情勢の特徴 - 2003年7月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 自治体と民間が出資する株式会社、第三セクターの経営不振が首都圏と近畿圏で深刻になっている。日本経済新聞社の調査によると、2003年3月期末に累積欠損金が百億円超の21社では、累損総額が約5千405億円と前期比約461億円膨らみ、同9.3%増となった。累損額が多いのは、東葉高速鉄道(千葉県)や北総開発鉄道(同)などニュータウンや臨海部の鉄道運営会社と、アジア太平洋トレードセンター(大阪市)や東京臨海副都心建設(東京都)など臨海部の商業・業務施設の開発・運営会社。前3月期に最終損失が最も大きかったのはテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営するユー・エス・ジェイ(大阪市)で約93億円。埼玉高速鉄道(埼玉県)は設備の償却負担が重く、赤字額は前年より2億円多い約90億円になった。鉄道など初期投資がかさむ事業もあるが、バブル期の過大な投資計画や甘い収益見通し、官民もたれ合いによる経営責任のあいまいさが傷口左広げる要因になっている。
● 住宅ローンの返済が困難になる人が急増している。住宅金融公庫でローンの返済期間延長や毎月返済額の減額措置を受けた人は2002年度に25,570 人と、前年度より77%増えた。返済が困難になった人を対象に返済期間を延長する制度は1998年度から始まった。初年度は2400人の利用にとどまったが、2002年度にはほぼ10倍に増えた計算。累計の利用者は6万人を上回った。ローン返済の滞りは、完全失業者数の動きとほぼ連動している。2002年度の完全失業者数は384万人と2年連続で増加し、過去最高を更新した。ローン返済が困難になった利用者の数もこれに連動するように膨らんでいる。
● 日本建設業団体連合会(平島治会長)、日本土木工業協会(梅田貞夫会長)、建築業協会(野村哲也会長)3団体の都市再生特別委員会(葉山莞児委員長)は、都市再生の一層の促進へ向け、重点事業化、規制緩和による需要創造などを骨子とする提言をまとめ、政府の都市再生本部に提出した。具体的には、都市再生推進として、首都圏3環状道路や羽田空港再拡張など基幹的インフラを民間投資活性化のための先導事業と位置付け、2003年度予算での重点配分を求めた。さらに民間都市開発投資促進へ金融面での支援策拡充、税制面の優遇措置、制度上の規制緩和など民間供給側にとっての活力強化策を打ち出す一方、外国企業誘致など需要の創造実施策を盛り込んだ。また、都市再生を効果的に展開させるために▽都市再生事業の整備スケジュール明示▽施策のモニタリングと施策効果の評価・公表▽都市再生の意義・効果の地方公共団体への浸透▽情報の積極的開示―を提示した。
● 2003年6月度の全国建設業の倒産は459件、負債総額は1120億0600万円となった。倒産原因別では、受注・販売不振が286件、赤字累積58件、売掛金回収難13件の3原因を合わせた「不況型」が357件(構成比77.7%)を占めた。倒産形態別では、法的倒産が141件(構成比30.7%)。うち、民事再生法12件、破産129件となった。私的倒産では、銀行取引停止処分が277件、内整理41件となった。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が3件、1千万円以上〜1億円未満261件、1千万円未満(個人事業含)が195件となった。
● 建設経済研究所の調べでは現在65歳以上のお年寄りが住んでいるすべての住宅を、バリアフリー対応に改修した場合、手すりの設置と浴室の改造、段差の解消という三つに絞って工事を行っても、その市場規模は4兆4692億円に達することが分かった。また高齢者世帯分の増加に合わせて必要になる改修費用も、年間1145億円に及ぶという。

行政の動向

● 国土交通省官庁営繕部は、「工事仕様書の性能規定化および体系の再構築検討委員会」を設置、民間企業の技術力を活用し、コスト縮減や施工品質の向上を図るため、要求性能や品質を明確に示す性能規定の導入について、03〜04年度の2カ年で検討する。検討委では、工事仕様書の性能規定のあり方として、▽性能規定の定義▽現行仕様書の分析▽性能規定の問題点整理▽性能規定導入検討−などを議論。導入に当たって必要となる評価手法も検討する。仕様書の性能規定化により、要求性能・品質が明確になり、工事での新技術・新工法の導入が容易になる。その結果、民間での技術開発が促進され、技術力・競争力の向上とともに、コスト縮減を図ることが期待される。
● 公共事業の入札で、予定価格に対する落札価格の割合(落札率)が、大半の自治体で談合の可能性があるとされる90%台となっていることが、日弁連が30日発表した都道府県・政令市を対象にした入札制度改革に関するアンケート結果で分かった。平均落札率が最も低いのは長野県で75.5%。次いで宮城県の79.5%だった。日弁連は「入札改革はまだ不十分。談合を防止するところまでいっていない」としている。
● 栃木県の福田昭夫知事は30日、事業費310億円を予定していた県営東大芦川(ひがしおおあしかわ)ダムの建設中止を発表した。同知事は「河川改修で治水効果が図られる。利水などの確保は国営の南摩ダムで対応する」と中止の理由を説明した。県の代替案は、70億円かけて三段階の河川改修を実施、鹿沼市への水は南摩ダムから供給するなどとしている。
● 国土交通省は公共工事入札契約適正化促進法の対象となる国、国交省所管の特殊法人について、2006年度末までに入札監視委員会など第3者機関の設置を100%に引き上げる。調査の結果、01年度末は75%で、29日に公表した02年度の政策評価年次報告書で明らかにした。入札時に工事費内訳書の提出を義務付けている機関の割合も06年度までに、01年度末の56%から80%まで引き上げる。

