情勢の特徴 - 2004年4月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 日本銀行は、3月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。企業の景況感を示す業況判断指数(DI、「業況が良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数)は、大企業製造業が四期連続で改善しプラス12(前回・12月調査比5ポイント増)、大企業非製造業でも7年4カ月ぶりに改善しプラス5(同5ポイント増)となった。一万、中小企業は前回調査時より改善したものの依然マイナス(「業況が悪い」と答えた企業の割合が多い)を脱しきれていない。中小企業製造業は前回調査時に比べ7ポイント増マイナス3、中小企業非製造業は5ポイントのマイナス20となっている。大企業の景況感との格差が開いている。
● 建設工事の主要資材である鋼材の品不足と高騰が、建設業界を混乱させている。調達力の弱い建設会社からは、希望する製品の購入が困難といった声が聞こえてくるほか、絶大な調達力を持つ大手建設会社でさえも、注文してから納品までの期間が長期化しているという。程度の差こそあれ、必要な鋼材を適時手当てすることができず、工事の遅滞を起こしかねない事態に陥っている。鋼材の価格が高騰している要因は、中国でのおう盛な鋼材需要だ。2008年の北京五輪開催などに向けインフラ整備が急ピッチで進み、鋼材の消費量が爆発的に伸びている。2002年に約2400万トンだった輸入量は2003年に約3700万ドルと急伸。世界的な鋼材のひっ迫感と鋼材原料・副原料価格の上昇を招いている。
● 2004年(平成16年)2月度の全国建設業の倒産は346件、負債総額は963億300万円となった。件数は、前月比で10.8%の増加、前年同月比では25.1%の減少となり、300件台は4カ月連続。負債額では、前月比61.0%の増加、前年同月比では 11.9%の減少となり、歴代過去82番目、倒産原因別では、「不況型」が270件(構成比78.0%)を占めた。 規模別で見ると、資本金階層別では1 億円以上が4件、1千万円以上〜1億円未満182件、1千万円未満(個人企業含)が160件となった。
● 2003年度の全国の建設会社の倒産は、件数、負債額ともに前年度よりほぼ2 割減り、2年連続の減少となった。2003年度は、大型倒産といわれる事例が少なく、その結果、負債額も小型化した。ただ、一段と深刻化する建設市場の縮小を反映し、受注不振など不況を原因とする倒産が全件数のほぼ8割と、過去最悪になったのも特徴だ。大手ゼネコンの立ち直り傾向に対し、市場縮小のしわ寄せが中堅クラスに及んでいる。2003年度の倒産件数は4764件と前年度に比べ19.1%(1129件)減少した。負債総額は1兆5087億2300万円で前年度より23.5%少なかった。企業規模でみると、資本金1億円以上の企業の倒産が42件(前年度40件)、同1000万円〜1億円未満の企業の倒産が2744件(同3189件)、年商10億円以上の企業の倒産は188件(同265件)。上場企業では森本組(民事再生、負債2153億円)、大木建設(同、負債766億円)が倒産したが、2003年度は大型倒産が少なく、負債額も縮小。

行政の動向

● 厚生労働省は、水道事業の民間開放を促進する。5月にも策定する水道行政の新しい指針「水道ビジョン」で、民間開放を促す考えを打ち出す。ビジョンを正式決定した後、同省は有識者による検討会などを設置し、指定管理者制度やPFIの導入など、民間開放を推進する際の手法を検討。事業の経営形態の多様化を図る。必要に応じ水道法も改正する。設備の維持改修費の増大などで自治体財政や水道事業を手掛ける公営企業の経営が悪化。専門技術者も不足していることから、厚労省は抜本改革が必要と判断した。

労働関係の動向

● 厚生労働省が31 日発表した毎月勤労統計調査(従業員5人以上の事業所調査)の2月分結果速報によると、労働者1人当たりの現金給与総額は1年前に比べ(前年同月比)0.1%減の27万5013円だった。基本給に家族手当などを加えた所定内給与は同0.7%減で、減少は9カ月連続。残業など所定外給与(同3.3%増)は増加を続けているが、これも加えた「きまって支給する給与」は同0.3%減で、やはり9カ月連続で減少した。物価変動分を差し引いた実質賃金は同 0.1%減で、減少は3カ月連続。物価下落以上に賃金は低下を続けている。月間総労働時間は同0.5%増の150.2時間で2カ月連続増加。このうち残業など所定外労働時間は同4.0%増の10.3時間で20カ月連続の増加。
●「名前だけの管理職を増やして時間外賃金を払わないのは違法。時間外賃金をさかのぼって支払え」と東建ジオテック(本社・東京)を相手どり、東京高裁(濱野惺裁判長)で争っていた全日本建設交運一般労働組合東建地質支部の原告7人が、勝利の和解をした。和解は、@会社は解決金を支払うA係長以上の職にある組合員は労基法第41条第2号の「管理監督者」に該当しないB時間外賃金の制度改正にあたっては組合との間で協定締結し実施する−を確認した。
● 国土交通省の算出した土木関係設計業務の技術者単位が、2004年度も3業務15職種の平均値で前年度を下回った。技術者単価は建設コンサルタントや地質、測量会社に属する技術者の平均給与額で割り出しているだけに、低迷する土木関連コンサル業者の業績に連動して「下降線をたどる」結果となっている。同省の2004年度技術者単価は、設計業務7職種で平均1.3%減、測量業務5職種で4.9%減となり、地質業務3職種だけが平均で前年度よりも0.5%増加した。

資本の動向

その他の動向