情勢の特徴 - 2003年3月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●日銀が発表した2002年末の家計の金融資産残高(速報)は前年比1.3%、18兆円減の1,396兆161億円となった。年間減少率は過去最大。年末残高が1,400兆円を下回るのは1998年末(1332兆円)以来4年ぶりだ。内訳をみると、「株式・出資金」が 10、11月の株価下落を受けて前年同期比18%減の86兆3,794億円。「現金・預金」は前年同期比1.4%増の781兆7,119億円。一方、外貨預金や対外証券投資がそれぞれ前年同期比19.3%、52.1%と高い伸びを続けた。
●内閣府は、「国民の意識とニーズ」と題した2002年度の国民生活選好度調査を公表した。それによると、現状の生活に「満足している」との回答は41.3%で、1987年度に現行調査を開始して以来、最低の水準となった。逆に「不満である」との回答は過去最高の26.6%で、政府に対し、「医療と保健」「勤労生活」「収入と消費生活」などの分野で有効な政策を期待する意見が多くあった。また「暮らしよい方向に向かっている」との回答は14.3%。90年度の46.2%をピークに低下傾向をたどっており、長引く景気の低迷を背景に、悲観的な見方が広がっている姿が浮彫りになった。このほか社会資本整備や社会保障の充実に必要な財源をめぐっては、税金などによる個人の負担増を容認する回答が40.6%となり、過去最低水準となった。
●政府が進める「規制改革推進3ヵ年計画」(01〜03年度)の再改定案の全容が25日、明らかになった。公共工事契約の入札で工事の実績や経験を参加資格として定める場合、同等の技術力が要求される民間工事もできる限り扱うようにするほか、地域要件設定のあり方を見直すことなどを盛り込んだ。 また、独占禁止法違反行為に対する抑止力を強化するため、現行課徴金制度を見直すとともに、自ら独禁法違反に関与していることを公正取引委員会に申告し、調査・審査に全面協力した場合、課徴金を免除・減免するプログラムを導入する。政府調達制度の見直しでは、官公需法に基づき毎年閣議決定する「中小企業者に関する国等の契約の方針」で各発注省庁ごとの契約見込み額や前年度実績を公表するほか、中小の受注機会確保を目的に分割発注方式を採用する場合、透明性を確保するために、採用理由を明らかにして公表する。また、民間の技術力を積極的に活用するため、地方公共団体をふくめたVE方式の導入拡大や総合評価方式による発注の積極的推進、さらに、違反行為に対する抑止力強化を図るため、指名停止期間を延長することなども明記した。公共工事に関する履行保証制度の見直しについては、入札時点で入札参加企業にあらかじめ金融機関等による保証を求める制度(入札ポンド)の導入を引き続き検討する。

行政の動向

●国土交通省は、いわゆるダンピング受注防止対策の一貫として打ち出した、低入札価格調査制度(低入札調査)対象案件での技術者の増員措置について、運用方法などをまとめ、3月14日付で各地方整備局に通知した。この措置は、低入札調査案件になった企業が、過去の施工で問題があった場合、専任の監理技術者とは別に同等の能力を持つ技術者を専任させるというもの。運用通知では、増員となる技術者の要件を同種の工事の経験は問わないものの、監理技術者資格証の公布などを受けた技術者としている。4月1日から適用される。技術者の増員措置では低入札調査の対象となった業者が、過去2年以内に竣工した工事あるいは施工中の工事で▽工事成績評定が65点未満の企業▽発注者から請負契約書に基づき補修または損害賠償請求された企業(軽微なものは除く)▽品質管理や安全管理などで指名停止や書面による警告、注意の喚起を受けた企業▽自らに起因して工期を大幅に遅延させた企業―のいずれかに該当した場合に、監理技術者とは別に、同等の要件を満たす技術者を、専任で1名現場に配置するよう求めている。
●国土交通省は、オフィスビルの2003年問題に対処し、都心居住や職住近接を実現する対策として、オフィスビル転用型都心住宅の供給促進に取り組んでいる。具体的には特定賃貸住宅供給事業を活用し、オフィスビルを住宅に改良する場合の補助制度を充実したほか、来年度予算案に住宅市街地の整備に合わせて行うオフィスビルの住宅転用に対し、補助金を交付する新制度を盛り込んだ。また、税制面では、オフィスビルを優良賃貸住宅に転用する場合の工事費について、10%の特別償却を認める優遇措置を来年度から実施する計画だ。建築規制の見直しでは、都市計画上の商業地域、近隣商業地域にあるオフィスビルを住宅に転用する場合に、建築基準法施行令に基づく「採光規定」を特例的に緩和する。
●国土交通省は、土木工事の積算に用いる現場管理費率と標準歩掛かりを改定した。現場管理費率は「河川維持工事」「共同溝工事(2)」「下水道工事(1)」の3工種の率を実態に合った形に引き上げた。一方、土木工事標準歩掛かりは施工実態調査結果を踏まえ、「排水構造物工」や「原動機燃料消費量」など13工種で歩掛かり条件の大くくり化、日当たり歩掛かり化、諸経費率化などを行った。03年度に発注する直轄工事から適用する。間接工事費として扱われる現場管理費は、品質管理、安全管理など工事監理の実施に必要となる経費。具体的には、現場で工事監理を行う従業員の給料手当て、現場労働者の交通費、安全訓練費、現場従業員の法定福利費、下請けの一般管理費などが計上される。一方、土木工事標準歩掛かりは、標準的な施工条件での単位施工量当たりの労務、材料、機械の運転時間などの所要量(歩掛かり)を各工種ごとに示したもの。使用機械の多様化や新技術・新工法の開発などに伴い、施工形態が変化するため、毎年現場の実態調査を実施し、その結果を基に歩掛かりの見直しを行っている。

