情勢の特徴 - 2004年3月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 2004年(平成16年)1月度の全国建設業の倒産は312件、負債総額は598億200万円となった。件数は、前月比で9.0%前年同月比では30.8%の減少となり、300件台は3ヵ月連続。負債額では、前月比35.3%、前年同月比では74.1%の減少となり、歴代過去150番目、当月平均負債額は1億9100万円。倒産原因別では、受注・販売不振が206件、赤字累積38件、売掛金等回収難7件の3原因を合わせた「不況型」が251件(構成比80.4%)を占めた。倒産形態別では、法的倒産が101件(構成比32.3%)。うち、民事再生法は9件、倒産が91 件。私的倒産では、銀行取引停止処分が186件、内整理25件となった。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が0件、1千万千以上〜1億円未満 163件、1千万円未満(個人企業含)が149件となった。
● 国交省の発表によると平成15年の新設住宅着工戸数は、持家、貸家、分譲住宅のいずれも増加し、総戸数は116万 83戸で前年比0.8%増と3年ぶりに前年を上回った。住宅ローン減税の延長が決まる前の駆け込み需要や、住宅ローン金利の先高観などが着工増に働いた。ただし、着工床面積は1億403万8千平方メートルで同0.7%減と3年連続の減少。工法別にみると、軸組木造は41万8426戸で前年比4.3%増と増加に転じた。プレハブは15万9224戸で同1.0%減、4年連続の減少。2×4は8万1502戸で同3.2%増、2年連続の増加。在来非木造(非プレハブ非木造)は50万931戸で同1.8%減、3年連続の減少となった。
● 2008年の北京オリンピック、10年の上海万博を控えて、中国経済の活性化に伴い、日本国内の資材不足が顕著になってきていることに対し、行政が腰を上げた。経済産業省は12日、中国の需要増などの影響で鉄鉱石、石油などの原材料や鋼材などの部品価格が値上がりし、日本経済への影響が懸念されていることから、省内に「原材料等連絡会議」を同日付で設置した、と発表した。また、国土交通省との間で設置している「鉄鋼連絡会」を密にし、今月中にも会合を開く。建設関連資材では、鉄鋼メーカーが「引き続き国際的な原材料および製品価格の上昇が顕著である」との理由から、全品種値上げの意向だ。東京製鉄の3月販売価格表によると、H形鋼は1トン当たり7万円から7万6000円、異形棒鋼はD10で1トン当たり5万4000円、D13で5万2000円、D16から25が5万1000円、D29、同32が5万2000円、D35同38、同 41が5万3000円などとなっている。セメント業界は、石炭価格が中国国内の爆発的な消費拡大を受けて、前年同月比で6割上昇していることから、業界全体に深刻な影響を与える状況にある。

