情勢の特徴 - 2003年6月後半
● 政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)は、都市再生特別措置法に基づく「第3次都市再生緊急整備地域」として、▽さいたま新都心駅周辺地域▽柏駅周辺地域▽川崎駅周辺地域−など9地域、368fの指定を決めた。これら緊急整備地域では、既存の都市計画規制を適用除外とする「都市再生特区」の設定や、民間都市開発推進機構(民都機構)による金融支援など、民間プロジェクトに対する支援が行われる。
● 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(「骨太の方針」第3弾)を決定した。「骨太の方針」は、「経済活性化」など3つの宣言と不良債権処理の加速をはかる「資金の流れと金融・産業再生」など七つの「改革」で構成。小泉内閣が今回の目玉″としようとしている国庫補助負担金の削減と地方交付税の見直し、地方への税源移譲を同時に進める「三位一体の改革」では、国庫補助負担金の削減目標を約4兆円とし、税源移譲の目安をその8割とすることなどを打ち出した。社会保障や教育など国民生活関連に削減の標的をおき、国の負担を減らそうとするもの。規制緩和では、財界などが求めていた病院経営への株式会社参入の解禁や一般小売店での医薬品販売などに道を開いた。社会保障では、年金受給者も含め給付額を自動的に引き下げる仕組みを導入し、支給開始年齢見直しを検討。すべての高齢者から保険料を徴収する新しい高齢者医療制度の創設など「抜本改革」推進をうたった。「税制改革」については、2006年度までに「財政事情を踏まえ、必要な税制上の措置を判断する」と明記。消費税率の引き上げを含む増税に道筋をつけている。
● 東京商工リサーチがまとめた2003年5月の建設業倒産は、474件、負債総額は1,392億2,500万円となった。件数は、前月比3.4%の増加、前年同月比で13.6%の減少、500件割れは7カ月連続。負債額では、前月比27.1%、前年同月比では18.0%の増加となり、5月としては過去2番目となった。倒産形態別では、法的倒産が151件(構成比31.8%)。そのうち、会社更生法1件、民事再生法25 件、破産125件となった。私的倒産では、銀行取引停止処分が282件、内整理41件となった。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が6件、1千万円以上−1億円未満256件、1千万円未満(個人事業含)が212件となった。
● 社会資本整備審議会住宅宅地分科会(分科会長・八田達夫東大教授)は、住宅政策のあり方に関する建議案の中で、新たな基本理念の実現に向け検討するべき施策を提示した。検討項目に挙がった施策を見ると、新規供給・公的直接供給重視から市場・ストック重視に住宅政策の基軸を移す過程では、住宅税制、住宅金融、市場形成の3分野で良質なストックが形成、管理、流通するような市場活用型の施策を講じる必要があると提言。このうち住宅金融については、競争的な市場環境の中で住宅資金を消費者が安定的に調達できるようにするため、住宅金融公庫の直接融資の縮小に合わせ、ローン債権の証券化手法の定着と拡大に関する施策と、消費者利益の保護と金融面でのセーフティーネット構築に関する施策を具体化するよう求めている。住宅セーフティーネットの再構築では、公営住宅のストック管理を抜本的に見直す必要があると指摘。入居者資格審査に保有資産のチェックを盛り込むなどして、公営住宅の入居者選別を厳しくすること、入居資格の収入超過者に対する家賃を民間賃貸住宅と同水準に引き上げることなどを検討課題に挙げた。
● 全国建設業協会(全建、前田靖治会長)は、ダンピング受注を排除するための最終提言をまとめた。提言では、一般競争入札の導入を背景に、価格が安いという理由だけで受注者を決める現行のシステムが、受注することだけを目的とした低価格による受注を増やしていることを問題視。不健全な競争市場が結果として、丸投げなど不適正な施工、下請企業へのしわ寄せなど諸問題を引き起こしていると指摘した。受注業者を選定するに当たっては、価格による競争を行うと同時に、企業の持つ技術力、経営力、社会的信頼性を総合的に評価する仕組みづくりの必要性を示唆。技術力については、工事実績、工事成績、技術者の能力などを評価内容に挙げた。社会的信頼性では、社会保険への加入など義務の順守、社会貢献度を評価。また、施工に必要な経営力を適切に評価するための手法として、ボンド制度の導入を提言した。
