情勢の特徴 - 2003年8月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 国土交通省の04年度予算概算要求の内容が明らかになった。社会資本整備重点計画等推進費などを含めた公共投資関係費は7兆4131億円で、前年度比16%増。これに義務的経費4167億円(前年度比1%増)、裁量的経費2164億円(18%増)を加えた要求総額は8 兆0462億円(16%増)となる。公共投資関係費のうち、一般公共事業費は前年度比17%増の7兆3065億円。「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」「人間力の向上・発揮−教育・文化・科学技術・IT」の重点4分野には、5兆6508億円を計上。一方、財政投融資は特殊法人改革などの影響を受け、前年度比28%減の4兆7085億円を計上した。
● 国土交通省と住宅金融公庫は2004年秋から民間金融機関が発行する住宅ローン担保証券(MBS)に公的保証を付ける新業務を始める。まず2004年度末までに2千億円(1万戸)分の保証を実施する予定で、8月末にまとめる来年度予算の概算要求に盛り込む。保証で MBSの信用力を補完し、民間銀行を通じた住宅ローンの拡大を側面支援する。
● 東京商工リサーチがまとめた7月の建設業倒産は、465件で前年同月比14.3%の減少となった。負債総額は 1010億3500万円で75.2%の大幅な減少。倒産原因は、不況型が363件と全体の78.0%を占めた。資本金規模別では1000万円以上1億円未満が248件、1000万円未満が212件と、この階層の中小企業で大半を占めている。

行政の動向

● 国土交通省は、2004年度の建設産業政策で、建設業の再編促進、不良・不適格業者排除の徹底、中小・中堅企業等のセーフティーネットの確保−に向けた取り組みを展開する。セーフティーネット関連では、手形レス化や資金繰り改善を図る新たな資金調達スキームを検討することで、連鎖倒産の防止などに役立てる。また、異業種JVなど専門工事業が総合工事業化を目指す上での企業連携のあり方も検討。ガイドライン・マニュアルを作成し、多様な形態を選択しやすい環境づくりを進める。不良・不適格業者の排除では、企業評価や技術者評価の虚偽申請などを総合的にチェックするシステムを構築する。経営事項審査(経審)の企業データと、技術者情報などのデータを連動させ、虚偽申請などの疑義業者を洗い出す。公認会計士などによる経審チェックをモデル的に実施するほか、監理技術者資格証のICカード化なども検討する。また、技術職員不足に悩む小規模な地方自治体などを対象に、業務執行体制を支援する仕組みも検討する。公共発注者の業務執行体制を強化することで、品質の確保や不良・不適格業者の排除を徹底させる。建設業の再編促進では、中堅・中小建設業の作業連携などを支援する。各地方整備局を通じて、企業連携などのモデル的な取り組みを選定し、支援する仕組みを構築する。
● 長野県は、建設工事、委託業務などのすべての入札で実施している予定価格の事前公表を一定期間中止することを決めた。9月1日から4カ月間、受注希望型競争入札(郵送事後審査方式)のすべての案件で予定価格の事前公表をやめ、以前に実施していた事後公表に戻し、試行する。試行結果を踏まえて、予定価格を事前公表するか事後公表するか、最終的に対応を決めるものと見られる。県は2002年9月1日から、予定価格の事後公表をやめ、全面的に事前公表に切り替えた。しかし競争性を高めた受注希望型競争入札を実施する中で極端な低価格による受注も続発している。田中知事は現状で一定の競争性や公平、公正性が確保できていると見て、入札の透明性よりも、予定価格事前公表によって不良不適格業者の参入や極端なダンピング受注を招いているのではないか、という点を問題視したようだ。
● 防衛庁は、事態対処法整備の一環として、土木建築工事業者に対する業務従事命令制度の具体的範囲などを定めた政令案をまとめ、同制度が既に規定されている災害救助法や災害対策基本法と同様に、土木建築工事業者の範囲を「建設業法の規定による業者」と規定する。土木建築工事に従事する者の具体的な範囲を定める政令は、これまで制定されていなかった。同庁は前通常国会で武力攻撃事態対処関連3法(有事関連3法)が成立したことを受け、未制定となっていた政令を今回制定することにした。法律上、建設業者が従事する地域は「自衛隊の行動に係る地域以外の地域」で、「内閣総理大臣が告示して定めた地域内」に限定される。戦闘地域とは隔遠した安全な地域で、その地域は事前に公表される。命令に基づいて業務に従事した際は当然実費が弁償され、万が一傷病などが生じた場合も損害が補償される。命令を断ることも可能で、罰則規定も設けられていない。
● 総務省は市町村合併を一層促すため、合併自治体だけに認める地方債「合併特例債」の発行枠を大幅に拡大することを決めた。2004年度は5千億円と今年度の2千億円の2.5倍にする。総務省は来年度予算の概算要求で自治体への補助金などの合併推進費も今年度(約33億円)の2.7倍に当たる88億円とする方針。特例法で認める財政支援を受けようと、自治体の間では駆け込み合併を検討する動きが急拡大している。総務省の調べでは、具体的な合併協議の場となる法定協議会の設置が増え、参加市町村は1540と全市町村(3183)の半数近くに達した。
● 国土交通省は、同省の指名停止措置要領と同運用基準を改正した。改正内容は指名停止期間の加重措置については▽誓約書を提出した後に談合などが発覚した場合、指名停止期間の短期を2倍(一般役員以上が関与)または1.5倍にする、官製談合事件で業者が発注者に働きかけ悪質性が認められる場合、指名停止期間の短期を1カ月加算する−などを明記した。また、指名停止期間の加重措置の対象として、官製談合防止法違反で発注者に対して業者が働きかけを行ったなど、特に悪質性が認められた、誓約書を提出したにもかかわらず、独禁法違反などが認められた−などを提示した。具体的な加重内容は各発注機関の判断に委ねられたが、おおむね短期の2倍が目安とされていた。

