情勢の特徴 - 2003年11月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 東京商工リサーチは2003年10月の建設業倒産(負債総額1000万円以上)をまとめた。倒産件数は412件、前年同月比24.6%減と減少した。一方、負債総額は3387億1200万円、同121.4%増と大幅に増大した。負債総額が大きくなったのは民事再生法による森本組の負債2153億円が影響した。倒産形態をみると、法的倒産が157件。民事再生法14件、破産141件、特別清算2件。私的倒産では、銀行取引停止処分が218件、内整理が37件となった。
● 公正取引委員会は「公共調達と競争政策に関する研究会報告書」を発表した。公共調達分野での競争性の徹底に向け、一般競争入札の適用拡大を求めるとともに、過度な地域要件の是正やJV結成の義務付け廃止などを指摘した。高度な技術力が求められる案件等では価格と技術などを考慮して落札者を決める総合評価方式の採用を提案。事業者と個別に交渉して契約者を選定する「競争的交捗方式」の導入の検討も求めた。報告書は、大別すると、▽公共調達制度の現状と課題▽欧米における公共調達制度の概要▽公共調達における競争性の徹底を目指して−の3部で構成される。
● 小泉首相は経済財政諮問会議で、労災保険の民営化など規制改革アクションプランの重点検討項目について、決めたとおりにしっかり実行するように、総合規制改革会議の宮内義彦議長(オリックス取締役兼代表執行役会長・グループ CEO)に指示した。宮内議長は、災害リスクに応じた業種ごとの保険料率設定を含んだ労災保険の民営化を最重要5項目の一つにあげ、小泉首相の指導と、関係閣僚の積極的な取り組みを求めた。総合規制改革会議は、今月10日に開かれたアクションプラン実行ワーキンググループで、労災保険の民営化を厚労省と協議。民営化とともに、業種別の災害リスクに応じた適正な労災保険料率の設定を求めた。総合規制改革会議は、災害リスクに応じた業種ごとの保険料率設定を含む、労災保険の民営化を最重要項目にかかげ、小泉首相の指導を仰ぎながら、12月の最終答申に向け、厚労省と再び折衝することになる。

行政の動向

● 国土交通省は、道路や下水道、学校施設といった社会資本について、2050年度までの更新投資額を試算した結果をまとめた。現在3兆円にも満たない更新投資は、20数年後に10兆円を超え、50年度には総額20兆円規模に達すると予想している。分野区分と具体的な施設は、@文教(学校・学術施設、社会教育・体育施設、文化施設など)A生活関連(上下水道、都市公園、廃棄物処理施設、郵便関連施設など)B産業(農業、林業、漁業、工業用水など)C交通(道路、港湾、空港など)D国土保全(治水、治山、海岸など)となっている。
● 政府は公務員に対し、働いた時間に関係なく仕事の成果や実績で評価する裁量労働制を導入する方針を固めた。まず国家公務員の一般職(約80万人)への適用を検討し、順次地方公務員に拡大する。情報技術(IT)の活用によって、公務員も多様な就労形態を選べるようにし、業務の効率化や行政コストの圧縮につなげるのが狙いだ。現在、公務員には原則として適用しておらず、民間からの出向者など特例法で定めた任期付き研究員に限って例外的に裁量労働を認めている。政府はこれを原則適用に改め、まず政策などの企画・立案、調査、審査事務に携わる職種に広げる方針。具体的には週のうち数日は自宅など職場以外で、高速で安全性の高い通信網と接続したパソコンなどの情報端末を活用して業務をこなすことを想定している。
● 国土交通省は国が高速道路整備計画で定めた9342キロを全線建設する方針だ。道路四公団を民営化した後も、通行料金収入を新線建設に活用する。採算性が低い路線は、国が税金を投入する「直轄高速道方式」で建設する。2005年度の民営化後20年程度で整備計画区間の残り約2100キロを建設できるとみている。
● 政府は地域再生に向けた行政サービスの民間開放について、当面は自治体からの要望に応じて地域限定で国の規制を外す「特区方式」で推進する方針を固めた。公営住宅や図書館など公共施設の管理・運営に関する規制はこれに先行して弾力化し、自治体の裁量で業務の民間委託を進められるようにする。地方の行政サービスの民間開放は@観光産業の振興A建設業の事業転換促進B農業の競争力強化― とともに指針の柱となる。政府が民間開放を特区方式で推進するのは、地方の行政サービスは個別の法律で運営主体を自治体や公務員に限っているケースが多く、法改正に時間がかかる可能性があるためだ。このため少なくとも来年度前半までは、構造改革特区と同様に政府が自治体から要望を受け付け、地域限定で業務の民間開放を認可。全面的な法改正は順次進める方針だ。

労働関係の動向

● 厚生労働省は2004年「年金改革」に関する同省案を発表した。厚生年金の保険料(現在は年収の13.58%、労使折半)を来年から毎年0.354%ずつ引き上げ、2022年度に年収の20%まで値上げして「固定」する。一方、厚生年金の給付は、現在、現役世代の手取り賃金の59.4%から、50%を「下限」とする削減案を盛り込む。政府・与党は年内に政府案を確定し、来年の通常国会に関連法案を提出する方針。
● 労働災害発生を労働基準監督署に報告しないなどの「労災隠し」が今年1月から10月までに106件に上り、過去最多のペースで増えていることが、厚生労働省のまとめで分かった。同省によると、労災の発生事実を隠すために報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりしたとして、労基署が労働安全衛生法違反容疑で書類送検した件数は、10月までで昨年1年間の97件を上回った。業種では建設業が78件と6割強を占め、次いで製造業 17件、運輸交通業6件。
● 総務省が発表した10月の完全失業率(季節調整値)は5.2%と前月比0.1ポイント上昇し、7カ月ぶりに悪化した。景気持ち直しの動きは雇用情勢の改善につながっておらず、失業率は高水準で一進一退を続けている。完全失業者数は343万人で前年同月に比べ19 万人減った。一方、就業者数は同18万人減の6337万人。このうち会社員など雇用者は同4万人減の5332万人。ともに3カ月連続で減り、労働力人口は縮小傾向にある。

資本の動向

● 熊谷組と飛島建設は25日、2005年4月に予定している経営統合の形態を合併方式とすることで合意した。重複事業の解消と、得意分野である土木事業の技術強化が期待できる方式として、合併が最も経営効率の高い統合形態と判断した。両社の売上高(2004年3月期の売上高予想)を単純に合算すると、約5600億円で業界7位規模となる。今後は合併を見据え、人材交流の促進、保有技術の相互共有による技術力強化などを推進するとともに、合併交渉を確固たるものとするため、先行して道路舗装子会社のガイア−トクマガイと飛島道路を来年4月1日付で統合させる考え。
● ゼネコンの9月中間決算は、大手・準大手クラスがすべて出そろった。今回の中間決算の特徴は、大手各社の業績が大幅に回復した点と、経営再建中の社が多い準大手との間で業績が開き始めた点だ。建設投資が縮小を続ける中でも、大型の民間建築工事などで強みを発揮する大手各社などは売り上げへの影響が相対的に小さい。一方、公共土木工事が中心で、金融支援を受けて再建中の熊谷組やハザマなどは大幅に売り上げを落としており、信用不安や市場縮小のあおりをまともに受けている格好だ。各社は採算の悪化を食い止めるため、単価の厳しいマンション工事からの撤退や、利益重視の選別受注の徹底、一層の原価低減などの対策を取ってきたが、小さくなるパイの奪い合いは一段と激しくなる傾向で、不採算工事を一掃するには至っていない。

その他の動向