情勢の特徴 - 2004年4月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 公正取引委員会は28日、公共建設工事での不当廉売の考え方を初めて示すとともに、守谷商会に対し、独占禁止法の不当廉売に該当するとして警告を行った。公共建設工事をめぐり不当廉売違反で警告を行ったのは今回が初めて。また、八千代エンジニヤリングに対しても、官公庁が発注した設計コンサルタント業務で不当廉売違反のおそれがあるとし、警告を行った。公取委は警告と同時に、設計コンサルタント業務にも低入札価格調査制度(低入札調査)を導入するよう発注者に要望した。公取委は、公共建設工事の不当廉売の考え方として、価格要件のうち「供給に要する費用」を「工事原価(直接工事費+共通仮設費+現場管理費)+一般管理費」がこれに相当するとした。また「高級に要する費用を著しく下回る対価」かどうかは「工事原価」を下回る価格であるかどうかが一つの基準になるとの考えを示した。

行政の動向

● 国士交通省が地方公共団体を対象に実施していた「くじ引き落札者」の実態調査結果の概要が明らかになった。最低制限価格を事前公表している236団体うち、約60%にあたる145団体でくじ引き落札が発生していることが判明。また、 2002年度と2003年度の同時期(4〜7月)の比較では、くじ引きによる落札件数が1.6倍に急増した。最近急増しているくじ引き落札は、予定価格の一定額以下の応札者を足切りする最低制限価格(ロアリミット)制度を導入している地方公共団体で発生している。地方公共団体が入札前に最低制限価格を事前に公表。このため、入札参加者の応札額が最低制限価格に集中し、その結果くじ引きで落札者が決まっている。1団体当たりの年平均くじ引き落札件数は 32.3件。1案件当たりの平均くじ引き参加者数は7.7社にも達する。2002年度と2003年度の同時期比較では、2002年度が4〜7月の4カ月間で937件だったのに対し、2003年度は同時期で約1.6倍の1488件に急増した。1団体当たりの平均くじ引き件数も12.2件から13.7件に増え、一案件あたりの平均参加者数も8.4社から9.2社に増加している。

労働関係の動向

● 日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、栗本毅議長)は、加盟組合員を対象に2003年度の時短アンケート結果をまとめた。内・外勤を合わせた1カ月の平均残業時間は、前年比0.1時間増の53.21時間となり、過去10年で最悪となった。外勤者が月70時間超で高止まりする一方、内勤者の残業時間が増加し、全体を押し上げた。人員削減や合理化で間接部門の負担増にも歯止めがかからないという。外勤者の残業時闇は、前年比1.05時間減の73.19時間。工期や人員配置の厳しい工事が増えた影響で70時間超となった2000年からほぼ横ばいの状況が続いており、「建設現場の長時間労働が緩和に向かっているとはいえない」としている。過労死として労災認定される可能性が高い月80時間以上の残業を、外勤者の4割強が行っている事態は変わっていない。
● 厚生労働省は2003年の労働災害による死亡者数と重大災害の発生件数をまとめた。建設業の死亡者数は548人で、 2002年よりは59人減ったが、全産業での死亡者数に占める割合は33.7%と、依然として最高だった。建設業で3人以上が同時に死傷した重大災害は 88件で、前年より6件増加した。建設業に従事した労働者の死亡要因で最も多かったのは墜落・転落で、計247人が死亡。次いで道路での交通事故が多く、 70人が死亡した。
● 総務省が発表した3月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.3ポイント低い4.7%となり、2001年3月以来、3年ぶりの低水準となった。4%台となるのは昨年12月(4.9%)以来。2003年度平均の完全失業率も5.1%と、過去最悪だった前年度を0.3 ポイント下回った。完全失業者数は333万人で、前年同月比で51万人減と大幅に減り、10カ月連続の減少。ただ、就業者数は6279万人と前年同月比で 13万人の増加にとどまった。仕事を探すのをやめるなどした非労働力口も74万人増えており、失業者が減ってもその分、就業者が増えているわけではない。

資本の動向

● 全国建設業協会(前田靖治会長)は政府に、官公需法堅持と、中小建設業の地域における実態と貢献を踏まえた施策展開を骨子とする要望書を提出した。地方単独の公共事業が大幅抑制にある中で、国の官公需施策の転換による受注機会減少は、公共事業への依存度が高い地方建設業にとって死活問題となることが大きな理由。要望では、全建会員企業の倒産件数が2002年で359件と高水準で推移していることや、地方建設業者の地域経済や雇用に果たす役割が大きい地域の基幹産業であるとして、今後も官公需法堅持と契約方針に基づいた施策の強力推進を求めた。
● 大手、準大手、中堅ゼネコンを中心に、民間工事受注が回復傾向にあることが、日本建設業団体連合会がまとめた 2003年度会員企業受注統計で明らかになった。2003年度の官公庁受注は前年度比10.9%減と2桁の減少が続いており、この10年間で官民受注割合は民間シェアが1995年度の58.0%から2003年度71.7%と13.7ポイント上昇している。日建連会員企業(58社)の2003年度受注総額は、前年度比0.3%減の12兆7910億円とほぼ前年度並みの水準となった。7年連続の減少で水準は1986年度とほぼ同水準にある。1997年度からの6年間の平均減少率が7.5%だったことを考えると、減少に一定の歯止めがかかった格好だ。具体的には2003年度の「民間」は前年度比4.6%増と4 年ぶりの増加に転じ、8兆7490億円となった。一方、「官公庁」は5年連続減少の10.9%減の3兆4350億円にとどまった。発注機関別では、「国機関」が5.2%減、「地方機関」が17.0%減だった。国機関は5年連続、地方機関は8年連続の減少が続いている。

その他の動向