情勢の特徴 - 2003年8月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 厚生労働省が5日発表した2002年の雇用動向調査によると、昨年1年間に仕事を辞めた離職者は682万人に上る一方、新たに仕事を始めた就職者は597万人にとどまった。9年連続で離職者が就職者を上回り、その差は85万人で3年連続で拡大。2002年の離職者数は前年に比べ19万人減ったが、離職者のうち景気低迷による企業倒産や解雇など「経営上の理由」で離職した人は全体の12.3%と前年比0.3ポイント拡大した。この割合は過去最高の水準だ。一方、転職など「個人的理由」で仕事を辞めた人の割合は下がった。企業のリストラ圧力は依然強く、雇用情勢が厳しいなかで、転職したくても仕事が見付からないことを恐れ、元の職場にとどまる人が増えていることがうかがえる。年齢階層別で離職率が最も高いのは19歳以下で 33.8%。ほぼ3人に1人が仕事を辞めた計算。20−24歳も25.4%と高水準となっている。一方、就職者も前年比で29万人減り、企業の採用姿勢は厳しい。就職者に占めるパート労働者の割合は35.8%に達した。
● 国税庁は1日、2003年分の相続税や贈与税の算定基準となる路線価(1月1日現在)を全国の国税局、税務署で公表した。全国約41万地点の標準宅地(住宅地、商業地、工業地)の路線価の平均額は前年より8千円安い1平方メートル当たり12万1千円で、11年連続で下落した。下落率は6.2%で前年の6.5%から縮小した。圏域別でもすべて下落。下落率は東京圏で1.2ポイント大阪圏で0.7ポイント、名古屋圏で 0.5ポイントそれぞれ前年より縮小したが、地方圏は7.7%と2.0ポイント拡大した。47都道府県別でもすべて下がったが、下落率2.6%の東京を含め、下げ幅が縮小したところが前年の10都府県から13都府県に増加した。
● 金融庁がまとめた2003年3月末の民間金融機関の不良債権の状況が明らかになった。銀行から信用組合までを合計した不良債権残高は44兆5千億円で、前年同月を7兆9千億円下回り、3年ぶりに減少した。業態別では大手銀行が前年同月に比べ7兆7千億円減った。これに対し地銀と第二地銀を合計した「地域銀行」は同2千億円、借用金庫や信用組合などは同千億円しか減らなかった。地域金融機関は景気悪化で地域経済を支える中小企業向けの不良債権化が増えたことから、不良債権額が高止まりした。
● 金融庁は、公的資金による資本注入を受けている合計15の銀行とグループに、2003年3月期の収益が目標値を大幅に下回ったことを理由に業務改善命令を発動した。29日までに収益改善に向けた新計画の提出を求め、4半期ごとに実施状況を点検する。同庁は2004年3 月期決算で最終赤字から脱せないなど収益が回復しない銀行にはトップの退任など、より厳しい対応を求める方針だ。改善命令を受けたのは大手銀行5行と地方銀行・第二地銀10行。いずれも1998年に成立した金融早期健全化法に基づき公的資金による資本注入を受けた。同法は収益目標を含む経営健全化計画の達成を求め、必要なら銀行法による行政処分を認めている。15行のうち12行は前3月期に最終赤字、残り3行も最終利益が目標を3割以上下回ったため、この規定を初めて適用した。
● 政府は1日、2004年度予算の概算要求基準を閣議了解した。一般歳出は、2003年度予算の概算要求基準と同額の 48兆1000億円で、本年度当初予算を5100億円上回った。同基準を踏まえ、各省は8月未までに概算要求を行う。各省の政策的判断による「裁量的経費」は、前年度と同額を確保する科学技術振興費を除き、本年度当初比2%減の5兆4000億円。また「公共投資関係費」は同3%減の8兆6000億円。制度・法律に基づく「義務的経費」は、社会保障関係費や人件費の増加などから、同8800億円増の34兆1000億円とした。公共投資については、費用対効果分析など客観的な評価による採択の必要性の検証、再評価による継続事業の見直しを徹底することで、事業の厳格な選択を行う。また、既存ストックの有効活用、事業間の連携の強化、民間委託や民間資金等活用事業(PFI)の積極的活用、執行段階での競争促進や単価の適正化、電子入札の拡大、集中投資による事業期間の短期化を図る。これら取り組みにより、財政資金を効寒的に使用することで、事業量を確保する。
● 銀行の中小企業向け融資が小泉内閣のもとで、47兆6千億円も減少している。日銀が発表した6月末の貸出先別貸出金調査(国内銀行、3ヵ月ごとに調査)によると、中小企業向け貸出残高は185兆7722億円で前年同月末と比べ8.2%減少した。これを小泉内閣が発足(2001年4月26日)する前の2001年3月末の残高233兆3751億円と比較すると47兆6029億円の減少となる。
● 内閣府が発表した2003年4-6月期の「GDP速報(一次速報値)」によると、同期の国内総生産(GDP)は、生産額を時価表示した名目で前期比0.1%増(季節調整済み)となる。一方、物価変動の影響を除く統計上の処理をした実質では同0.6%増となった。今期のGDPの増減を需要項目別にみると、最大の需要項目である個人消費(民間最終消費支出)は、名目で同0.2%減(実質で0.3%増)とマイナスになる。個人による持ち家やマンションなどの購入費用(土地代を除く)を示す民間住宅は、名目で0.6%減(実質で0.4%減)で、名目、実質ともマイナスになった。民間企業の設備投資(民間企業設備)は、名目で0.5%減(実質で1.3%増)。国内需要(内需)を構成する個人消費、民間住宅、民間企業設備の三大項目がいずれも名目でマイナスになっていることが特徴である。

