情勢の特徴 - 2003年11月前半
● 総務省が発表した7〜9月期の勤労者(サラリーマン)世帯の家計調査速報によると、一世帯当たりの消費支出は月平均で32万3719円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同期より2.0%減少した。季節調整済みの前期比では0.3%のマイナス。名目値でみた消費支出は前年同期比2.3%の減少。可処分所得は月平均41万5881円となり、前年同期と比べ名目で1.0%、実質で0.7%減った。
● 政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は、河川や道路などの公共施設について、公的主体による管理・運営を前提とした、いわゆる「公物管理法」による法的規制の緩和・撤廃を求める提言をまとめた。民間事業者による公共施設の管理・運営を推進するため、PFI法を改正し、各種公物管理法に関係する公共施設の管理・運営をPFI選定事業者が行えるようにする。同様の観点から、地方自治法の改正も求めた。提言は、12月の最終答申に盛り込む予定だ。提言では、▽PFI法の改正▽地方自治法の改正によって公物管理規定を見直し、管理・運営の民間開放を促進することを求めた。PFI法を改作するのは、現行法に基づき国や地方公共団体から選定されたPFI事業者であっても、各種公物管理法が関係する公共施設の場合、管理・運営ができないため。提言ではまた、公共施設や公共サービスの民間開放を促進するために、官と良が公平な競争条件の下で競争入札を実施し、価格と質の両面でより優れた方を落札者とする「市場化テスト」の導入や、民間委譲に関する数値目標と達成期限の設定なども提案した。
● 9月度の全国建設業の倒産は397件、負債総額は698億4700万円となった。件数は、前月比で1.7%の増加、前年同月比では15.5%の減少、 400件割れは2カ月連続。歴代件数で過去163番目、9月同月比較としては15番目。負債額では、前月比28.3%、前年同月比では51.7%の減少となり、歴代過去113番目、9月としては過去11番目となった。当月平均負債額は1憶7500万円。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が5件、 1千万円以上―1億円未満202件、1千万円未満(個人企業含)が190件となった。負債額別では負債10億円以上が11件。従業者数別では10人未満の零細企業が323件(構成比81.3%)となった。
● 長野県の公共工事入札等適正化委員会(委員長・鈴木満桐蔭横浜大法学部教授)は、県発注工事の落札率(予定価格に対する落札額の比率)の大幅低下を招いているとして建設業界から批判を受けている「変動型最低制限価格制」の運用を見直す。応札者のうちの下位5者平均応札額の80%未満を失格としている現行基準に加え、低入札価格調査制度の運用を厳格化、事実上の固定型最低制限価格を導入する。赤字受注の常態化に歯止めをかけるのが狙い。県が4日、委員会に提示した低入札価格調査制度の運用見直し案によると、「入札価格に対応する直接工事費が、設計価格の直接工事費の8割以下の場合」と、「入札価格に対応する共通仮設費、現場管理費および一般管理費が、入札価格の直接工事費に25%以上計上されていない場合」には失格とする。このほかに県の設定した調査基準を満たしていない場合にも失格にする。委員会は、技術力のある企業が報われる入札制度とするため今後、工事成績を入札参加条件とすることなどを検討する。
● 国土交通省は、現場の専任技術者となる監理技術者や主任技術者について、所属する建設業者と3カ月以上の雇用関係がないと「恒常的な雇用関係とは認めない」方針を決めた。建設業法上で定められた現場の専任技術者は、工事を請け負った企業と直接的かつ恒常的な雇用関係が必要となるが、これまで恒常的な雇用関係がどの程度の期間を指すのかなどはあいまいだった。今回示された解釈により、今後入札申し込み時点で応札企業と3カ月以上の雇用関係がない技術者は、基本的に現場の専任技術者として配置できなくなる。
