情勢の特徴 - 2003年12月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 政府・与党は10日、国と地方の税財政改革(三位一体改革)で、総額約1兆円の補助金削減策を決めた。公立保育所への補助金などを減らすことで合意し、生活保護費の補助率引き下げは2005年度からに先送りすることで一致した。厚労省所管の補助金では、公立保育所の運営費補助金を1700億円削減する。私立保育所については「国が最終的に責任を持って負担金を確保する」と、削減対象としないことを確認した。生活保護費負担金は国の補助率を引き下げる案もあったが、10日の協議で「1年かけて議論し、2005年度から確実に実行する」と、結論を先送りした。70歳以上の高齢者への生活保護の給付金を上積みする約100億円の「老齢加算」は来年度に廃止する方向だ。
● 日本銀行は、12月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。企業の景況感を示す業況判断指数(DI、「業況が良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割を差し引いたもの)は、大企業製造業で前回調査(9月)比10ポイント増のプラス11になり、三期連続で改善した。一方、中小企業製造業は10ポイント増となったものの、DIは依然マイナス13。大企業製造業の景況感との格差は依然大きく開いたまま。大企業製造業のDIは1997年6月のプラス13に次ぐ水準。大企業の業種別DIでも自動車(前回比11ポイント増)、電気機械(同12ポイント増)と基幹輸出産業での改善が目立ち、中国関連が好調な鉄鋼(同12ポイント増)、非鉄金属(同45ポイント増)などの伸びが突出している。ただ、海外生産の拡大の中、大企業製造業の景況感の改善が消費部門や中小企業に直接及ばない流れが継続。非製造業の中小企業のDIは、わずか3ポイント増のマイナス28で、国民生活に直結する小売中小企業ではマイナス44(1ポイント増)と低い水準にとどまっている。
● 東京商工リサーチがまとめた10月の建設業倒産は、件数が412件で前年同月比24.6%となった。負債総額は 3387億1200万円で121.4%の大幅な増加になっている。民事再生法適用を申請した森本組の負債2153億円が大きく影響した。しかし、件数的には減少が続いている。受注・販売不振が269件、赤字累積56件、売掛金回収難2件を合わせたいわゆる不況型が327件となり、全体の79.3%を占める結果となっている。

行政の動向

● 東京都地下鉄建設は、事業費削減と事業の効率化を図るためCM方式の導入を決めた。1次審査ではマネジメント計画や施設計画、概算事業費などについて、外部の有識者による審査委員会が審査し、この結果、清水建設など3社が2次審査の対象企業に選ばれた。2次審査では、基本設計や全体事業費想定上限額、事業工程などについて審査した。審査の結果、全体事業費想定上限額の提示額が92憶7150万円と最も低かった清水建設がCMRに選定された。清水建設は東京都地下鉄建設を代行する立場のCMRとして、実施設計者や施工者の選定、工事の施工管理も実施。官公庁などとの調整を行うほか、提出図書も作成する。契約では、契約金額を事業費の上限と定めており、設計変更や追加工事が発生した場合の施工リスクは清水建設が負うことになる。施工業者の選定方法はCMRが決めることになるが、透明性を確保するため契約書や選定理由について東京都地下鉄建設に説明することが義務付けられている。発注にかかわるリスクについてもCMRが負う。実際の施工費が契約金額を下回った場合には、減額したコストの50%を報酬としてCMRが受け取る。
● 国土交通省は、市場重視・ストック重視の住宅政策を進める一環として、「住宅新産業ビジョン」の策定に着手した。民間住宅市場の健全な発展に向け、既存の住宅産業や不動産業以外に育成が必要な新産業は何かを明らかにした上で、産業育成に必要な公的支援のあり方などを示したい考え。来年6月をめどに議論の中間報告を受け、ビジョン策定に役立てる。住宅新産業ビジョンでは、中古住宅の流通や住宅取得、賃貸住宅の整備・入退居の円滑化など、民間住宅市場が発展する過程で課題になり得る項目ごとに、育成が必要な新産業を明らかにする。さらに各産業が果たすべき役割と責任、公的サポートのあり方などにも触れ、住宅政策を立案・実行する際の道標にしたい考え。
● 羽田空港に四本目の滑走路を造る再拡張事業の2004年度着工が決まった。空港の沖合に2500メートル規模の滑走路を整備する。2009年完成予定。離着陸回数は4割増え、首都圏住民の利便性が増す。地方空港は羽田便増便を期待、羽田の国際化も加速する。東京都、神奈川県、横浜市、川崎市が、1300億円の国への無利子融資を決め、財源のめどがたった。5700億円の国費との計7000億円で政府が整備する。ターミナルや駐機場などは民間資金を活用する社会資本整備(PFI)で2000億円をかけ建設する。
● 自民党は12日の国土交通部会・道路調査会合同会議で、日本道路公団など四公団民営化の枠阻みについて、民営化後の新会社が「保有・債務返済機構」から委託を受けて高速道路を建設する方式を採用し、高速道路準備計画(9342キロ)の未整備区間約2000キロなどを着実に建設するよう、政府に求める方針を決めた。「委託方式」は、道路資産と債務を「保有・債務返済機構」(国が管理する法人)が継承。新会計は機構の委託を受けて白己資金で建設する。委託のため完成した道路は機構が保有し、債務も機構に移管される。新会社が機構に払う道路のリース料は債務返済に充てることになっているが、建設資金に回す分だけ少なくなり、債務の返済が遅れる。そのため債務返済期問も、民営化委が求める40年より10年長い50年に設定した。

労働関係の動向

資本の動向

● 建設業許可業者数が、4年ぶりに増加することが明らかになった。3月末には55万2210業者だったが、11月末現在の8カ月間で4580業者増え、55万6790業者となった。これは、1994年12月に施行した許可期間の一律2年間自動延長(3年間から5年間)の影響が、1998、1999年度に次いで再び、2003、2004年度に出てくるためだ。許可業者数の過去3年間の増減をみると、新規許可は毎年2万 3500〜2万5000業者で、廃業・許可失効業者は3万8500〜4万2600業者。新規許可業者数より廃業・失効業者数が上回っているため、結果として許可業者数は減っていた。
● 大手、準大手を合わせた主要ゼネコン22社中間決算が出揃った。大手が一様に経常損益、中間損益ともに業績を回復、今後の見通しにも明るさを示しているのに対して、準大手各社は赤字となった社も多く、大手との格差が見られる。総計では完成工事総利益率の回復も浮き彫りになり、通期見通しでは、大半が減収増益傾向になる予想を立てている。

その他の動向