行政の動向

● 政府は、民間企業の事業費削減の手法を国の公共事業に全面導入する。政府は八月一日に閣議了解する2004年度の概算要求基準で公共投資関係費を今年度予算比で2700億円減らす。トヨタ白動車など先進的な企業で普及しているコスト削減ノウハウで事業費を1000億円超減らした中部国際空港の手法を国にも導入する。入札談合への損害賠償請求は、契約金額の一割を違約金として国に支払わせる仕組み。国土交通省が6月から先行導入、農水省も導入を決め各地の農政局に伝えた。8月1日以降の工事契約から順次特約条項として盛り込む。公共工事に使う資材価格も見直す。これまでの公共工事は、国交省所管の二つの財団法人が調査した資材価格をもとに「机上の計算」(大手メーカー)で予定価格を割り出していた。実際の落札金額はこの予定価格に近い金額に決まるケースが少なくない。しかし「財団の価格調査は資材価格の変動に追いついていない。そのまま採用すればコスト高の工事になる」(大手メーカー)との見方が根強い。中部空港は担当者が資材メーカーなどから最新の価格情報を得て、財団調査よりも安い価格での資材調達に成功した。農水省は中部空港と同じように、財団調査を伴わない手法の検討に入った。
● 日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会は、地方自治体の予定価格と落札価格の比率、いわゆる落札率を含めた「入札制度改革調査報告書」をまとめた。調査は、2002年10月に実施、千葉、兵庫、和歌山、佐賀を除く43都道府県、札幌、北九州市を除く10政令市が回答した。平均落札率がもっとも低かったのは、長野県の75.5%で、宮城県79.5%、神戸市82.6%と続いている。報告書では、長野、宮城両県の、入札制度改革前と改革後の落札率の変化に対して、「100社以上の業者が入札に参加可能となると、談合は困難になって、15%ないし20%程度落札率が下がると推定される」とした。
● 水資源開発公団は8日、岐阜県藤橋村に建設中の徳山ダムの建設事業費を、これまでの2540億円に1010億円も上積みし、総額3550億円(約1.4倍)にすると発表した。関係する岐阜、愛知、三重各県と名古屋市はさらにばく大な事業費追加負担をすることになる。公団側の説明では、これまでの事業費2540億円(1985年度単価)は、本体盛立の進ちょく率約12%、洪水吐きコンクリート打設同37%という現在の工事進ちょく段階でほとんど使い切っており、今年度末で約90億円を残すだけになるとしている。事業費増額の要因については、「物価の変化」によるものが241億円、「環境保全など社会的要請」219億円、「設計・施工計画の変更」170億円などと説明している。

労働関係の動向

● 日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)が昨年11月に組合員を対象に実施した「時短アンケート」の結果によると、外勤者の所定外労働時間は2000年度に大幅に増加して以降、3年間高止まりの状態にある。調査結果を詳細にみると、月の残業時間が80時間以上との回答が外勤・建築で54.1%、外勤・土木で38.2%に達している。所定外労働時間が高止まりしている背景には、恒常的な人員不足、ISO9000シリーズ導入に伴う書類の増加、厳しい工期など、一人当たりの負担が増えていることがある。
● 人事院(中島思能総裁)は8日、2003年度の国家公務員の給与を、行政職で月額4054円引き下げるよう国会と内閣に勧告した。昨年に続く連続の「マイナス勧告」。平均年収は5年連続でダウンし、年収のマイナス額は16万3千円(2.6%減)と1948年に勧告制度が始まって以来、最大になる。勧告の内容は、行政職の俸給表を平均1.1%の引き下げを基本にしている。配偶者手当は5百円引き下げ、期末・勤勉手当(一時金)も0.25カ月削減し、一時金の年間支給は4.4ヶ月にダウンする。

資本の動向

その他の動向