情勢の特徴 - 2004年1月後半
● 政府の経済財政諮問会議は、中期的な経済財政見通しを示す「改革と展望−2003年度改定」を決めた。日本経済は 2006年度に名目2%成長を達成すると明記。ただデフレ克服の目標時期は遠のく。試算では消費者物価は2005年度に前年比プラスに浮上するが、総合的な物価動向を示す国内総生産(GDP)デフレーターがプラスに転じるのは2006年度。小泉首相が政権に就いた当初のデフレ克服目標は2003年度。2回の改定で目標年度は3年先にずれた。デフレ克服は逃げ水の状況で、諮問会議は今回の改定でも日銀の金融政策に強い期待をにじませた。財政面ではプライマリーバランスの赤字が縮小に向かう。一般歳出の抑制や地方交付税の削減で、2004年度の財政収支のGDP比はマイナス4.6%と前年度より0.8ポイント改善。試算では2013年度にはプラス0.1%と黒字化する。ただ年金改革に伴って2005年度以降に所得税、消費税を計3兆円増税することが前提。公共投資の3%削減を継続することも条件にしている。
● 国土交通省が今通常国会に提出する「国の補助金等の整理および合理化等に伴う国土利用計画法および都市再生特別措置法の一部を改正する法律案(仮称)」の全容が19日、明らかになった。全国都市再生の推進を目的に、市町村による公共公益施設整備を支援するための「まちづくり交付金」を創設するのが法案の柱。同省は同交付金の経費として、来年度予算案に1330億円を計上している。同法案では、政府が進める三位一体改革の一環として、「土地利用基本計画作成費等交付金制度」を廃止し関係予算(本年度予算額・約25億円)を一般財源化するとともに、まちづくりに関する各種補助金を廃止・縮小した上で、予算執行に関する地方自治体の裁量権を高めた「まちづくり交付金」を創設する。まちづくり交付金は、市町村が作成して国土交通大臣に提出する「都市再生整備計画(仮称)」の内容を基に、同省が交付額を決める。
● 東京商工リサーチがまとめた2003年1月〜12月の全国建設業の倒産(負債総額1000万円以上)は5113件、負債総額1兆5590億9600万円となった。前年比では件数で14.4%減と3年連続減ったほか、負債は37.5%減と3年ぶりに減少した。倒産形態では、法的倒産が1645件、32.1%とともに過去最悪の水準を示した。規模別では、資本金1000万円以上1億円未満の企業が2744件、1000万円未満(個人経営含む)の企業が2327件などとなった。
● 政府は来年度、地震をはじめとする自然災害の防災対策を充実させるため、約1兆2000億円の予算を充てる。建築物の耐震化推進、防災関連施設や観測体制の整備などを重要項目に位置づけ、関連施策に予算を重点投入する。建築物の耐震化促進では、国土交通省が住宅や建築物の耐震診断・改修を補助するための費用として約16億円を計上。内閣府は住宅・建築物耐震化対策ガイドラインの作成や地震ハザードマップの普及など、住民の防災意識を高めるための啓発活動を展開する。文部科学省と厚生労働省は、学校や病院などの耐震化に注力する。
● 総務省が発表した2003年平均の全国消費者物価指数(2000年=100)は価格変動の激しい生鮮食品を除いた総合で98.0となり、前年に比べて0.3%下落した。4年連続のマイナスだが、下落率は前年より0.6ポイント縮小、デフレ傾向は続いているものの物価下落圧力は弱まってきた。消費者物価は消費税引き上げの影響が完全に一巡した1999年に横ばいとなり、その後下落率が拡大していた。内訳をみると、引き続き耐久消費財の下落が目立った。パソコンはノート型が前年比29.1%下落、デスク型は26.1%下落。一方、ティッシュペーパーや輸入品のハンドバッグなどが上昇した。
● 総務省が発表した2003年の勤労者世帯の家計調査(速報)によると、一世帯当たりの月平均の消費支出は32万 5823円と、物価変動の影響を除いた実質で1.2%減少、6年連続のマイナスとなった。消費不況が長引いていることを物語っている。下落幅は2002年(0.2%減)から拡大し、同省は「収入の落ち込みが最大の減少要因」(消費統計課)と分析している。一世帯あたりの実収入は2.3%減の52万4542 円。消費支出の内訳で見ると、「食料」が2.2%減、「教養娯楽」が1.0%減。一方、高齢化の進展や医療費の自己負担分の増加で「保健医療」は6.4%増、携帯電話の利用増で「交通・通信」は2.4%増となった。
