情勢の特徴 - 2003年5月前半
● 国土交通省が発表した2002年度の新設住宅着工戸数は前年度比2.4%減の1145000戸となり、3年連続で前年度実績を割り込んだ。19年ぶりの低さで、ピークだった1987年度(1728000戸)に比べ34%少ない。種類別では持ち家が前年度比32%減の 365000戸と38年ぶりの低水準。分譲住宅はマンションが4年ぶりに減少し、8.1%減の316000戸に落ち込んだ。
● 2003年3月の全国建設業の倒産は479件、負債総額は1047億1500万円となった。倒産形態別では、法的倒産が134件(構成比27.9%)。そのうち、民事再生法18件、破産115件、特別清算は1件となった。私的倒産では、銀行取引停止処分が306件、内整理39件となった。規模別でみると、資本金階層別では1億円以上が2件、1千万円以上〜1億円末満248件1千万円未満(個人事業含)が229件となった
● 国土交通省は、2003年度建設投資見通しを公表した。03年度は名目ベースで53兆9900億円、前年度比 4・5%減、7年連続マイナスとなっている。うち政府投資は、公共事業費の削減などから前年度を下回る見通しだ。民間投資も、店舗の好調な伸びなどで非住宅建設投資が7年振りにプラスに転じると予測しているものの全体ではマイナスになる見通しだ。実質ベースの建設投資見通しは、56兆1600億円、 4.0%減で、名目ベースを2兆1700億円上回った。名目ベースの内訳は、政府投資が、22兆8600億円、8.4%減で、5年連続のマイナス。減少要因として、03年度当初予算の国の一般公共事業費が3.9%減、地方単独事業費が5.5%減と減少することなどをあげている。 民間投資は、31兆 1400億円、1.4%減で、7年連続のマイナス。このうち住宅は、17兆4800億円、2.5%減で、建築コストの低下などプラス要因はあるが、雇用・所得環境の厳しさが続くことが見込まれることから減少を予測している。着工戸数は前年度の110万戸台半ばを若手下回るとみている。土木を含む非住宅は、企業の設備投資が緩やかな回復へ向かうとの見涌しから、前年度並みの13兆6600億円、0.1%増で、7年ぶりのプラスを見込んでいる。
● 国土交通省は、社会資本整備重点計画骨子案をまとめた。これまでの分野別の5カ年計画9本を1本にしたもので、計画期間は2003年度から5年間とするとともに、予算の硬直化を防ぐ意味から総事業費などの具体的な数値は盛り込まれていない。地方分権の徹底、地域特性・民間活力活用への配慮を基本理念に、アウトカム(成果)目標に重点をシフトしている。計画最終年の07年度には成果を評価したうえで次期計画に反映させる。従来、建設省と運輸省が所管していた道路、交通安全施設、空港、港湾、都市公園、下水道、治水、急傾斜地、海岸の9分野別に、それぞれ5カ年計画があったが、新しい社会資本整備重点計画は、道路、交通安全施設、鉄道、空港、航路標識、公園・緑地、下水道、河川、砂防、地すべり、急傾斜地、海岸を対象に策定される。事業の効果を最大限にするために、一体的に実施される事業やソフト施策も盛り込まれる。
● 不良・不適格業者の情報をデータベース化し、公共発注機関などがその情報を共有化する「不良・不適格な建設業者に係る総合的な情報交換システム」が7月上旬にも稼働する。不良・不適格業者の排除を目的にしたもので、稼働当初の情報提供機関は、国土交通省、公正取引委員会、厚生労働省のほか、新たに東京都、大阪府も加わり、監督処分、排除勧告、労働安全衛生法違反などの情報共有を図る。その後、2003年度中には残りの道府県、政令指定都市、04年度中には市町村まで拡大する方針だ。将来的には、警察庁、法務笥検察庁、裁判所などにも参加を呼びかけていく。
● 厚生労働省は、吸入により呼吸器障害の一種である石綿肺を引き起こしたり、肺がん、中皮腫(しゅ)の発生要因となったりする石綿(アスベスト)の使用を原則禁止する。石綿を取り扱う労働者の健康障害を防止する観点から、メーカー・ユーザー団体に対する調査や学識経験者による委員会での議論を通じ、代替の可能性を検討。押出成形セメント板などの建材や、断熱材用接着剤などの非建材は、必ずしも石綿の使用が不可欠でははなく、技術的に代替化が可能であるとの結論を得た。同省は検討結果を踏まえ、労働安全衛生法施行令を改正する。