行政の動向

● 政府は建築物の安全性向上と市街地の防災機能の確保を目指す建築基準法と都市計画法の改正案を決める。建築基準法の改正案は、建築物に関する報告・検査、監督の強化と、既存不適格建築物の改修促進が柱。大規模老朽建築物で損傷や腐食などの定期点検・報告を求め、それを怠った場合の立ち入り検査実施や是正命令などを定める。既存不適格建築物に対しては、増改築時の建築基準の適用を合理化し、改修を促す。従来は、一部の工事でも即座に新築基準に適合させなければならなかったために改修が進まなかったが、改正案では、特定行政庁が全体計画を認定した場合に、工事に関係する部分を順次、基準に適合させることを認める。耐震補強などの工事がしやすくなる。都市計画法の改正案は、特例容積率適用区域制度の拡充、防災空間の確保のための一団地認定制度創設が柱。防災空間として確保する土地の容積を隣接する建物に移転することを認める。容積率の移転は従来、商業地域だけに認められていたが、他用途の地域でも可能になる。
● 石原伸晃国土交通相は2日、道路公団民営化四法案を発表した。民営化新会社の株式上場後も政府が3分の1以上の株式を保有し、高速道路建設のために新会社が発行する社債などには当分の間、政府保証をつける。約40兆円の債務は民営化後45年で完済し、その後高速道を無料開放すると明記したが、高速道路の建設を促す従来の枠組みは踏襲する内容になっている。民営化後、四公団の資産と債務を引き継ぐ独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構は高速道を新会社に貸し付け、リース料を債務返済に充てる。新会社は社債発行などで資金を調達して高速道を建設、完成後に道路と債務を機構に移す。外資の株式保有規制は設けない。民営化を推進する一環で、政府の株式保有比率などは民営化後10年以内に見直す。社債などへの政府の債務保証は「当分の間」に限定、国交省は「新会社への市場の評価が安定するまでの間」と説明している。
● 国土交通省が発表した2003年度「マンション総合調査」の結果によると、分譲マンションに住んでいる人の約半数は、現在住んでいるマンションを「終の棲家(ついのすみか)」として考えていることが分かった。マンションの世帯人数は、1999年度の前回調査で23%だった1〜2人の割合が43%に急増する一方、3人以上が暮らす世帯は77%から57%に激減した。世帯主の年齢は50代が28.1%と最も多く、次いで 40代が25.8%。前回調査に比べ30代と40代を合計した割合が47.3%から39.0%に減少しており、居住者の高齢化が進んでいる。現在の住まいに対する満足度は、「満足」「やや満足」「普通」の回答を合計した割合が78.6%に達した。
● 国土交通省は、新たな積算方式「施工単価方式(ユニットプライス方式)」の導入に伴い、2004年度の歩掛かり調査を「トンネルのNATM工事」と「コンクリートの削孔工事」の2工種に限定する。例年、20工種程度を対象に調査を行っていたが、積算方式を今後ユニットプライス方式に移行させることから、調査対象工種を大幅に減らす。
● 与党は土地の有効利用を促して経済を活性化させるため、10年以上であれば自由に事業用定期借地権を設定できるよう借地借家法を改正する。現行は認められていない20年超50年未満の定期借地権設定を可能にし、量販店や倉庫、物流センターなど償却期間が長めの建物を使う事業でも活用しやすくする。議員立法で今国会に改正案を提出し、来年1月からの施行を目指す。
● 地下7階、地上3階というような建築基準法の規制をかいくぐったマンション建設について、国土交通省は通常国会に建築基準法改正を提出し、規制に乗り出すことになった。「地下室マンション」とも呼ばれ、横浜、川崎両市などで住民とのトラブルが急増し、その解決が迫られていた。改正案は、現行では地下室を容積率に入れない(総床面積の3分の1を限度に)という「不算入措置」について、地方自治体の条例で「不算入」の地下室の範囲を制限できるようにし、「地下マンション」を規制しようとするもの。
● 政府は米軍支援法案や「国民保護」法案など有事法制関連七法案を決定した。改悪日米物品役務提供協定(ACSA)など三条約・協定とあわせ国会に提出した。今回の七法案三条約・協定は、米国の海外での戦争に自衛隊が武力行使をもって参戦し、国民を罰則付きで強制動員する体制の具体化を図ろうとするもの。米軍支援法案は、日本が武力攻撃を受けていない「武力攻撃予測事態」から自衛隊による米軍への物品・役務(サービス)の提供を定め、弾薬の提供も可能にしている。これにあわせ日米両軍間の物品・役務の提供を取り決めたACSAも改悪。「予測事態」に加え、イラクでの占領活動にも適用を拡大している。特定公共施設等利用法案は、日米両軍による空港・港湾、海・空域、道路、電波の軍事優先使用を保障。外国軍用品等海上輸送規制法案は、民間船舶の強制検査を可能にし、危害射撃も認めている。「国民保護」法案は、日米両軍の軍事行動を最優先で保障するため、国民を強制的に統制・動員するもの。

労働関係の動向

● 国土交通省の労務費調査の基本的なあり方に関する研究会(委員長・藤澤好一芝浦工大教授は、公共事業労務費調査の改善策などを盛り込んだ中間報告をまとめた。同調査の効率的な実施に向け、▽複数職種を統合した単価設定▽同一単価県(複数県ブロック)の設定▽手当区分の明確化▽技能職種と作業員職種の部類方法−などの検討を求めた。同省では中間報告を受け、具体的な改善策を今後検討し、可能な施策から今年10月の調査に反映させる方針だ。

資本の動向

● 国土交通省がまとめた2003年の建設業活動実態調査の結果によると、就業者数は全体で減少する中で保守管理部門は増加傾向をみせている。この調査は、大手の総合建設業 35社と設備工事業20社を対象に行われた。就業者数は合わせて18万3521人で前年から9.1%減少した。これで9年連続の減少となった。総合工事業、設備工事業、技術職、事務職いずれも減っている。全体的に就業者が減っている中で、土木建築施設の保守管理部門は37.2%と大幅に増加している。

その他の動向