情勢の特徴 - 2004年2月後半
● 商国データバンクが発表した1月の全国企業倒産(負債額1000万円以上)は1205件だった。前月比2.6%増で2ヶ月連続して増加した。負債総額は4535億円で、2ヶ月連続で5000億円を下回り、前年同月比62.8%と大幅減少している。倒産の内容としては、事業継続の断念を強いられるケースである「破産」と「特別清算」を合わせた「清算型の法的処理」は448件で、倒産全体に占める構成比は37.2%と過去最高を記録した。業種別の前年同月比は、運輸・通信業(5.1%増)をのぞく全業種で減少。製造業で24.5%減、建設業は18.7%減少している。
● 内閣府が発表した2003年10−12月期の国内総生産(GDP、速報値)は物価変動の影響を除いた実質で前期比 1.7%増、年率換算では7.0%増え、四期連続のプラス成長となった。設備投資や輸出の大幅増に加え、個人消費もデジタル家電などを中心に堅調だった。ただデフレは依然続いており、実質に比べ名目GDPは〇・七%増(年率換算2.6%増)にとどまった。実質GDPの内訳をみると、全体の5割強を占める個人消費は実質で前期比0.8%増。設備投資は5.1%憎で、2000年10−12月期以来3年ぶりの高い伸びとなった。輸出は4.2%増で2002年 4−6月期以来の高い伸び。
● 国土交通省が発表した1月の新設住宅着工戸数は前年同月比7.3%増の8万8 千7百戸で、2カ月連続で増えた。季節調整済みの年率換算値は125万3千戸で、前月(122万1千戸)に続き120万戸台。内訳は持ち家が1%増と3カ月ぶりに増加に転じ、2万3千6百戸。貸家は10.8%増と2カ月連続で増え3万5千戸。分譲住宅は10.3%増の2万9千4百戸と5カ月連続で増えた。
● 国土交通省は都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するための法律「景観法」を作成し、二月十日の閣議で了承された。法律では、「景観」の基本理念と国等の責務を定めるとともに、良好な景観を形成するための規制、支援措置等を定めているが、新しい制度として(1)景観計画制度(2)景観地区制度を創設することにしている。
【景観計画制度】@景観計画は、都道府県や市町村(景観行政団体)が策定するもので、住民等は景観計画について提案できる。A景観計画区域内の建築物等は届出が必要となり、勧告による規制も行われる。また自治体側は、建築物等の形態や色彩その他の意匠(形態意匠)に関して、変更命令を出すことができる。B 景観上重要と思われる建造物が景観計画区域内にある場合には、景観重要建造物として指定されるとともに、その現状を変更する際には、県・市町村長の許可が必要となる。管理については、指定された公益法人やNPO法人(景観整備機構)が行う。C自治体等は、景観協議会を組織することができ、良好な景観の形成を図るための協議事項については尊重しなければならない。
【景観地区制度】@市町村は都市計画に、建築物の形態意匠の制限等を行う景観地区を定めることができる。A景観地区で建築物を建築する際には、市町村長の認定が必要になる。B市町村は条例で、工作物の建設、開発行為等について規制できる。Cさらに準景観地区を定める条例で、景観地区に準ずる規制ができる。このほか、景観計画区域内の土地の所有者等は景観協定を締結できること、景観行政団体は公益法人やNPO法人を景観整備機構として指定できることも定めている。
● 日本建設情報総合センター(JACIC)がまとめた「03年度建設分野の情報化現況調査」 (03年10月に実施)によると、公共発注者による電子入札などの導入に伴い、小規模な企業でも情報基盤が着実に整備されつつあることが分かった。インターネットへの接続は、規模を問わずほとんどの企業が整備済みで、接続回線も全体の7割が光ファイバーやCATV、ADSLの高速回線を利用している。電子入札の問題点では「時間的拘束が大きい」「複数案件が重なった時の対応が難しい」などが挙げられた。CALS/ECについては、電子入札への対応が中小企業にも急激に浸透。対応済みの企業の割合は前回調査の25%から54%に一気に増加した。電子納品への対応は前回調査とほぼ同じ3割弱となったが、電子納品の対象工事の増加とともに着実に中小企業にも広がっている。電子納品の問題点としては「コストがかかる」「制作に手間がかかる」「発注者の電子納品要領の理解不足」などの意見が挙げられた。
● 公共事業の減少が鮮明になってきた。国が公共投資を絞り、自治体も財政悪化から地方単独事業を減らしているためだ。公共工事の発注動向を示す公共工事請負金額をみると、昨年10−12月期は3兆6902億円。前年同期比で1997年1−3月期(26.3%減)以来の減少率となったのに加え、前期比(季節調整値)でも10.3%減と急ブレーキがかかった。請負額は今年1月も前年同月比16.6%減と二ケタのマイナス。発注者別の寄与度では金額全体の7割程度を占める地方自治体分の落ち込みが大きい。
● 47都道府県と13政令市の2004年度予算案が出揃った。一般会計が前年度を上回ったのは都道府県では宮城など7 県、政令指定都市では札幌市など7市にとどまり、各自治体とも引き続き緊縮型の予算編成となった。単独事業費が前年度を上回ったのは、7県4市で、北海道など21都道県、川崎など3市が2桁減となっている。47都道府県の予算総額は、前年度比1.7%減の49兆2606億円で、3年連続で前年度割れとなった。また、財源不足は47道府県を合わせて2兆4581億円に上り、北海道、岩手、山口、高知などで過去最高となっている。一方、13政令市の一般会計の合計は前年度比0.4%減の9兆7911億円となった。三位一体改革によって地方交付税が大幅に削減されたが、基金の取り崩しや地方債の増発などで歳入を確保し、千葉、京都、神戸など7市が前年度比でプラスに転じている。
● 国士交通省は、2003年度のマンション総合調査結果をまとめた。管理組合や区分所有者のマンション管理実熊を調査したもので、長期修繕計画を作成しているマンションが増加傾向にあることが明らかになった。長期修繕計画の作成は、区分所有者の98.3%がその必要性を認め、管理組合の作成状況をみると83.0%の管理組合が作成済みとなっている。大規模修繕工事の取り組み状況は、外壁補修が56.4%、鉄部塗装が60.6%、屋上防水が52.8%で、半数以上のマンションが実施している。
● 総務省が27日発表した1月の労働力調査(速報)によると、同日の完全失業率(季節調整値)は、前月の12月より0.1ポイント悪化して5.0%となり、再び5%台になった。特に若年層の失業率が高く、15歳から24歳層の男性は10.5%、女性は8.6%と突出して高率。失業期間が1年以上の完全失業者(112万人)のうち、25歳から34歳層は32万人で28.6%を占め、他階層を圧倒している。
● 日本建設業団体連合会の平島治会長は、国土交通省が導入を打ち出したユニットプライス型積算方式に対して、「民間工事ではすでに導入しており試みとしては結構なこと」と基本的には賛成との考え方を明らかにした。また、野村哲也建築業協会長も「建築の場合、すべて仕様が決まったうえでのユニットプライスは厳しい。性能発注ならできる」と条件付きでのユニットプライス導入に賛成する考えを示した。鴻池一季建築業協広報委員長は「建築の場合、どの単位のユニットを組むかで大きく違う。重要なのは(調査も含めた)精度だ」とした。