労働関係の動向

●勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部は、退職金掛金を日額300円から310円に引き上げることを決めた。運用利回りは4.5%から引き下げて、2.5%から3.0%未満とすることを厚生労働省に要望する。2001年末に307億円あった運用余剰金が、06年度末には底をつき、翌年度には47億円の赤字が生じることが確認された。このため、掛金の額を引き上げざるをえないとの結論に至り、金額の調整を進めてきたところ、日額で10円上げるべきだとする検討結果をまとめ、委員会として建退共に提言した。
●厚生労働省が発表した2002年の賃金構造基本統計調査によると、昨年6月時点のパートを除く一般労働者の平均賃金(ボーナス、時間外を含まない所定内給与)は30万2,600円(平均40.1歳)と前年と比べ1.0%減り、現行の調査形式が始まった1976年以降で初めて減少した。背景には、長引くデフレや業績悪化で企業が正社員の賃金水準を抑制しているほか、比較的賃金水準の低い契約社員などを正社員に代わって活用している動きがあると見られる。男性の一般労働者の平均賃金は33万6,200円と前年比1.3%減った。年齢別のピークである50―54歳の平均賃金(41万8,900円)は5年前の水準を下回り、中高年を中心に賃金が目減りしている現状が鮮明になった。
●総務省が発表した2月の完全失業率(季節調整値=隔月を比較できる様調整した値)は、過去最悪に並んだ前月に比べ 0.3%ポイント低下し、5.2%になった。男性が同0.1ポイント低下の5.5%だったのに対し、女性は0.6ポイントと大幅に低下し、4.9%だった。完全失業者数(男女計)は1年前の同じ月に比べ7万人減って、349万人だった。職についている人を表す就業者数は6,193万人で同55万人減。前年同月比減少はこれで23ヶ月連続となる。自営業主・家族従業者の大幅な減少が響いている。
●国土交通、農林水産の両省は、昨年10月に実施した公共事業労務費調査に基づき、工事費の積算に用いる03年度公共工事設計労務単価(基準額)を発表した。03年度基準額は全50職種平均で18,356円で、02年度に比べ3.9%減少した。前年度比マイナスは97年度から6年連続。地域別では、10地区すべて単価が下落。なかでも北海道(前年度比4.4%減)、東北(5.3%減)、北陸(4.1%減)、九州(4.5%減)、沖縄(5.3%減)は前年度比4%以上の減少となった。主要11職種平均の基準額は15,849円。前年度に比べ734円(4.4%減)減少した。11職種のすべてで前年度を下回り、なかでも鉄筋工(前年度比5.1%減)、運転手・一般(4.9%減)、型わく工(4・8%減)。運転手・特殊(4・6%減)、とび工(同)などの減少が目立つ。

資本の動向

その他の動向

●改正ハートビル法(高齢者、身体障害者などが円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)が、4月1日に施行される。建築物のバリアフリー化を促進させるため、一定規模以上の特別特定建築物について、最低限の基準を示した「利用円滑化基準」の適合を義務づけるとともに、同法の対象となる特定建築物の範囲を拡大した。望ましいレベルを示した「利用円滑化基準」の適合認定を受けた特定建築物については、容積率の算定特例や表示制度の導入など支援措置も拡大した。改正内容は▽特定建築物の範囲の拡大▽特別特定建築物の建築などについての利用円滑化基準への適合義務の創設▽努力義務の対象への特定施設の修繕または模様替えの追加▽バリアフリー認定建築物に対する支援措置の拡大▽法律施行に関する事務権限の市町村長への移譲―などが柱。