● 建設経済研究所は17日、03年度の名目建設投資を前年度比4・7%減の53兆8818億円、04年度を同3・4%減の52兆0708円とする建設投資見通しを発表した。03年度の建設投資の内訳をみると、政府建設投資は、前年度比8・8%減の22兆7531億円となる見込みだ。民間住宅投資は、同1・8%減の17兆6072億円となる見通しで、新設着工戸数は112万9000戸と予測している。民間非住宅建設投資は、同0・9%減の13兆5214億円と予測している。04年度の政府建設投資は、前年度比6・2%減の21兆3336億円となる予測だ。民間住宅投資は 0・7%減の17兆4760億円(新設着工112万2000戸程度)、民間非住宅建設投資は1・9%減の13兆2612億円と予測した。今回確定した02 年度の実績値は、政府建設投資が前年度比10・2%減の24兆9500億円、民間住宅が3・5%減の17兆9300億円、民間非住宅建設投資が5・7%減の13兆6400億円となった。
● 家計の金融資産残高が4年ぶりに1400兆円を割り込んだ。日銀がまとめた資金循環統計によると、2002年度末の残高は1378兆円で前年比1・9%の減少。所得の落ち込みや株価低迷で減少幅は過去最大となった。家計の金融資産残高の減少は3年連続。1999 年度末の1428兆円をピークに減り続けている。景気の長期低迷や企業の人員削減・賃金抑制などで、家計の所得が減少傾向をたどっているため。大幅な株安で株式保有額も減った。全体の金融資産残高が目減りするなか、資産構成には偏りが生じている。2002年度末で家計の現金・預金は7075兆円。全体の 56・2%を占めた。一方、株式・出資金の構成割合は5・9%と、過去最低を更新した。
● 国土交通省は、2002年度の下請代金支払状況等実態調査結果にもとづき実施した立入調査の結果をまとめた。大臣許可業者である287社の営業所と18社の工事現場の計305社を対象に立入調査を実施した。書面による契約が締結されていない、手形期間が120日を超過しているなど、元下関係が不適切なケースがみられ、立入調査時に指導・助言した。また、305社のうち50社には元下関係適正化のための改善状況の報告を書面で求めたほか、各地方整備局などが73社に対して、建設業法にもとづいて文書により勧告した。
● 労働基準法の改悪案が26日の参院厚生労働委員会で、自民、公明、民主、自由などの賛成多数で可決された。改悪案は @契約社員など有期雇用の契約期間の上限を1年から3年に延長する(専門職などは3年から5年に)Aいくら働いても労使で決めた時間しか働いたとみなさない「裁量労働制」を本社部門以外にも拡大し導入要件も大幅に緩和する−の2本柱。正社員を契約社員などに置き換える動きを加速し、異常な長時間労働とサービス残業のいっそうの増大をもたらすもの。
● 失業者を一時的に公的部門で受け入れる政府の「つなぎ雇用」事業の雇用者数が2002年度に、計画を4万人上回る 18万人に達した。つなぎ雇用の終了から約半年間に「1回以上就業」した人は約6割いた半面、新たな職に一度も就いていない人が35%いたことも分かった。つなぎ雇用は2001−02年度補正予算に盛った雇用の安全綱の柱。「緊急地域雇用創出特別交付金」として計4300億円を計上、都道府県に交付済み。各自治体はこの交付金を原資に2004年度末まで森林整備や放置ゴミの撤去など新たな公共サービスで失業者を雇う。民間企業などへの委託も可能で、雇用期間は原則6カ月。2002年度は1350億円を投じ、約1万6000事業で18万人を雇い入れた。2003年度は1400億円を使って1万3000事業で14万人の雇用を受け入れる計画だ。
● 総務省が発表した労働力調査によると、5月の完全失業率(季節調整値)は5・4%で前月、前々月と同水準だった。完全失業者数も1年前と同じ375万人で、雇用情勢は厳しい状態が続いている。年齢別では依然として15―24歳の若年層の失業率が高く、男性は 12・3%、女性は9・8%。学校を卒業しても就職できていない「学卒未就職者」は同2万人増加の26万人だった。就業者数は6360万人で前年同月より4万人増加しました。このうち雇用者は5351万人で同30万人増加。ただ、自営業主・家族従業者は同21万人減の986万人で、40カ月連続で減少が続いている。