建設産業対策の方針の初弾として「県内業者優先等の徹底」の具体策を公表した。県内業者受注範囲を、トンネル工事で12億円未満、建築工事で22億2000万円未満に引き上げるなどの措置を講じる。建築工事に限っては、WTO(世界貿易機関)対象工事以外「県外」業者を締め出すかたちになる。また、「県内」業者の合併による優遇措置として総合点数を合併後3年間は20%、4〜5年間は15%加算することなどを盛り込んでいる。3月1日以降に公告または指名する工事などから適用する。
●国土交通省は、老朽化した木造住宅が密集する地域で一定の区画をまとめた共同建て替えを促すため、地権者の3分の2の同意で集合住宅に建て替えられる制度を年内にも導入する。木造住宅の密集地は大都市を中心に全国で約2万5000ヘクタール。老朽家屋が多く、隣家との距離が短く火災などの場合に延焼による被害が広がりやすい。区画整理も不十分で道幅も狭く、住宅地の地価低迷の要因にもなっている。このため国交省は密集市街地の防災強化を促す「密集市街地法」の改正案を今国会に提出。地権者の3分の2が同意し、同意した地権者の所有面積が区画の3分の2以上であれば、建て替えのための組合を結成できる新制度を同法で定める。組合は建て替えに同意した地権者で構成し、反対者の所有する土地も含めた区域全体を対象にした計画を決定する。既存住宅を撤去し、移転先となる集合住宅を建設。集合住宅のうち組合員が居住しない部分を売却し、建設費などに充てる。建て替え前に所有していた土地に応じて区画整理後の空地の一部を提供する。

労働関係の動向

●厚生労働省(坂口力大臣)が示した労働基準法「改正」法案要綱は、労働政策審議会から答申を受けた。新設される解雇規定は、使用者は「労働者を解雇することができる」と、原則解雇自由を明記した。同時に、例外として「客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は権利乱用で無効という、最高裁判決(日本食塩製造事件、1975年4月25日)の内容を示している。解雇をめぐる紛争はこれまで判決によって確立した解雇権乱用法理で判断されてきた。法理は「解雇には正当な自由が必要」(最高裁判所判例解説)というのが原則。法案は、この原則を逆転させている。これまでは、労働者が不当解雇であると主張すれば、使用者は正当な解雇であることを立証できなければ、敗訴する可能性が高かったのが通常。しかし、原則解雇自由では、解雇は権利乱用であることを労働者が立証できなければ、敗訴する危険が大きくなる。
●厚生労働省は、建設業技能21職種を対象とした「02年屋外労働者職種別賃金調査」結果をまとめた。1人1日当たりの平均現金給与額(賃金)は1万4250円で、前年比2.5%減となった。01年の調査結果では0.5%増となったものの、再び減少した。今回の調査結果に基づく主要11職種別の賃金と前年比は、11職種中9職種が前年比減となり、微増ながら増加したのは、とび工と鉄筋工の2職種にとどまった。賃金の最も高い電気工を100とした職種別の賃金格差をみると、鉄筋工が80となっており、他の職種と比べて格差が大きい。年齢階級別にみると、最も賃金の高い年齢層は50〜54歳層で1万5670円。20〜24歳層の賃金(1万500円)を100とした年齢間格差をみると、賃金の最も高い年齢層との格差は約1.5倍で、ほぼ前年並みの格差となっている。
●厚生労働省は、労災保険料率を引き下げ、4月1日から新料率の適用を開始する。過去3年間(99〜01年度)の労災発生状況などを勘案して、各事業ごとに料率を定めているもので、事業もすべて料率が引き下げられる。建設事業の新利率をみると、▽水力発電施設、すい道等新施設=1000分の129▽道路新施設=1000分の29▽舗装工事業=1000分の17▽鉄道または軌道新設事業=1000分の30▽建築事業(既設建築物設備工事業を除く)=1000分の17▽既設建築物設備工事業=1000分の14▽機械装置の組み立てまたは据え付けの事業=1000分の16▽その他の建設事業=1000分の23――となっている。
●総務省が発表した1月の完全失業率(季節調整値)は、5.5%と前月比0.2ポイント上昇し、過去最悪の水準と並んだ。完全失業者数は357万人と3ヶ月ぶりに増えた。家計を支えようと仕事を探し始めた主婦などが増え、女性の完全失業率は5.5%と最悪水準を更新した。世帯主の失業も高水準で、厳しい雇用情勢が続いている。男女別の完全失業率は、男性が前月比0.1ポイント上昇の5.6%。女性は5.5%とそれまでの過去最高だった前月の5.2%から0.3ポイントも急上昇した。失業理由では、勤務先の倒産・解雇などによる失業が121万人と11万人増加した。男性の35〜44歳、55〜64歳が全体を押し上げた。世帯主の完全失業者は104万人と過去3番目の高水準だった。
●厚生労働省は建設業退職金共済の予定運用利回りを現行4.5%から3%以下に引き下げる試案を労働政策審議会の中小企業退職金共済部会に示した。厚労省は、建退共が共済加入者に約束した退職金額の前提となる運用利回りが現行の4.5%のまま推移すると、経済が回復基調に転じても、早ければ2005年度に、遅くても06年度に累積欠損金が生じるとした。そのうえで、財政安定化のためには、予定運用利回りの見直しとその水準は、見直し後5年間を通じて単年度欠損金が生じない水準に設定する必要があるとした。そのため、建退共の財務状況について段階的な運用利回りと経済状況の予測を3段階に分けた試算をもとに、04年度から名目成長率がプラスに転じた場合は2.9%、06年度から名目成長率がプラスに転じた場合は2.7%という、具体的試案を提示した。

資本の動向

その他の動向