● 兵庫県明石市はこのほど、入札・契約制度を一部改正し、大手ゼネコンなど市外業者向けの大型工事や特殊な工事に、市内業者への下請負契約率を設定する。発注量が減少する中、地元業者の育成や技術力の向上、受注機会の確保を図ることを目的とするもので、長野県に次いで全国では2例目となる。対象は1億 5000万円以上の工事に導入している希望価格制度の採用工事で、初めて適用した「東野町雨水管布設工事ほか工事」では、下請負人との契約額の合計を工事請負金額の25%以上としている。同市では、市発注の建設工事については、原則として市内業者に発注することにしているが、工事金額の高い大型工事や下水処理場の設備工事といった特殊な工事など、一部の工事については、ゼネコンやプラントメーカーなど市外の大事業者への発注となることが多い。しかし、この場合、下請業者も遠方の系列会社などが中心となるため、結果的にコスト高になるケースが多く、さらに市内業者が大事業者と共同企業体(JV)を結成し、大型工事を受注した場合でも、実際の工事では、市内業者が施工する場が少ない実態もあるという。このような状況を踏まえ、同市では市発注工事においては今後、JVを基本的に廃止。これらの大型工事についても、市内業者が施工可能な内容を把握し、工事ごとに市内業者の下請負率を設定することで、市外業者へ発注した場合でも、できる限り市内業者が仕事を確保できるようにした。
● 国土交通省の各地方整備局が2002年度に発注したコンサルタント業務の平均落札率(港湾・空港工事を除く)は89.65%で、工事(直轄95.33%)に比べかなり低い数値となった。地方整備局別でみると、東北が88.91%、関東が86.30%、北陸が88.11%、中部が86.45%、近畿が 90.72%、中国が94.15%、四国が93.82%、九州が92.78%、国総研が92.50%、官庁営繕が75.91%。国土地理院が74.42%となった。発注方式別では公募型競争入札が48.20%(対象件数は1件)、簡易公募型競争入札が71.91%(56件)、通常競争入札が89.75%(1万0212件)となった。
● 地方制度調査会(首相の諮問機関、諸井虔会長=太平洋セメント相談役)は最終答申を決めた。答申では、合併特例法失効後の2005年4月以降の市町村合併については、新法をつくって進めることを提唱。現行のような合併特例債などの財政支援はとらず、都道府県が合併構想をつくり、勧告・あっせんで進めるとしている。合併を求める人口規模は「おおむね一万未満を目安」と明示していたが、地理的条件やこれまでの経緯も考慮するよう求めている。財界が求めている、都道府県に代わる「道州制」については、議論段階の中間報告から新たに踏みこんで「導入を検討する必要がある」と明記。国の役割を重点化し権限の多くを移譲することや、長と議会は公選とするなどの原則を示し、次期調査会で議論をすすめるとしている。
● 東京・荒川区は、木造密集市街地の再整備を促進するため、NPO(民間非営利団体)や地元企業と連携した支援体制づくりに乗り出す。共同建て替えする際の合意形成や建て替え時の仮住居の手配などのソフト面のサポートを、地域に密着したNPOなどに任せることで、老朽家屋の建て替えを円滑に進めていくのが狙い。新たな補助制度の導入も検討する。同区全体の約6割を木造密集市街地が占めており、災害に強い街づくりが大きな課題となっている。しかし、住民の高齢化が進んでいることや、借地が多いため、木造密集地の再編がなかなか進まないのが現状だ。
● 国土交通省2003年度の下請け代金支払い・受取り状況等実態調査結果を発表した。前払金が支払われる公共工事で、受け取った前払金を下請業者に支払っていない元請業者が3割近くあることが判明。完成払いの手形期間も120日を超える元請業者が1割以上あった。同省は調査結果に基づき、約300社の元請業者に対し立ち入り検査などを行い、改善指導する。実態調査は、経営事項審査(経審)を受審する特定建設業者で大臣・知事許可業者合わせ5000社が対象。有効回答は4029事業所。また、この調査結果を踏まえ、支払い実態調査を行った大臣許可業者と取引のある下請企業1200社にも下請代金の受取り調査を行った。