労働関係の動向

● 厚生労働省は26日、2003年版の「労働経済の分析」(労働経済白書)を発表した。副題は「経済社会の変化と働き方の多様化」で、パート・アルバイト、派遣などの非正社員は2002年には1451万人と全就業者(6319万人)の23%(雇用者中では27%)、約4人に1人を占めるなど、雇用の多様化が進んでいると指摘。多様化は「必然的な流れ」であると結論づけ、それに対応した社会システムの整備が重要として、@雇用・就業機会の確保A労働者の納得性のある処遇・評価−などの取り組みを求めている。同時に白書は、正社員の減少・非正社員の増加の背景には「人件費削減や雇用における柔軟性の確保」などを目的とした企業行動があること、賃金制度でも企業は成果主義化・能力主義化や正・非正社員間の賃金格差を拡大していて、「就業意欲、人材育成等に悪影響を与えるおそれがある」こと、労働時間でも、大企業ほど残業時間が長く、有給休暇取得も向上していないなど、その原因には企業のリストラ・人員削減があると述べ、大企業など企業の責任を指摘してる。
● 厚生労働省は、不良債権の処理などに伴い再編が進む建設業界の動きに対応して、2004年度から、業界内外への労働移動、成長分野・異業種への進出に必要な能力開発、事業主に対する相談機能の充実−を柱に関連施策をパッケージ化した「建設雇用再生トータルプラン(仮称)」を推進する。建設業労働移動支援助成金、建設業新規・成長分野進出教育訓練助成金をはじめ、新規・既存の支援策を活用した円滑な労働移動の取り組みを促すのが狙いで、事業主団体の相談機能強化への支援も行う。
● 国土交通省は、公共事業労務費調査の新たな実施方法として検討している「モニター方式」を、本年度は10工種(02 年度は8工種)で試行することを決めた。02年度対象としなかった「石工」「山林砂防工」「サッシ工」「さく岩工」の4工種を新たな対象に加えた。10月に調査員が直接各企業を訪問して、賃金の支払いの実態を把握する。本年度のモニター方式の試行対象は、▽石工▽潜かん工▽潜かん世話役▽潜水士▽潜水連絡員▽潜水送気員▽山林砂防工▽サッシ工▽ガラス工▽さく岩工−の10工種。02年度対象としていた「ダクト工」「内装工」を対象から外し、新たに4工種を加えた。
● 総務省がまとめた4〜6月の労働力調査によると、失業期間が「一年以上」の完全失業者は全体の34.3%と1年前より3.6ポイント上昇。失業者の3人に1人が1年以上職が見つからない状態だ。今年4〜6月平均の完全失業者を失業期間別でみると、「三カ月未満」が 35.7%と最も多いが、1年前に比べ1.2ポイント低下。「三カ月以上六カ月未満」も2.4ポイント減り14.9%。増えたのは1年以上だけだった。 厚労省は「有効求人倍率も0.6倍程度で、離職すると再就職は依然難しい。求人があっても製造業の請負や派遣業務が多く、求職者の希望に合わないケースも多い」と分析している。
● 総務省が発表した労働力調査によると、7月の完全失業率(季節調整値)は前月と同じ5.3%、完全失業者数は1年前と比べ(前年同月比)10万入減の342万人で、依然高水準で推移している。完全失業者の求職理由をみると、リストラや雇用契約満了(雇い止め)など非自発的離職者は151万人。1年前と比べ9万人増加した。就業者数は1年前より7万人増加し6381万人、雇用者は同3万人増加の5382万人、自営業主・家族従業者は同1万人増加の972万人だった。
● 内閣府が発表した国民生活に関する世論調査によると、日常生活で「悩みや不安を感じている」と答えた人は昨年調査に比べて3.9ポイント増え、過去最高の67.2%に達した。「感じていない」は4.2ポイント減の31.5%だった。不安を感じる人を年代別で見ると、40歳代が72.5%、50歳代が71.6%と、中高年の世代で多かった。不安を感じる項目(複数回答)で最も多かったのは「老後の生活設計」の 50%。続いて「自分の健康」の46.3%、「今後の収入や資産の見通し」の41.7%だった。

資本の動向

その他の動向

● 総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口調査では、東京都への人口集中傾向が改めて鮮明になった。人口調査(今年3月末時点)によると、前年比での人口増加数(9万1千人)、増加率(0.76%)ともに東京都が前年に続き全国トップとなった。地価・住宅価格の低迷や地方雇用情勢の悪化を背景に人口流入が続くほか、中高年層を中心に都心への定着が広がっている。都は出生による自然増加率が全国平均並みの 0.11%(1万3千人増)なのに対し、転出入を反映する社会増加率が0.65%(7万8千人増)と他に比べ際立って高い。地域別にみると、人口が増えた 18都道府県は3大都市圏に多い。中でも東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の人口は20万8千人増加。名古屋圏(岐阜、愛知、三重)の3万3千人増、関西圏(京都、大阪、兵庫、奈良)の1万5千人増を大きく引き離している。関西圏では大阪や奈良で転出者が目立ち、都市圏の中でも東京への一極集中は顕著だ。人口が減少した29道県は東北や中四国、九州地方が中心。三大都市圏以外の地方圏の人口は4万7千人減った。人口流出に加え、高齢化で出生による人口増加率も0.01%と低く、都市圏(0.21%)との格差は広がるばかりだ。