情勢の特徴 - 2003年10月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 東京商工リサーチがまとめた2003年度上期(4−9月)の建設業倒産は、2643件で前年同期比で13.0%減となった。これで3年連続の減少となり、1999年以来の上期3000件の大台割れとなった。負債総額は6289億9400万円で45.5%の大幅な減少になっている。倒産原因別では、受注・販売不振が1633件、赤字累積378件、売掛金回収難53件で、この3つを合わせた不況型が2064件と全体の 78.0%を占める結果となった。倒産企業を規模別にみると、資本金1億円以上は26件、1000万円以上1億円未満1420件、1000万円未満 1197件。負債額が10億円以上は104件、年商が10億円以上の企業倒産は114件。
● 建設経済研究所と経済調査会は、2003、2004年度の建設投資見通しを発表した。2003年度の建設投資額(名目)は54兆2100億円で、前年度比4.1%減になる見通し。民間住宅投資が同0.2%増と小幅ながら4年ぶりの増加が見込まれるものの、公共事業の減少が響き、1996年度以来7年連続の減少となる。2004年度は企業の新規設備投資意欲の増加から民間非住宅建設投資が4年ぶりに増加の見通しだが、公共事業の減少に歯止めがかからず、全体では同3.1%減の52兆5400億円を見込む。2003年度建設投資の内訳は、政府建設投資が前年度比8.8%減の22兆7600億円、民間住宅投資が同0.2%増の17兆9600億円、民間非住宅建設投資が同1.1%減の13兆4900億円。
● 日本経団連(奥田碩会長)は、2003年度規制改革要望をまとめた。要望分野は全部で16。このうち土地・住宅・都市再生分野では、▽共同住宅とオフィスビルの容積率の緩和▽斜線規制の見直し▽PFI(民間主導の社会資本整備)推進のための各種規制の撤廃―の三つを重点項目に位置づけ、全部で36項目の規制改革を実現するよう求めている。政府の総合規制改革推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は経済団体などが発表した要望を参考に、年末までに規制改革に関する答申をまとめ、政府に提出する。同会議の答申を受け、政府は各省庁に対応方針などを聞いた上で、本年度末までに「規制改革推進3カ年計画」を改定する。
● 内閣府は24日、「改革なくして成長なしV」と題した2003年度版経済財政報告(経済財政白書)を公表した。白書は、アメリカ経済の回復による輸出増とリストラによる大企業の収益改善から「経済に前向きの動きが見られている」と報告。また、「家計部門の動きは鈍い」とのべ、「雇用と賃金が減少したため雇用者報酬は減少を続けてきた」と指摘。「個人消費が増加してこないと景気の自律的な回復は望めない」としている。ただ、大企業のリストラ強化を評価する一方で、輸出増加による企業部門の前向きの動きが、雇用・賃金の増加を生み、「個人消費の持ちなおしに好影響を及ぼす」と非現実的な分析をしている。
● 公正取引委員会が独占禁止法の見直しを視野に設置した、独占禁止法研究会(座長・宮澤健一一橋大名誉教授)は、課徴金引き上げ・適用範囲の拡大、強制調査権(犯則調査権限)導入など盛り込んだ最終報告書をまとめた。報告書では、課徴金の加算、一定条件での減免制度導入も示すなど、違法行為に対するペナルティ強化と公取委の権限強化を鮮明に打ち出した。一方、刑事罰を残したうえで、行政罰である課徴金引き上げに対しては、その率を示していない。日本経団連など産業界が従来から反対しており、今後、独禁法改正へ公取委がどのような対応を見せるか注目される。

行政の動向

● 経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は17日、地方自治体業務の民間開放を阻害する制度的な問題点を10月中にも洗い出し、11月下旬の同会議で具体的な対応方針を検討することを確認した。検討にあたっては@官から民への流れを加速H国から地方へB民需拡大−を視点に、内閣府が月内をめどに行政サービスの民間移譲を阻む法律や通達など制度上の問題を調査する。具体的には、上下水道、病院、介護サービスなどを提供している全国約1万3000の地方公営企業の民営化や、都道府県が出資法人などに委託している行政サービスに民間との競争原理を導入する場合の阻害要因を洗い出す。

労働関係の動向

● 民間信用調査会社の東京商工リサーチが発表したところによると、東京証券取引所に上場している製造業企業930社のうち約8割がこの1年間に従業員を減らし、その減少数は11万7600人になった。減少数は3年間で30万5842人になっている。930社の今年3月期の総従業員数は188万9830人で昨年の決算期比5.8%減。3年前と比べると、約14%の減少となった。

資本の動向

● 経営再建中の住宅大手ミサワホームホールディングスは30日、UFJ銀行などに対する千億円の優先株発行を柱とする経営再建策を正式発表した。資本増強で販売用不動産やゴルフ場などの含み損処理を加速。戸建て事業に専念する体制を整えることで、現在約5千億円の連結有利子負債を2006年3月期に6割減の2千億円に減らす目標も掲げた。今回の資本増強はグループの中核企業であるミサワホームが抱える含み損処理をにらんだ対応。ミサワホームは本業の戸建て以外にゴルフ場や不動産担保融資などを抱える。ゴルフ場は国内外合わせ10カ所あり簿価総額は800億円。地価下落が続いており、減損会計の導入で損失処理を迫られるのは必至だ。約500億円あるとみられる不動産担保融資の不良化に加え、東京・勝どき(中央区)で予定するマンションプロジェクトも含み損が懸念されており、こうした事業の整理で債務超過転落を防ぐために増資に踏み切る。

その他の動向

● 世帯主が65歳以上の「高齢者世帯」は2000年の1114万世帯から増え続け、2025年は65%増の 1843万世帯と、全世帯の4割近くを占めることが、国立社会保障・人口問題研究所の推計で分かった。2025年には、世帯主が75歳以上の世帯が5軒に 1軒に達する一方、夫婦と子供という構成の世帯は今より2割減るなど、高齢化と少子化が加速する見通しであることも示した。