情勢の特徴 - 2003年3月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●47都道府県の2003年度の地方債発行額は前年度当初比13.2%増の7兆2,000億円。年度末の残高は71兆5,000億円に達する見込みだ。地方債依存度(歳入総額に占める地方債発行額の割合)は14.8%で、前年度当初に比べて2.4ポイント高まる。地方債依存が高まっているのは、地方税収と国からの地方交付金がともに減っているため。都道府県の基幹税収である法人2税(法人事業税と法人住民税)は景気低迷を映し、前年度より8.1%減少する見通しだ。
●2003年1月の全国建設業の倒産は451件、負債総額は2,315億0,600万円となった。件数は、前月比1.9%、前年同月比では3.4%の減少、歴代件数で過去104番目、1月同月比較としては4番目の数字となった。負債額では、前月比101.9%、前年同月比では69.2%の増加となり、歴代過去8番目、1月としては過去最多を更新した。当月平均負債額は5億1,300万円。倒産原因別では、受注・販売不振が252件、赤字累積83件、売掛金回収難12件の3原因を合わせた「不況型」が347件(構成比76.9%)を占めた。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が3件、1,000万円以上―1億円未満229件、1,000万円未満(個人事業含)が219件となった。従業員別では10人未満の零細企業が351件(構成比77.8%)となった。
●預金保険機構は6日、破たんした金融機関の預金などを全額保護する制度が導入されてから実施した資金援助の実績を公表した。資金贈与した金融機関は168で、総額は17兆9,000億円。このうち、9兆9,000億円は政府から交付された国債を原資としており、国民負担となる。援助先の内訳をみると、1997年に破たんした日本長期信用銀行が約3兆2,000億円で首位。以下、日本債券信用銀行が約3兆1,000億円、北海道拓殖銀行が約1兆8,000億円、木津信用組合が約1兆円と続く。この4金融機関向けを合わせると、全体の51%を占めた。財源は国債発行が最も多く、金融機関からの借入金が約4兆8,000億円、銀行からの保険料収入は3兆2,000億円となった。

行政の動向

●国土交通省は、談合情報に対する発注者の対応などをまとめた「談合情報マニュアル」を改正した。外部からの通報だけでなく、職員が工事費内訳書などで談合の疑義事実を得た場合の処理マニュアルを新たに加えるとともに、工事費内訳書の提示を「提出」に改めた。工事費内訳書は発注者が保管し、証拠書類などとして活用する。「談合をしていない」として誓約書を提出したにもかかわらず、独占禁止法などの違反が発覚した場合、不誠実な行為とみなし、指名停止期間を加重させる措置も盛り込んだ。改正内容は10日から運用を始めた。改正の主な内容は▽工事費内訳書のチェックなどで職員が談合疑義事実を得た場合の談合疑義事実処理マニュアルを追加▽入札取り止めなど特に疑義が強い案件に対する、公取委への提出書類などの規定の明確化▽入札参加者に求めていた工事費内訳書の提示を提出に変更▽追加談合情報、入札取りやめ決定、入札無効決定などを逐次公取委に通報▽誓約書を提出したにもかかわらず、独占禁止法などの違反が認められた場合の指名停止機関の加重措置▽建設コンサルタント業務などに関する談合情報も、マニュアルを準用する―など。
●総務省は、「公の施設」の管理を株式会社など民間業者に開放する、地方自治法の改正案を国会に提出した。出資法人など自治体のコントロールが及ぶ組織に管理の事務・業務を委託する現行の「管理委託制度」を廃止し、民間事業者を含め自治体が指定する機関に管理を代行させる「指定管理者制度」に転換する。これにより、PFI(民間主導の社会資本整備)の事業主体として設立されたSPC(特定目的会社)が一定条件の下で、利用料金の設定を含めた管理を行うことができるようになる。自治法上の「公の施設」とは、「住民の福祉を増進させる目的をもってその利用に供するための施設」のことで、文化ホール、体育館、学校、特別養護老人ホーム、図書館、病院、水道、道路などが該当する。具体的には、各自治体の定める条例によって規定することになっている。現行法で、これら施設の管理を行えるのは、▽地方公共団体の出資法人のうち一定要件を満たすもの(2分の1出資など)▽公共団体(土地改良区など)▽公共的団体(農協、生協、自治会など)―に限定されている。このため、PFI事業者が建設した「公の施設」では、同業者が直接管理業務を受託することができず、清掃やメンテナンス、警備などと同様に業務を受託する形で管理を行うしかなかった。改正法で創設する「指定管理者制度」では、個々の公の施設ごとに、▽指定の手続き▽業務の具体的範囲▽管理の基準―などを条例で規定。条例の定めに従い、議会の議決を経て、期間を設定し、指定管理者を指定することになる。指定管理者は、施設の使用料について、料金の算定方式や上限値など一定の条件のもとに設定し、自らの収入として収受できる。
●国土交通省は、47都道府県と12政令市を対象に実施した予定価格の事前公表実態調査をまとめた。1月現在で、59団体のうち86.4%を占める51団体が何らかのかたちで予定価格を公表していた。事後公表工事と比べ、事前公表工事の落札率の高止まりや上昇はみられないなど、調査結果からは事前公表による悪影響は確認されない、と同省は判断している。事前公表を実施している51団体をみると、対象工事範囲を「すべての工事」「予定価格250万円以上のすべての工事」としている団体が30団体程度あり、かなりの工事で事前公表をしていることがわかった。また予定価格そのものではなく設計金額を事前公表しているのは、岩手、秋田、埼玉、千葉、神奈川、福井、奈良、和歌山、岡山、徳島、香川、高知、長崎、沖縄の各県と千葉市、広島市の16団体で、岡山県は予定価格と設計金額の両方を公表していた。事後公表のみで事前公表していないのは、群馬、新潟、富山、石川、兵庫の各県と横浜市、神戸市の8団体。事前公表を実施した51団体のうち29団体は、わずかながらも(事前公表前と比べ)落札率は低下したと答えている。大きな変化はみられないが、高止まりや上昇はみられなかった。
●都市基盤整備公団は、東京都大田区内の臨海部を対象に土地有効利用事業の候補地探しに着手した。公団が進める土地有効利用事業は、大都市圏の低未利用地を取得・整備し、民間事業者などに売却する。今回の調査は羽田空港の国際化で就業人口が増加することが予測されるため、周辺の低未利用地を都市再生の貴重な種地と捉え、調査を実施している。調査区域は京浜急行線が走る海側の地域で、目ぼしを付けたエリア内の数十か所の用地を対象に、価格水準や事業成立の可能性を検討している。
●国土交通省が今国会に提出する「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(密集法)等の一部を改正する法律案」の都市再生プロジェクトの一つに位置づけられている"密集市街地の解消"を実現するため、都市計画の地域地区に防災機能の確保に着目した「特定防災街区整備地区」を追加。さらに老朽建築物を取り壊し防災性能を備えた建築物に更新する場合に用いる「防災街区整備事業」の創設、防災上重要な公共施設(道路・公園など)の都市計画における施行予定者と事業着手予定時期の明確化などを法律に盛り込む。改正案は、▽密集市街地の防災機能向上に向けた特定防災街区整備地区の創設▽老朽建築物を防災性能を備えた建築物に更新する▽防災公共施設の整備促進を目的とした既存制度の充実―の三つが柱。現行法を改正して再開発事業の実施を後押しすることで密集市街地を解消し、街区の防災機能を高める。