労働関係の動向

● 国土交通省は、02年度「建設技能労働者の就労状況等に関する調査」の結果をまとめた。調査結果によると、過去3年間に教育訓練を「受けた」と回答した労働者は45・4%で、「受けていない」の54・6%を9・2ポイント下回った。教育訓練の内容は、「資格取得のための訓練」が47・2%と最も多く、次いで「安全衛生教育」の34・2%、「職長になるための訓練」の25・0%が続いている。また、教育訓練を受ける必要性については、「強く思う」と「思う」の合計が50.8%と大半をしめている。希望する教育訓練は、「資格取得のための訓練」(46・3%)「今の技術水準を向上させる訓練」(36・3%)、「新しい工法を修得するための訓練」(22・3%)などが多く、このほか施工管理の教育、安全衛生教育、職長になるための訓練、多能工の訓練などへのニーズもある。
● 経済産業省は「人材ニーズ調査中間報告」を発表した。調査はことし5月に実施し、1万6700社が回答している。企業がいま採用を見込んでいる人数(新卒を除く)は約280万5千人で、前回(1999年)調査から約13万3千人増加しています。ところが、雇用形態別にみると、正規社員は40.0%で前回比6.7ポイント減少している。一方、契約社員・嘱託社員は14.1%(前回比5.2ポイント増)、派遣は3.5%(同0.7ポイント増)となり、アルバイト・パートは前回から1.1ポイント減ったものの27.9%と依然として高率だ。雇用戦略について、従業員数 300人以上の企業1683社にたずねたところ、新規学卒者採用を「縮小方向」が35.4%、中途採用を「縮小方向」が30.5%に対して、契約社員・派遣労働者活用を「拡大方向」が37.2%、臨時・季節・パート労働者活用を「拡大方向」が38.7%という結果が出ている。
● 総務省が29日発表した労働力調査によると、6月の完全失業率(季節調整値)は5.3%(前月比0.1ポイント低下)、完全失業者数は361万人(前年同月比7万人滅)で、依然高水準を続けている。完全失業率を男女別にみると、男性は5.7%で前月より0.1ポイント悪化(上昇)した。特に15〜24歳層では12.2%で、新卒者の多い3月に14.6%を記録した以後、4〜6月と3ヵ月連続で12%台の高率を続けている。女性は4.8%で前月より0.3ポイント低下した。就業者数は6411万人で前年同月比38万人増と、2カ月連続で増加した。
● 建設業退職金共済事業本部は今年10月1日付で独立行政法人に移行するのに伴い、提出を義務付けられている中期計画の素案を示した。建退共の場合、中期計画のたたき台となる厚生労働省から示された中期目標案として、事業の改善策が打ち出されており、具体的改善へ向けた対応が中期計画の大きな柱となりそうだ。中期目標案には建退共事業適正化として、@就労日数に応じた掛金納付確保A長期未更新者に対する退職金の確実な支給B共済証紙による掛金納付方式の見直し―が盛り込まれた。これに対し勤退共・建退共は中期計画素案として、現場の運用、加入者の在籍状況、制度に対する意識調査などそれぞれ実態調査を行うことを明記。さらに共済契約者などに対する指導徹底として、直近の共済契約者管理データを把握するためのシステム確立を含む具体的対応策を盛り込んだ。また、新規加入時に建退共から直接本人に制度加入通知を行うなど新規対策も打ち出した。

資本の動向

● 民間信用調査機関の帝国データバンクは、主要建設会社100社の02年度決算情報を基に、連結ベースの有利子負債の実態を分析した。その結果によると、100社合計の02年度(02年4月期〜03年3月期)有利子負債額は7兆1447億円で、前年度の8兆5062億円に比べ、1兆3615億円、16.0%減少した。有利子負債が減少したのは、「フジタ、長谷工コーポレーション、三井住友建設、新井組の4社が会社分割や債権放棄といった再建スキームを立案・実行し、金融支援を受けたため」(同社)。4社合計の有利子負債減少額は1兆円を超えており、抜本的な再建策が講じられた建設会社を除くと「有利子負債額は高水準であり、削減ペースも緩慢であると言わざるを得ない」と指摘している。有利子負債の内訳を見ると、長短借入金合計が6兆3235億円(前年度比16.2%減)、社債・転換社債が5494億円(同15.1%減)、コマーシャルペーパーが1625億円(同 22.7%減)となった。 帝国データでは、会社分割による債務分離が準大手クラスで予想されていることなどを理由に、有利子負債の減少傾向が本年度も続くと予測。その一方で、「過大な金融債務が経営問題化している建設会社は多く、有利子負債が不良資産・債権問題

その他の動向