● 総務省が発表した労働力調査によると、9月の完全失業率(季節調整率)は5.1%と、依然として高水準だ。なかでも、15〜24歳の若年層が9.4%(男性10.7%、女性8.0%)と高い失業率を続けており、同層の完全失業者数は63万人(男性37万人、女性26 万人)。25〜34歳の失業率も6.5%(男性6.2%、女性7.0%)で、同層の完全失業者数は百万人(男性57万人、女性43万人)と高水準となっている。
● 厚生労働省が発表した9月の一般職業紹介状況によると、有効求人倍率(季節調整値)は前月を0.03ポイント上回り、0.66倍だった。前月に比べ、有効求職者(同)が0.6%減り、有効求人(同)が4.5%増えた。ただ、有効求人倍率で伸びているのは低賃金・不安定雇用のパートタイム(同0.07ポイント増の1.49倍)。パートを除くと同0.02ポイント増の0.52倍となり、求職者2人に求人は1人という深刻な就職難は依然続いている。新規求人は前年同月比で17.8%増。これを主要産業別にみると、「サービス業」(27.8%増)、「製造業」(17.0%増)、「運輸・通信業」(11.0%増)、「卸売・小売業、飲食店」(9.9%増)、「建設業」(8.7%増)で増加した。
● 国土交通省は「労務費調査の基本的あり方に関する研究会」(座長・藤澤好一芝浦工大教授)の初会合を開いた。会合では、法定労働時間を順守していないなどの理由で集計対象から外している棄却データが多く存在することが、適切な調査を実施する上での課題の一つに挙げられた。調査精度の向上を図るため、全サンプル中4割程度にのぼる棄却率の改善に向け、業界側の取組みが必要であることが指摘された。研究会の検討課題は、▽調査手法の最適化▽単価決定のスピードアップおよび迅速な実態の反映▽従前から継続する課題等への対応▽今後の労務単価の役割についての検討−など。調査精度を保ちながら全体の調査規模の縮小を図るため、ブロックや複数都道府県単位での単価設定を行う「単価の広域化」や、職種の兼務状況などから複数職種をまとめる「職種数の最適化」などの具体的な方策を検討していく。初会合ではまた、厳しい賃金支払い実態を反映して労務単価が下落していることや、労働者の熟練度が賃金に反映されていないことなどへの懸念も示された。研究会では本年度中に、来年度の労務費調査に反映させる改善策を検討。来年度には、市場単価やユニットプライスなど、新たな積算手法における労務単価のあり方などを検討し、来年11月にも報告書を取りまとめる。
● 埼玉県は、2002年度県発注工事(600万円以上)における建退共の報告書提出状況、証紙の購入・貼付状況をまとめた。それによると、完了した工事のうちで、貼付枚数が購入枚数の約6割(61.34%)にとどまっていることが明らかになった。埼玉県は、建退共の現場への普及を促進する取組みを進めており、昨年3月15日の通達で、600万円以上の工事を対象に、工事完了届けとあわせて一人一人の労働者名を記載した「建退共証紙貼付実績書」の提出を義務づけた、いわゆる建退共の埼玉県方式≠昨年度から実施している。適用対象となった2002年度の県発注工事(600万円以上)は1689件。報告書は 1487件提出されている。証紙の購入金額は総額で1億5669万3723円。購入枚数は51万7141枚、貼付枚数は31万7213枚だった。手帳への貼付枚数は、全体で購入枚数の61.34%。年間100件以上600万円以上の工事を発注した部局のうち、県土整備部(1222件)は67.46%、農林部(195件)は94.45%、企業局(163件)は57.75%。警察本部(対象工事58件)は100%、最も低い労働商工部(同11件)は 13.67%と発注部局によって大きな差が出ている。