労働関係の動向

●国土交通省は、公共事業労務費調査でモニター方式の本格的な導入に向けた検討を進めている。あらかじめ調査対象企業を選定し、労働者の賃金を定点観測的に調査するモニター方式は、潜かん工、潜かん世話役など、少数職種が主な対象となる。本年度は8職種を対象に調査を試行している。試行結果を踏まえ、調査方法の妥当性を検証し、最も適した調査のやり方や集計方法などを検討していく。将来的には19職種で導入する計画だ。 
●総務省が発表した1月の完全失業率は、女性で過去最悪の5.5%となった。男性も高率の5.6%で、この結果男女合計は前月比で0.2ポイント上昇し、過去最悪に並ぶ5.5%になった。完全失業者数は男女合計357万人で、1年前(前年同月比)より13万人増加した。女性は10万人増の144万人。

資本の動向

その他の動向

●整理回収機構は、経営再建中のハザマの取引金融機関のうち、主力行以外の銀行からハザマ向け債権を買い取る。関係する銀行を減らして、再建計画を円滑に進める狙いがある。ハザマは不振の不動産部門と収益が見込める建築部門の二つの会社を分割し、約2,300億円の連結有利子負債は不動産部門が引き継ぐ方針を1月に打ち出した。建築部門は安藤建設から出資を受けて債権を進める方向。こうした策に不動産部門の債務を回収機構を活用して整理する計画が加わる。一連の再生計画は来週中にもハザマが発表する見通し。
●熊谷組は下請工事会社との間で、原価低減努力で得た利益を折半する新しい契約方式を4月から導入する。従来は元請の熊谷組が受注金額から利益を差し引き、指し値で発注。下請けはそこから利益をねん出する仕組みだった。新方式はトヨタと同じ方式で、下請への利益還元を明確にし、施工方法などの改善提案の活発化をねらう。新方式は主力分野の土木工事に採用する。2003年度にトンネル工事など数件で試行、効果を見極めたうえで、ダムや橋りょうなどの大型工事にも順次拡大する。新方式に伴い下請の選別も進める。技術力などを基準に、主要協力会社を来年度までに4割減の32社に絞り込む。