● 国土交通省が30日発表した2003年の新設住宅着工戸数は、前年比0.8%増の116万戸と、3年ぶりに前年を上回った。住宅ローン減税の延長が決まっていなかった段階で駆け込み需要が発生したことや、住宅ローン金利の先高観などが後押しした。注文住宅などの持ち家は1.3%増と4年ぶりに増加した。アパートなどの貸家は0.3%伸びて3年連続増と堅調。低金利を受けて、資産運用投資などが活発だったようだ。分譲住宅は0.8%増と3年ぶりに増え、一戸建て住宅は8.7%増と高い伸びを示した。
● 国土交通省は、「下請セーフティーネット債務保証事業」の昨年12月の融資実績をまとめた。全国24事業協同組合・建設業協会が計136件、30億88百万円の融資を行った。制度創設からこれまでの融資累計は、31組合・協会で3163件、836億15百万円に達した。
● 北海道は、道州制の先行実施に向けた取り組みについての素案をまとめた。国からの権限移譲、財源移譲、規制改革、事務事業の一元化の4つを基本方向として設定。世界に通ずる北海道観光の形成や産業・雇用政策の推進など6つのテーマごとに取り組むべき内容を盛り込んだ。先行実施の期間は3〜4年程度。▽国から道への大幅な権限移譲▽自由裁量を高める国から地方への財源移譲▽官から民への流れを拡大する規制改革▽国の地方支分部局との事務事業の一元化−の4つの基本方向に即した取り組み内容を示した。取り組み内容を見ると、高規格幹線道路を除く一般国道等の整備および管理、国管理空港の整備・管理、国定公園の計画の決定、国営農業農村整備、直轄特定漁港整備などの権限移譲を挙げ、それらの権限移譲に伴う統合補助金の拡充、統合交付金制度の創設を提案している。
● 国土交通省は、歩掛かりを用いない積算方式「施工単価方式(ユニットプライス方式)」に活用するデータ(単価)収集・調査を、26日以降に入札公告(指名通知なども含む)を行う同省直轄の新規発注工事から開始する。当面、ユニット区分の準備が整った舗装工事を対象に実施。築堤護岸や道路改良工、その他工事も準備ができ次第、年度内にもデータ収集を始める。対象工事は従来通りの積算方式で予定価格を算出し、入札される。契約は通常の総価契約で行う。受注者は発注者の依頼を受け、原則契約締結後14日以内に「ユニット請負代金内訳書(案)」「諸経費内訳調査書(案)」に記入し、発注者に提出する。
● 地方自治体が2004年度予算の編成作業で深刻な財源不足に直面している。国から配分される地方交付税や、財源補てんのために国が発行を許可する地方債はともに大幅に減る見通し。自前の税収を合わせても、現時点で予定している支出を賄いきれない恐れがあるためだ。このため一段の人件費削減や住民サービスの見直しを迫られる自治体が相次いでいる。国と地方の税財政改革(三位一体改革)を反映し、自治体の予算編成の目安となる来年度の地方財政計画では、交付税総額と交付税削減分の代償として認める赤字地方債(臨時財政対策債)が合計で今年度に比べて12%、2兆9千億円減る。
● 国土交通省は一定の工法を前提に人件費や資材費などを一つ一つ積み上げていた公共工事の価格算定方式を今秋から全面的に見直す。工法を問わず契約実績などをもとに工事全体の平均的な費用を算出、入札価格をそれ以下に抑える方式に転換する。新工法の活用を促してコスト引き下げにつなげ、デフレによる資材価格の低下などが工事費に十分反映されていないとの批判に応える。新方式は過去の契約実績をデータベース化し、工事の種類や地盤の強弱などによって単位面積・体積当たりの平均的な施工価格(ユニット価格)を算出する。例えば「アスファルト舗装は1平方メートル6300円」「ガードレール工事は1メートル9000円」といった具合で、これをもとに事業全体の予定価格を決める。ユニット価格は公開する。
● 総務省が発表した労働力調査(速報)によると、昨年12月の完全失業率(季節調整値)は、前月より0.3ポイント低下した4.9%だった。2001年6月以来、2年 6カ月ぶりに5%を割った。しかし、男性は前月比0.4ポイント低下の5.0%で、依然として5%台。女性は前月比0.3ポイント低下の4.7%。完全失業者数は1年前(前年同月)より31万人減少し300万人だった。職に就いている人をあらわす就業者数は6307万人で1年前より16万人増加した。雇われている人をあらわす雇用者数は5385万人で同37万人増。
● 日本建設業団体連合会(日建連、平島治会長)が27日公表した会員企業58社の2003年の受注総額は、前年比4.6%減の12兆7720億円で、3年連続の減少となった。12兆円台は86年(会員企業51社の総計12兆l150億円)以来。公共投資激減の影響から「官公庁」の落ち込みが著しく、前年比18.1%減の3兆4220億円となり、これまでにない大きな下げ幅を記録した。一方、「民間」は投資環境改善の兆しが見られ、わずかではあるが3年ぶりの増加に転じた。